ドリーム小説

爽やかな朝。

人が活動するにはまだ少し早い時刻にの一日は始まる。

パチリと大きな目を開けて起き上がると、小さな手で目を擦りながら大きなベッドから抜け出す。

洗面台に置かれた台をよじ登って顔を洗い、鏡に向ってニカリと笑う。




「おはよう!」




元気よく鏡の中の自分に挨拶を済ませると、台座からピョコンと飛び降りて部屋に戻る。

あまり長い間滞在する事のないヴァリアー本部ではあるが、当然のようにの部屋があった。

大きなクローゼットを開け放って、毎回増えてるルッスーリア手製の服をキョロキョロと選ぶ。

メイド・イン・ルシーのタグが付いたその服達はのお気に入りだ。

背中に青い大きなリボンの付いたキャミソールワンピを掴むと、ポイポイっとパジャマを脱いでそれに着替える。

中に黒いレギンスを穿こうとするが、バランスを崩して床をコロコロと転がりながら四苦八苦。

朝からいろいろと忙しいだが、服を着れば準備は万端。




「みんなにおはようしなきゃ!」




は嬉しそうに頷いて、部屋の扉を開けてまた新しい一日を始めた。







***







てとてとと小さな足をフル稼働させて走った先はキッチン。

まずはお姐さんに朝の挨拶だ。

扉を押して中に入ると、何だかすごく芳ばしい匂いがの鼻をくすぐる。

くんくんと匂いを辿るように奥に進めば、見慣れたサングラスがを捉えた。




「ルシー、おはよう!」

「あら、おはよう、。今日も早いわねぇ」

「ルシー、ルシー。今日のふぁっしょんちぇっくは?」




白いワンピースの裾を摘んでクルリと回って見せたに、ルッスーリアはフライ返しを片手に目を細めて考える。

これはがここにいる間に行われる恒例行事みたいな物なのだ。




「そうねぇ、白のワンピースに映える深いシーブルー。その服のタイトル通り、『渚の深度バット』かしら?」

「おぉ!しんどばっとですかー。点数は?」

「んー・・・・、百点満点よ!!」

「やったー!!」




いつもながら真面目に聞きに来るに、ルッスーリアは笑いを堪えて両手を上げて喜んでる娘を見下ろす。

そしての前に膝を着いて頭を撫でてやる。




「相変わらず凄い寝癖ねぇ。、髪結う?」

「んーん。レビにしてもらうからいい」

「そう。ほどほどにしてご飯食べにいらっしゃいね」




はニンマリ笑って手を額に翳して、ラジャーと返すとワンピースを翻してキッチンを飛び出していった。

次なるターゲットはレビ。





***





ギィィと勝手に開けて忍び込んだ部屋は物音一つせず、は豪快に奥に歩いていった。

大きく引き伸ばされたザンザスの写真(隠し撮り)の横に、バツ印が書き込まれた綱吉の写真を見付けた。

の機嫌を損ねたそれに、そこにあった赤いマジックでパパをハートマークで囲み直しては大満足。

それから一向に目を覚まさないレヴィにどうしようと頭を悩ませ、あっ!と声を上げては笑った。

ベッドによじ登り、ぐーすか寝ているレヴィのお腹目指して膝から飛び乗った。




「えいっ!」

ぐはぁッ!!!

「あ、起きた。おはよう、レビたん!」

「ぐぇ・・・、、か・・・・」

「かみのけ、やってー」

「し、んじゃう・・・」




嬉しそうにお腹の上でジタバタするにレヴィは呻き声を漏らして、白目を剥いた。

動かなくなったレヴィには目を瞬いて「あれー?」と、ピクピクしている顔を掌でバチンバチン叩いた。



ようやくレヴィが復活した頃、はようやく念願の髪結いにご機嫌だった。

レヴィが髪に櫛を通し、は嬉しそうに足をパタパタさせて完成を待った。




「よし。出来たぞ。芸術的だ」

「わー!レビ、へたくそー!

「何ィッ!!!」

「あはははは!!」




鏡に映る自分の髪が生き物のように飛び出していてはお腹を抱えて笑い、顔を真っ赤にしてレヴィは怒った。

もっとも、顔はが叩きすぎて赤いのだけれども。

はレヴィを散々からかって、部屋を飛び出した。

そして次に、この変てこな髪型を見てもらうべく王子の寝室へ。







***







扉を押し開け、相変わらず派手じゃないのにどこか豪華絢爛な部屋に目を瞬かせながら、はベッドの王子に近寄る。

寝てる間でも目が前髪に隠されて見えないベルに、は不思議そうにしながらも悪戯を思い付いた。

こっそりベルの足元から布団に潜り込んで、もそもそと顔の方へと進む。




「しし。それじゃさすがに起きるって、

「えー?ま、いいや。おはよう、ベル!」




もそもそと布団の中を動いていたが挨拶をしながら顔を出した瞬間、ベルは豪快に噴いた。

人間には出来そうも無いその珍妙な造形の髪型にベルは引き攣るように大きな声で笑った。





あ゙っはぁ!何それ!人間技じゃねぇよ!!うっしししししっ!

「レビがやったのー」

「おっさん、マジウケる!!」




二人して大笑いした後、ベルがさらなる改良を重ね、の髪型はとんでもない所まできた。

笑いを堪えきれず、口を押さえながらベルは目を逸らす。




「それ、誰かに見せてこれば?」

「うん!アーロのトコ行ってくる!」




またも部屋を飛び出していったの後姿に耐え切れず、ベルはのた打ち回って喜んだ。

が選んだのはよりによってスクアーロ。

鮫の悲劇を思ってベルはもう一度、噴き出した。


* ひとやすみ *
・ヴァリアーでおはよう。
 とりあえずやってみようで始めちゃって、止め処が分からなくなりました。
 番外にしようかとも思ったんですが、もう1話お付き合いをー!         (09/6/17)