ドリーム小説

参った。

トイレに行って来ると校舎に入ったはいいが、帰り道が分からなくなって迷子になった。

とりあえず真っ直ぐ行ってみたけど、周りは誰もいない教室ばかり。

どうやら教室棟に入り込んでしまったらしい。

は再び真っ直ぐ進んで廊下の窓からようやく外に転がり出ると、そこに人がいた。

今日は学校が休みだからこんな所で人に会えるとは思ってなかったが、その人物の服を見て納得がいった。

氷帝テニス部レギュラージャージ!

よかった。これでコートに帰れる。




「あ、いい所に」




よくよく見てみると綺麗な長髪のその人は男の人だった。

まぁ、男子テニス部なんだから当たり前だったんだけど、顔も整ってたし。

口を引き結んで何も言わない彼に少し戸惑いながら、近付いてみた。




「もう試合時間だよな?連れてってくれ」




今日ここにその格好でいると言うことは試合に出るって事だよね。

そう勝手に思ったんだけど、とチラリと彼を窺うと首が肯定の意を示していてホッとした。




「ちょっと待て。そこにジローが寝てるから起こしてからな」

「ジロー?」




スタスタと足を運ぶ彼の向こうをヒョイと覗き見ると、そこには前に会ったジローが気持ち良さそうに寝ていた。

なるほど、彼はジローを起こすためにこんな人気のない所まで来たのか。

何度揺すっても起きないジローに苦戦している彼を手伝おうとも声を掛けた。

するとあっさり起きてくれたけど、私が跡部だって?

まぁ、寝起きだから今だけは許してやる。








***







それからは彼と二人、半分以上寝ているジローを運ぶのに苦労した。

意識がない人間がこれほど重いとは。

そう言えば、彼の名前を聞いていなかったなぁとジローをズリズリと引き摺ってる長髪君を見た。

さすがに助けてもらって自己紹介すらしてないのはまずいか。

そう思って口を開こうとした途端。




「宍戸せんぱーい!」

「やっぱ宍戸一人じゃジローは運べなかったかー。ほれ行ってこい日吉」

「向日先輩がどうぞ」

「こら。ケンカしとらんと手伝いや。立海さん待ってるんやから」

「あれ?宍戸先輩手伝ってくれてるのって立海のマネージャーさんですかね?」




何か、わらわらと来た。

しかも怖いくらいにキャラが濃い氷帝レギュラー陣。

いや、ウチのも相当濃いんだけどさー。

ま。とりあえずもう運ばなくていいみたいだからいっか。

そう、思ったのが間違いだったと、この後、私は激しく後悔する。




「あぁ。私は立海の・・・」

「「「「 跡部ぇぇぇ(部長ォ)?! 」」」」




違うわー!!!

何だこいつらはー!!!

は怒りのあまりフルフルと震えている。




「そんな!な、何があったんです?!」

「・・・何かの病気ですか?」

「跡部!そんなコスプレしてる暇あるんやったら仕事せいや!」

「くそくそ宍戸!どーなってんだコレ?!」




好き勝手喚くレギュラー達と違って長髪君(宍戸というらしい)は顔色一つ変える様子もなく淡々としていた。

やっぱ彼はいい人だ。




「お前らうるさい。彼女は・・・・・跡部、景子(仮)だ、」

お前もかー!!!




このやろー!そっと視線外すの止めろ、宍戸ー!

どいつもこいつも跡部跡部と言いやがって・・・っ!

初めて立海に行った時の事を思い出す。

沸々と湧き上がる怒りに任せては叫んだ。




「私の名前は!跡部じゃない!」

「源氏名がとはなかなか凝ってるやん」

「本名じゃ!ド腐れ眼鏡!!

「ふぎゃッ!!」




ジローを背負い投げて眼鏡にぶつける。

手にしてた物を投げただけなんだけど、とりあえずゴメン、ジロー。

跡部跡部と言われて何だか急に物凄く寂しくなってきた。




「榊監督はいないの?」

「ま、まさか!あかん!あかんでちゃん!ここは学校やで?!」

「うるさい、もっさり眼鏡!会いたいんだから仕方ないでしょ?!」

「「「「 ヒィィィィィっ!! 」」」」

「何なんだお前らは!」

「監督は今日は会議で来れないはずじゃ・・・」

 何 で す っ て ?! 




烈火の如く噴火しているがさらに爆発した。

目に見えるような怒りの業火に氷帝組はただただ震えていた。

そこに現れた立海レギュラー陣が彼らには神に見えた。




「トラブル発生かとは思ってはいたが・・・」

!何をしている!」

「ほれ。やっぱ騒ぎの原因、だったろぃ?」

「面白そうな事になっとるのう」

「ふふ。試合の前哨戦かな」

「この状況、笑い事じゃありませんよ」

・・・。お前まさか氷帝にも迷惑掛けてんのか・・?」




好き勝手言いながらこっちに向ってくるレギュラー陣をギギギと振り返ったは目を細めた。

ターゲット、ロックオン。

目標、ニコニコ黄色ジャージ!




「幸村ぁ!!騙したなぁ!詐欺だ!こんなの詐欺だ!監督のいない氷帝なんてミソの入ってない味噌汁と一緒だぁ!!」

「なかなかに美味しそうな例えだね」

「うわーん!弦ー!幸村がいじめるー!」




罵倒や非難に一つも堪えない幸村にの方が折れた。

いろいろと言われて傷付いたは泣きながら弦一郎に縋り付いた。

結局、いつものパターンに落ち着いた事に安堵した立海組は溜め息を吐いた。

がここまで子供っぽくなるのは取り乱してる時だけなのだが、どうも立海組はに弱い。

弦一郎の首に縋り付いてグズグズ言ってるにそれぞれが苦笑しながら声を掛けて慰める。

やけに静かな氷帝メンバーを見れば青ざめて固まっていた。




「跡部と真田が・・・」

ラブラブなんだよね」

「幸村ぁあ!余計な事を言うな!」

「「「「ひぃぃぃぃぃ!!」」」」

うるさぁぁい!!さっさと試合始めろー!!




正気を取り戻したの怒号で立海対氷帝の練習試合がようやく幕を開けた。



* ひとやすみ *
・普段男前で天然女たらしのですが、叔父様ネタと幸村の前では形無し。
 ツッコミキャラでもないのに氷帝組がボケばかりなので話がまとまらない罠。
 最強の男、榊太郎(42)さえ来てくれれば・・・っ!!         (09/05/26)