ドリーム小説
がここに来て早二週間の月日が流れた。
生活にも慣れ、今では雑用を手伝うようになっていた。
今もようやく覚えた道筋を歩いて、資料室に使い終わったファイルを返却しに行っている最中だ。
資料室に入るとはルッスーリアに任された片付けを黙々と続ける。
何だか物凄く怪しげなファイルだが、あえて中身は見ないようにしながらラベリングの通りに棚に返す。
暗殺部隊と言うくらいなのだから碌な事は書いてないはずだ。
は淡々と作業を続けて、高い位置の棚に返そうと梯子を上った。
ガチャリと部屋の空く音がして、振り返るとそこにスクアーロが立っていた。
「あ゙ぁ?居たのか、」
「え、もしかして資料が遅いってザンザスにパシられた?」
「違ェ。俺は別件だぁ」
ホッと息を吐いたは目敏くも、スクアーロの顔に傷があるのを見付けた。
いつもは任務でも傷なんて付けて来ないのに・・・。
は眉根を寄せて、梯子の上からスクアーロを見下ろした。
「昨日の任務、そんなに危ない仕事だったの?顔、怪我してる」
「・・・・これはぁ、」
顔を顰めたスクアーロは目の前のを見上げて口を噤んだ。
言える訳ねぇだろーがぁ・・・。
これは嫉妬に駆られたクソボスにやられたなんて。
ここ2週間、スクアーロは気が付けばなぜかの相談役になっていた。
やれ部屋が同じだの、セクハラが多いだの、あーだこーだとザンザスについての苦情をひたすら聞かされる。
スクアーロからすれば惚気以外の何物でもないのだが、いかんせん二人の中身が子供過ぎた。
喧嘩ばかりで全く恋愛の欠片など、どこにも見えやしない。
さっさとくっ付けばいいのに、と何度思ったことか。
挙句の果てに、ザンザスが二人の仲を勘繰って八つ当たりしてくるから手に負えない。
テメェが好きだとから相談されてんだよ、クソボスが!
スクアーロは複雑な気持ちで溜め息を吐いて、心配そうな顔をしているに気にするなと言った。
が作業を再開させようとクルリと棚を向いた瞬間、足元が滑った。
ファイルが飛び散り、背中から宙に身を投げ出されたにスクアーロは反射的に手を伸ばした。
―――ドンッ!!!
「・・・・・いったぁ」
「無事かぁ?」
「おかげさまで」
スクアーロがの頭を抱え、落ちてくるファイルから身を挺して守ってくれたのでぶつけたお尻以外は無事だった。
お互いにホッと溜め息を吐けば、今の状況にギョッとした。
床に仰向けに倒れるの頭の下に手を差し込み、覆い被さるように跨るスクアーロ。
何やらおかしな体勢にドギマギしたスクアーロは慌てて立ち上がろうとしたが、何かに引っ張られて出来なかった。
「痛い痛い!待ってスクアーロ!私の髪がボタンに絡まってるから!!」
「あ゙?チッ。隊服のボタンか」
「痛い!早く取って」
涙声で暴れるにスクアーロは仕方なくさらに近付いて、絡まった髪を何とかしようと頑張った。
そして何だか面倒臭くなったスクアーロが引き千切ると言ったらは物凄く怒った。
「チッ。こんな所、クソボスに見られたら殺される・・・」
「・・・ザンザスは気にしないわよ、別に。アイツ私のこと犬か何かだと思ってるもの」
「、お前本気で言ってんのかぁ、それ」
スクアーロは思わず手を止めて、拗ねたような顔をしているを見下ろした。
こうも互いに気持ちが擦れ違っている二人を見てると、むしろ居た堪れなくなる。
小さく息を吐いたスクアーロは呟いた。
「アイツに惚れてんなら、さっさと言っちまえばいいだろぉが」
「無理よ『愛人の一人にしてやる』とか言われたら、私・・・・・
絶対ぶん殴るもの」
「いつも殴ってんだろが」
はプイと顔を背けて、散乱しているファイルに視線を向けた。
苦戦しているスクアーロの耳に小さな呟きが届く。
「だって、私だけじゃないとイヤなのよ」
「・・・・あのクソボスも馬鹿だよなぁ。目の前にこんないい女がいるってのになぁ」
「・・・・スクアーロにしとけばよかったかな。そんな事サラって言えるの何かカッコいいわ」
「クソボスしか見てねェくせによく言うゼ。大体お前、男の趣味悪すぎだぁ」
「同感。何であんなのが好きなんだろ、私」
何だか陰鬱な空気が流れ出した時、スクアーロがついにしでかした。
ブチッ!と嫌な音を立てて、絡まった髪がボタンから引き離されたのだ。
「イヤー!!最低ッ!!嫌だって言ってるのにスクアーロの馬鹿ぁ!痛いー!!」
「耳元で叫ぶなぁ!こんなになってどうしようもねぇだろーがぁ!!」
そして最悪の事態が起こった。
バンッ!!と派手な音を立てて、開け放たれた扉の向こうにザンザスが立っていた。
* ひとやすみ *
・あれー?これザンザス中編だったはずー?ボスどこ行った?!笑
正直まさかこんなに長くなるとは、この話のおかげで5話で終われそうになくなりました。
しかも何やらヤバイ雰囲気です。どうなるどうする?!とりあえず常識人で苦労人な鮫が好きです。(09/09/01)