ドリーム小説

「はぁ?またお礼ィー?」




はカフェテリアでケーキをつつきながら心底嫌そうな顔をした。

向かいでは相変わらずニコニコ顔の幸村が楽しそうに一つ頷いた。

昼休みに珍しく呼び出されたと思えばコレだ。

雅とのランチに行こうと思っていた矢先に幸村に声を掛けられて、私は悩んだ挙句こっちを選んだ。

・・・・別にケーキをおごるよの一言に釣られた訳じゃない。




「うん。どうせならさんの好きなようにって思ってね。何がいいかな?」




何がいいって言われても・・。

コテンと首を傾げたテニス部部長に困ってフォークをくわえる。

礼をしてくれるのはブン太叩きのめし事件で部員の意識向上で、実力アップが認められたからだそうだ。

その件については弦一郎や蓮二もすでに礼をしてきているのではチャラだと思っていたが、

どうやらテニス部のトップ達はそれぞれ礼をしなければ気が済まないようだ。

正直、人から物を与えられるのは慣れているし、これと言って欲しい物もない。




「あのね礼だ礼だと皆言うけどさ、こっちがいらないって言ってるのにくれるのは逆に迷惑じゃないの?」

「それはいらない物だったら困るかもしれないけど、貰って損はしないしお礼は気持ちだよ」

「そっか。気持ちをいらないはちょっとヒドイな。ならケーキおごりで帳消しで」




弦一郎達と同じくそう言えば、幸村は首を振って断った。

それを条件に呼び出したのだからお礼にはならないそうだ。

何と言うか、変に生真面目な奴。

が頭を悩ませているとクスクスと幸村が笑って、思わず顔を上げた。




「うん。多分いらないって言うだろうなと思ってたから予想通りの反応で」

「幸村ってホント性格悪いよな」

「そんなこと面と向って言われたの初めてだな」




驚いたような顔をした幸村の表情があまりに嘘臭く見えて、は口を引き結んだ。

が僅かに残っていたガトーショコラを口に放り込んで不機嫌そうに咀嚼したのを見て幸村は再び笑い出した。

休み時間独特の賑やかさの中で、異様に目立つ二人は周りから見て楽しそうに見えた。




さんが氷帝好きとちょっと耳に挿んだんだけど」

「氷帝テニス部って意味なら、まぁそうかも」




紅茶を飲み干しながらは大好きな叔父様をぼんやり思いながら頷いた。

しかし何を思ってこんな話になったのか首を捻る。

相手の顔を見てもいつもと同じポーカーフェイスならぬ幸村フェイスで理解不能だった。

それでもは幸村がどこか楽しそうな表情をしている気がした。




「なら、来週氷帝との練習試合を観に来るっていうのがお礼でどうかな?」




ポカンとしていたは目を瞬いて向かいの男を見ていた。

つまり、来週叔父様に会えるの・・・?

期待を込めた目で見てくるに笑いを堪えて幸村は話を続けた。




「なんならベンチコートで観れる権利をあげるよ。1日マネージャーっていうね」

「そのお礼受け取った!!」

「ふふ。ありがとう」

「どういたしまして!」




叔父様への接近権の誘惑に耐え切れなかったは幸村に目を輝かせてそう言った。

この時のはそれがどういう事なのか、深く考えずにただ目の前の人参に喰らい付いた。

よくよく考えれば榊に会うだけならばベンチでなくともよかったのだが、後の祭り。

幸村は一件落着と微笑んで席を立ち、は嬉しそうに手を振ってそれを見送った。

ブンブンと何回か手を振っていてハタリと動きを止めた。

それから頭に引っかかった何かを考えるように瞬きを何度も繰り返して幸村が消えていった廊下に視線をやる。




「あれ?別にマネージャーやる意味はなくね?んんんんん?お礼がマネって・・・・」




ようやく自分のミスに気付いたはガクリと肩を落として、

今頃またご機嫌そうに笑ってるだろう部長に溜め息を吐いた。

ホント性格悪いよ、確信犯め。









***







誰が呼んだか、スーパーアドバイザー。

いつしか俺はにそう呼ばれるようになっていた。

ただの買い物客の一人なだけなのだが。

だから例のスーパーで偶然に会っても何も驚く事はないのだが、嫌な予感がするのだ。




「あ、ジャック!今日のメニューは何?」

「よう。今日はサバの味噌煮にしようかと・・。お前は?」

「ロールキャベツ!」




いつものように夕食のメニューを聞き合い、並んで歩く。

ようやくかごを持つ事を覚えたにジャッカルは感慨深く頷く。

初めて会った頃のの奇想天外摩訶不思議な行動を思えば涙すら出てきそうだ。

ジャッカルはふとのかごを覗き込んだ。




「・・・なぁ、かごの中のそれは何だ?」

「キャベツ」

それはレタスだ!!

「嘘だー!何かちょっとこれキャベツっぽいじゃん」

レタスっぽいんだよ!




相変わらずめちゃくちゃな事を言うに振り回されながら荷物を抱えてスーパーを出た。

毎回思ってるんだが、と買い物すると非常に疲れる。

結局、に合わせていつも桑原家も同じメニューになるのである。

楽しそうに隣を歩くを見てジャッカルは溜め息を吐いた。

キャベツとレタスを間違える奴が果たしてロールキャベツを作れるのだろうか。




、一人暮らしなんだろ?ロールキャベツなんか作れるのかよ?」

「ん?今日は三千四さんが作るよ」

誰だよ

「三千四さん、44歳。4のゾロ目年をちょっと気にしてるお茶目で可愛いO型の牡牛座さん」

そんな事聞いてねェよ




聞いた自分が馬鹿だった、とジャッカルは溜め息をもう一度吐いて黙って話を聞く事にした。

こうしてジャッカルは三千四さんマスターの称号を取得した。



* ひとやすみ *
・始めから嵌める気満々の幸村君と目の前の人参に喰い付いたちゃん。
 スーパーアドバイザー、三千四さんマスターと、とんでもない称号を着実に装備していくジャッカル君。
 しかし、まぁ、何だ、この連載はこんな珍連載だったか・・・?
 とにもかくにも氷帝との試合が決定ですよ!                   (09/05/07)