ドリーム小説
目の前でパコーンパコーンと小気味いい音を立てて、黄色いボールが飛んでいる。
さすが叔父様の教える氷帝テニス部。
強豪立海に負けず劣らず、いい試合をしている。
だが、・・・・・いかんせん、その叔父様がいないのだ。
魅力半減どころか、興味すら湧いてこない。
目的が達せられないのだと知ってからのは不機嫌そのものだった。
マネージャーという名のただの役立たずに他ならず、がどこかへ行こうとしても誰も引き止めなかった。
いわゆる、触らぬ神に崇りなしだ。
立海テニス部全員を連れて来ても相手は氷帝、人数は吐いて捨てるほどいる。
はたくさんのボールが宙を舞っているのを横目に、拗ねるように校舎に入っていった。
「氷帝もレベル高いから、試合見るの楽しみにしてたけど、何だかすっごく騙された気がしてさ」
休日で人がいないのをいい事に、は他校の校舎を遠慮なく見て回る。
立海とは違う教室風景に感心しつつ歩いていると、角から現れた氷帝生がたくさんのファイルを抱えて飛び出してきた。
少年はを見て大きな声を上げて、走り寄ってくる。
その表情が泣きそうなのはなぜだろう。
「会長ー!どこ行ってたんですか、探したんですよ!全部ほっぽってテメェらでやれ、だなんて酷すぎます!」
「な、何なんだ?」
「何だじゃないですよ!手伝って下さーい!」
泣き叫ぶようにに纏わり付く、男にあれよあれよと手を引かれ、ある部屋に押し込まれた。
部屋には生徒会室と書かれており、中には女の子が一人パソコンに向って座っていた。
「胡杉さーん。やっと会長捉まったよー」
「遅いよ。会長仕事して下さい。これ以上はそこのバカには荷が重過ぎますから」
「酷いよ!でもホントにお願いしますー。今なら会長が女装マニアでも見てないフリしますから」
「
黙れ、山田(仮)」
「俺、山田じゃないですよー!」
***
よく分からないが、は何者かと勘違いされてここに連れて来られたらしい。
人違いだと言っても全然信じない山田(仮)に気持ち悪いくらい縋られ、胡杉という女の子にケーキを出され
完全に立ち去るタイミングを外してしまっていた。
よくよく見れば、二人の制服の袖に「生徒会」と書かれた腕章が付けられている。
ならばおそらくが座らされた質のいい椅子や、整頓され趣味の良さが滲み出てるデスクは生徒会長の物なのだろう。
「俺、たくさん考えて考えて作り直したんですけど」
「決算の提出は今日までです。総会の可決議案の統計を早くこちらに回していただかないと印刷間に合いません」
薄っぺらい紙を手渡され、はカップを置いて思わず受け取ってしまう。
恐々とこっちを見てる山田(仮)と疲れた様子の胡杉を目の端に入れながら、プリントに目を通す。
「おい、何だこれは。小計と総計の値が合ってないぞ。おい、前期の決算を見せてくれ」
ポロポロと出てくるミスに部外者のも黙ってられず、本格的に仕事を始めてしまった。
ファイリングされた資料を手に電卓を叩き、見積りに赤で訂正を入れていく。
その素早さに目を丸くして二人は見ていた。
「あとの合計と打ち込みは山田(仮)がやれ。女の子を隈が出来るほど働かせるな」
「えぇ?!」
「・・・なんか会長が優しいんですが」
は自分は一体他校で何してるんだと溜め息を吐いた。
そろそろ日も暮れる。
試合はもう終わっているはずだ。
戻らなければ、と立ち上がった時、閉じたままだった扉が大きく開けられて人が入って来た。
新たな入室者に、山田(仮)と胡杉は大きく目を見開いた。
「あーん?テメェら決算・・・誰だ、テメェ」
「お前こそ誰だよ」
「「
跡部会長が二人ー?! 」」
お互いにギンギンに睨んでいると跡部の間に激しい火花が散る。
そしてこの時、二人の仁義なき戦いの火蓋が切って落とされた。
* ひとやすみ *
・何だか私もよく分からなくなってきた。笑
ようやく跡部とファーストコンタクトでございます。
というか、山田(仮)くん書いてて楽しかった・・・・。 (09/06/26)