ドリーム小説
変な女の元に転がり込む事になった。
名はというらしいが、こんな猿みたいな女を見たのは初めてだ。
口汚いし、煩いし、事もあろうに俺を殴り、物を投げる。
こんな馬鹿女を消すのは容易いが、異世界と言うハンデが俺を押し留めていた。
女の携帯で調べたボンゴレは、漫画の世界にあった。
そこで俺はパラレルワールドという言葉を思い出し、すぐにボンゴレを探す事を諦めた。
俺の未来は俺で決める。
そんな物に左右されてたまるか。
「ザンザス・・!ちょっと生きてんの?返事しろ、馬鹿!」
「入れ」
「アンタお風呂長すぎって、
何だコレー!!!」
これが風呂だと言う女の言葉に従って風呂に入ればおかしな事になった。
こんな桶みたいな風呂の勝手が分かる訳ねェ。
泡だらけになった湯船でただボーっとを見上げるザンザスには悲鳴を上げた。
「ウルせぇ」
「黙んなさい!何をどうやったらこんな・・・・!アンタまさか風呂掃除用洗剤で体洗ったの?!」
「分からねェから片っ端から使っただけだ」
「
ギャー!!混ぜるな危険!死んじゃうわよ?!ハッ!アンタそれでフラフラしてんじゃ・・・!」
は慌ててシャワーをザンザスにぶっ掛けて泡を流し、即効で風呂場から引っ張り出した。
朦朧とする頭で心配そうに甲斐甲斐しく世話をするを見てザンザスは可笑しな女だと呟いた。
***
気が付けば辺りは薄暗くなってて、かなりの時間寝ていたらしい。
胸に乗っかる重たい物を掴めばそれはの腕で、うちわを掴んでソファにもたれ熟睡していた。
邪魔だと言わんばかりにをその辺に転がして、喉が渇いたので冷蔵庫を開ける。
「あぁ?ミカンか・・・」
スポーツドリンクを掴んで飲めば、目に入った皿にザンザス用の文字。
覗き込めば缶詰のミカンが中に入っていた。
摘むようにして食べればあっさりと喉を通り、気が付けば全て食べ切っていた。
何だか気だるいのでもう一眠りしようとソファを見れば目に入る。
知るかと目を逸らしたはいいが、おかしな体勢で眠るが何をしていてこうなったのか手に取るように分かり、
ザンザスは舌打ちをして、を抱き上げて寝室へ運んだ。
初めて入った寝室に馬鹿でかいベッドがあるのに驚いたザンザスはを放り投げて、自分も横になった。
「あんな狭いソファで寝れるか」
そう愚痴ったザンザスは大きな欠伸をして、そのまま眠りに就いた。
***
目が覚めて飛び込んできた光景にはまず夢だと思った。
突如現れたザンザスは確かに美形だったが、夢で添い寝してもらいたいなどと思ったことはこれっぽっちもない。
口は悪いし、性格は自己中だし、そして何より非常識人間なのだ。
風呂用洗剤のカ○キラーまで使って体洗うなんて、信じられない。
そうだ!!!ザンザスは・・・・。
飛び起きたはまずキャミソールにホットパンツな自分に首を捻り、自分のお腹に絡みつく誰かの腕に首を傾げた。
腕を辿って見た物は、腰にバスタオルを巻いただけのザンザスだった。
とんでもない悲鳴に怒鳴ったザンザスの顔に枕が飛んで行ったのは数秒後。
「信じらんない!!人のベッドに潜り込むなんて!!」
「デカいベッドがあってなぜ俺がソファで寝なきゃならねェんだ?大体テメェが勝手に脱いで着替えたんだ、知るか」
「じゃあせめてアンタ服を着なさいよ!」
「服なんてねェだろーが」
朝食の準備をしていたは動きを止めて、それもそうかと呟いた。
ザンザスはソファに座って不機嫌なオーラを振り撒いている。
まぁこれだけ元気があれば大丈夫だとは少し安心して息を吐いた。
「あのミカン・・・」
「何、私の分はあげないわよ」
「美味かった」
「は?」
何でもないように言ったザンザスには耳を疑った。
ザンザスがこんな素直に感想を言えるなんて・・・・!
キョトンとしたは噴き出すように小さく笑ってどういたしましてと返した。
そしてその日のザンザスの朝食にミカンがこっそり増えた。
***
「アンタね、喧嘩売ってんの?!居候の分際でブランド品ねだってんじゃないわよ!」
「あぁ?!テメェが好きな服選べって言ったんだろーが!」
こんな奴、連れてくるんじゃなかったとは心底後悔した。
持って来る服を全て返品して、店を出る。
普通にしてればいい男であるザンザスはすれ違う人達から視線を集めていた。
部屋にあったボロいカッターシャツを着せて、初めに着ていたズボンとブーツを履かせただけでこれだ。
もう、何か適当に選んで着せよう、と少し悔しさを滲ませながら、手頃な店に入った。
「とってもお似合いですよー。素敵なご夫婦ですね」
「「 夫婦じゃない!! 」」
に言われるまま試着させられていたザンザスの元に、近寄ってきた店員が二人を見てそう言ったが、
間髪入れず否定した二人はまた喧嘩を始めた。
夫婦喧嘩は犬も食わぬと言うくらいであるから、店員はそそくさと違う客の元へと笑顔を振り撒きに行った。
「アンタ一体どこのお坊ちゃんよ?生活能力ゼロじゃない」
「・・・ボンゴレだ」
「は?アサリの坊ちゃん・・・?何、良いダシ出てるねー!とか言って欲しいわけ?」
「お前・・・・、相当な馬鹿だろう」
「はぁ?!アンタの方が大馬鹿者よ!」
またプンスカ怒り出したにザンザスは小さく溜め息を吐いた。
ボンゴレを知らなかった事に安堵したのか、それとも落胆したのか、よく分からなかったが、
店の注目を浴びているのに気が付いて、の選んだ服を店員に押し付けた。
いきなり会計をさせられる羽目になったはかさばる荷物を抱えて店を出た。
店の前で腕を組んで待っていたザンザスはの腕から荷物を全て取り、の手を引いて歩き出した。
「あ、ちょっ・・・」
「帰るぞ。ここはお前以上にウザいカス共だらけだ」
「・・・・こういうトコだけ紳士だよね、ザンザス」
掴まれているザンザスの手に視線を落としたは苦笑した。
大きく暖かい手をぎゅっと握り返して、颯爽と前を歩く居候を追った。
歩くスピードが速すぎて、怒ったに襟首を掴まれるのはもう少し後のこと。
* ひとやすみ *
・生活能力ゼロなボスだといいなー、の一言で出来た作品。笑
お風呂場はとんでもない匂いが充満していたと思われます。私、塩素系は心底苦手です。
まぁ、ちょっとずつ、ね? (09/08/08)