ドリーム小説

「何で同じ顔してんの!」

「あーん?テメェこそ、俺様の顔が羨ましくて整形でもしたのか?」

「頭オカシイんじゃない?!」

「俺様に向ってよくそんな口が利けるな」




言葉の猛襲を繰り返しながら足音荒くと跡部は校舎を歩いていた。

最早、競うように走っていたと言っても過言ではない。

と跡部を驚いた顔で見比べる生徒会の二人を放って部屋を飛び出してきた。

たまにすれ違う人は皆、同じ顔の二人が物凄い形相で歩いてくるのを見て固まるか、逃げるかのどちらかだ。




「ちょっと付いて来ないで!」

「あーん?テメェが俺のあとを付けてんだろーが」




は同じ顔をした勘違い男に心底呆れながらテニスコートを目指した。

一方、跡部もテニスコートを目指していたので、必然的にと同じ道を行く事になるのだが、

双子でもないのに同じ顔が隣を歩いている事が気に食わない。

しかも自分の顔が心底嫌そうに自分を見てくるのだ。

も跡部も全く同じ心境で、益々歩く足を速めた。

ようやく目に見えたテニスコートでは試合が終わって挨拶をしていたようで、

立海レギュラー陣と氷帝レギュラー陣が握手を交わしていた。

それに助けを求めるよう走り出した二人は我先にと、押し合いへし合いしながらコートに乱入した。




「「 何なんだ、コイツは!!! 」」




息もピッタリなと跡部に視線を向けたレギュラー陣は鬼のような二人を見て目を見開いた。

氷帝組は揃って大きな悲鳴を上げて、立海組は本当にそっくりだとマジマジと観察していた。




「コイツ何なの?!私がアイツに似せて顔を整形したとか言うのよ!誰がこんな頭湧いてる奴に似せるかっての!」

「アレは何だ!!俺様のストーカーか何かか?!」

「はぁ?!何よ、アンタの方こそパクッてんじゃないわよ!整形しろ!!」

「あーん?テメェ同じ顔してても頭は悪いようだな。誰に向って言ってるのか分かってねぇみたいだな」




押さえてないと今にも飛び付いて噛み付きそうな二人に、その場にいたレギュラー陣が必死に止める。

猛獣と化したに弦一郎が落ち着けと声を掛ける。




「お前、あの人との約束破ったな」

「!!・・・じゃあ、アレが跡部なの?」




自分に似ているという氷帝テニス部のエースが目の前にいる男なのだとは少し落ち着いて視線を向ける。

不意に叔父様と約束を破ってしまった罪悪感が押し寄せてきたが、勝手にアイツが目の前に現れたと言う事で納得した。

確かに顔は・・・、そっくりかもしれない。

大パニックの氷帝組の元に説明に向った幸村の背を見ながら、そんな事を思っていた。

すると幸村と話していた跡部が視線をに向けて眉根を寄せた。




「あれが女だと?!嘘を吐くな!」




 前 言 撤 回 っ ! !

やっぱ全然似てない!!!

再び暴れだしたを弦一郎が必死に押さえ、疲れたように呟いたジャッカルの声に皆が同意した。




「なぁ、説明に幸村を向わせたのがいけなかったんじゃねーか・・・?」




未だに動揺し続けている氷帝組を前に幸村一人が楽しそうに微笑んでいた。

失態に気付き柳生と蓮二が氷帝の元に慌てて送り込まれることになった。

全く収まらぬ雰囲気の中、低く鋭い声がコートに轟いた。




「これは一体何事だ!」




誰もが振り向いた先には氷帝学園テニス部監督、榊太郎が厳しい顔付きで歩いて来ていた。

それにピシリと姿勢を正したのは氷帝の生徒達とであった。




「跡部、部長が和を乱してどうする。恥を晒すな」

「・・・すいません」




あの跡部が殊勝にも素直に謝り、太郎の視線がに向いた。

ビクリと身体を揺らしたは視線をおずおずと返す。




「ウチの跡部が迷惑をお掛けした」

「!・・・・あ、私の方こそ騒ぎにしてしまって申し訳ありません、榊監督」




シュンと俯きながら謝ったにその場にいた全員が驚いて太郎を見る。

まるで借りてきた猫ではないか。

大人しくなった跡部とに目をパチクリさせて様子を窺う。

同時に溜め息を吐いた弦一郎と太郎の目が合い、互いに苦笑する。

完全に泣きそうになっているに太郎は苦笑して声を掛けた。




、顔を上げなさい」




視線を合わせるように屈んだ太郎の声がどこか優しくてはゆっくりと視線を上げた。

困った子だと言わんばかりに頭を撫でられて、は大好きな叔父様に抱き着いた。

謝りながらぎゅうぎゅうと抱き着いて来るの背を優しく叩きながら、あんぐりと口を開いているテニス部員達に言う。




「すまなかった。は私の姪でね。こら、。皆に謝りなさい」

「・・・ごめんなさい」




太郎に縋りついたまま、素直に謝ったに立海組は何とも言えない衝撃を受けた。

唯一事情を知っている弦一郎だけが不機嫌そうに腕を組んでいた。




「信じらんねー・・。あれ、ホントにか?」

は叔父の榊監督にだけは弱いのだ」

「じゃけ、氷帝氷帝言うとったんか」

「初めてさんが女性に見えました」

「あれ、そうかな?さん、いつも可愛いけど」

「あー・・、そりゃあ、幸村はいつもアイツで遊んでるからなぁ・・・」

「興味深いデータが取れた」




こうして大波乱の練習試合は榊太郎の偉大なる力によって丸く治められ幕を閉じた。


* ひとやすみ *
・よくやった榊太郎(42)!!笑
 とりあえず一段落したので、これからはもう少し楽に話が進みそうです。
 ちんたら更新ですが、お付き合いいただければとっても嬉しいですvv    (09/08/12)