ドリーム小説

とてとてやって来たはスクアーロとザンザスを向かい合わせにして二人の手を握った。




「あのね、仲直りのぎしきはね、こうするの」




まずは見本を見せてくれるらしく、はベルを手招きして同じように向かい合わせに立った。

ベルは身長差を考えて膝立ちになり楽しそうなとせーの、の掛け声でに続けて歌った。




「ハグとんとん」

「ハグとんとん」




とベルは交互に抱き締め合って背中を軽く二回づつ叩いた。

これにギョッとしたザンザスとスクアーロは放心状態で楽しそうな二人を見る。




「「あーくしゅ」」




そんな事は関係ないと離れた二人は歌いながら右手で握手をした。




「上でパン」

「下でパン」




まだまだ続く儀式は握手をしたまま、左の手の平を握手の上と下でお互いに合わせて音を鳴らした。

顔色を失っている二人を哀れに思いながらも、了平はこれから起こる事を思って心の中で合掌した。

自分の時はとだったから良かったものの、よりによってザンザスとスクアーロとは。




「「仲良しチュー」」




右手の握手を組み直して指相撲の形をとって親指同士をくっ付けた。

歌を聴いて一瞬ヒヤリとした二人は青い顔のまま息を吐いた。




「最後はほっぺチュー!」




は楽しそうにベルに抱き着いて耳元にちゅっと口付ければ、ベルも反対側にしてくれた。

この部屋の中で楽しそうなのはベルとの二人しかいない。

絶対に嫌だと言わんばかりの顔には膨れて最後の審判を下す。




「仲直りか、けんかのわけか、どっち?」




苦渋の選択である。

どちらを選んでも良い事はない。

もしここで任務の内容をに言うものなら、すぐさまボンゴレの元へ駆けつけて任務を止めさせるだろう。

そうなれば愛娘の耳を汚したとしてボンゴレからの制裁を受ける事はまず間違いない。

悩む余地などないのだが、随分と時間を取って二人は悔しそうに向き合った。




「良かったじゃん、。仲直りするってさ」

「うん。でも、なんでそんなにはなれてるの?」




部屋の隅と隅に立って向き合った二人からは殺気が溢れていた。

了平は机を押しやって場所を広げ、とベルの首根っこを掴んで二人から引き離した。




「来い」

ぁ!いつでもいいぞォ」




何だかよくわからないままは頷いて仲直りの歌をベルと一緒に歌った。




「ハグとんとん」

「ハグとんとん」




ハァグ、ドンドンッ!・・ハッ!!

「ぐはッ」

この!ファグ、ダォンドンッ!!

「っ!」




凄い勢いで突進して行った二人は互いにタックルをかまして相手の背を拳で二回殴った。

抱き合った音も、背を叩く音もの耳には尋常ではなく聞こえ、とても痛そうだった。

はオロオロと了平を見上げると続けろ、と言われて動揺しながらも続きを歌った。

ベルはいつにもなく楽しそうにと歌っている。




「「あーくしゅ」」




「「あ゙ぁくシュ!!」」




互いの身体を突き放して右手を凄い勢いで組み合わせた。

腕相撲のように組み合わせた手は、もはや握手ではない。

睨み合いながらギリギリと音を立てる右手には了平のスーツを握って不安そうに見上げた。

腕を組んでの隣に立っていた了平は困ったような笑いを浮かべてまた続けて、と言った。




「う、うえでパン」

「下でパン」




上でおるぁッ!

下でどるぁッ!




「「仲良しチュー」」

「「ナカヨシ、ぢゅうらぁッ!!」」




もはやこれが仲良しなのかには見当もつかなかった。

手の平を合わせて音を鳴らすはずが、激しく拳をぶつけて叫び合い

肝心の仲直りの印の親指チューは右拳を激しくぶつけ、にはくっ付いたかどうかすら見えなかった。

一気に飛び退った二人は清々した顔でを見た。

自身も今のが何だったのかよく分からなかったので、了平を見ると満足そうに頷いていた。




「良い右ストレートだ!これでこそ男の仲直り!」

「それもちょっと違うんじゃないの?」

「仲直り・・したの?ほっぺチューは?」




ギクリと二人の肩が跳ねたのは見間違いではないだろう。

の悪気のない声にベルが嫌そうに言った。




「見たくないから王子の為にチューは許してあげて。代わりに姫が貰ってきなよ」

「うむ。俺も心の平静のためにその方がありがたい」

「二人ともムサイのより姫のがいいよね?」




ベルが感謝しろと言わんばかりに言い放った言葉に二人は無言で返したが答えは一目瞭然。

は二人の元へ駆け寄り、見上げて手招きした。

ザンザスとスクアーロは大人しくその場にしゃがんでと視線を合わせた。




「もう、りゆうのないケンカはしない!わかった?」




偉ぶって二人を正すは傍から見て可愛いだけだが、今の二人とっては心底怖い生き物だった。

了平はあのヴァリアーが形無しだな、とボンゴレ至宝の娘に称賛を贈った。




「しない」

「しねぇ」

「よし!ゆるす」




満足そうにそう言って目を瞑れば、ちゅっとの両頬に軽い衝撃が来た。

ニッコリ笑ったがザンザスとスクアーロの手を握って軽く引っ張った。




「ルシーがお茶するからおいでって」

「何?もうそんな時間か」

「しし。一件落着ってね」




の小さな手にザンザスとスクアーロは何だか本当に馬鹿らしく思えて一切を忘れる事にした。

あとでをけし掛けたベルに仕返しをする事だけは深く誓って。


* ひとやすみ *
ごめんなさい。
 ヴァリアーって何?って感じになってしまいました。
 仲直りの儀式は上手く伝わってないかもしれませんが、そこは雰囲気で、ね?(09/6/13)