ドリーム小説

今日は弦が久しぶりの休みの日。

私が本屋に行きたいと言ったので約束通り本屋に連れて行って貰う事になっていた。

隣町以前に地元周辺にも疎い私を弦が迎えに来てくれると言ってくれたけど、それを私は断り、

何とか弦を丸め込んで昼過ぎに隣町の駅で待ち合わせということにした。

電車なんて乗った事がないからすっごく楽しみで、朝から街をあちこち歩き回ってから

最寄の駅に私は意気揚々と向った。

そこで私はジローというもしゃもしゃの髪の毛の男に出会った。

電車の乗り方を教えてもらって初めて電車に乗ったんだけど、それはもういろいろ大変だった。

切符はカードじゃ変えないらしいし、マイクに向って喋っても故障がない限り返事は返ってこないそうだ。

呆れたジローに切符を買ってもらって私は小さくなって頭を下げたが、

今度はお金を貸した私にジローが小さくなって頭を下げた。

おかしな出会いだったけど、私達はすぐに意気投合して仲良くなった。





「ブン太君と試合して勝ったー?!マジマジ?すげぇ!じゃ同じ立海かぁ」

「・・・まぁ、ちょっと機会があってね」




異様に目をキラキラさせてるジローと一緒に電車に揺られながらそんな話をした。

弦との待ち合わせの駅に着いてジローを振り返って手を振った。




「じゃ、またね」

「え、ちょっと・・!」




遮られるように人混みに流されて、会話もままならなかったが、縁があればまた会えるだろうと思って

私はそこを離れることにした。


残されたジローは立ち上がった自分の行き場をなくして、そのままストンと同じ位置に座り直した。

何を見るでもなく窓の外に視線をやって小さく呟いた。




「まだ名前も聞いてなかったのに・・・」




ジローはまだ目に焼き付いている跡部(仮)の表情を思い浮かべながら目を閉じた。

髪は長いけれど跡部にそっくりで、だけど性格は全然正反対のすげーE奴で

跡部じゃ絶対使わないほっぺの筋肉使ってキレイに笑ったのが目蓋にこびり付いて離れない。

思わず見惚れて名前を聞きそびれてしまった。

さらに不覚にもその時になって初めて気付いた。




「女の子だったC・・・」




ガクリとうな垂れたジローはマヌケな自分を笑って、再会を願ってそのまま眠りに誘われた。





***





弦一郎との待ち合わせ場所に着いたのは約束の時間の一時間以上も前だった。

は財布を取り出して中身を覗いて溜め息を吐いた。

今の所持金だと買おうとしていた本は買えなかった。

しかも今更気付いたのだが、どうやらカードも忘れてきたらしい。

約束しといて本末転倒。

仕方なくは携帯電話に手を伸ばして約束の相手に電話を掛けた。




「あ、弦?ごめん、今日行けなくなった」

『珍しいな、。こんな間際になって・・・。何かあったか?』

「はは。んー何もないよ?大丈夫。とにかくゴメン、弦」

『・・・いや、わかった』

「んじゃ」




は電話を切って再び大きく溜め息を吐いた。




「ホント、こんな間際になって約束破るなんて情けない」

「で、何があったんだ?」

「何って・・・え?!」




独り言に返事が返ってきて振り返っては悲鳴を上げた。

そこにはまだ耳に携帯を当てたままの弦一郎が立っていた。




ギャー!!なんでここにいんの、弦!!

「それはこっちの台詞だ、馬鹿者!分かりやすい嘘など吐きおって」

「何で知ってんの?!弦、エスパー?!」

違うわ!!




大混乱のままは弦一郎に引き摺られて駅の向かいの喫茶店に放り込まれた。

訳の分からぬまま弦一郎に付いていくと、奥のテーブルに見知った顔を見掛けて驚いた。




「蓮二?!なんでこんな所にいるの?!」

「俺には一時間前に待ち合わせ場所から断りの電話を入れてきたの方が不思議なのだが」

「へ?」




同じテーブルに腰を掛けては困ったように弦一郎と蓮二を見た。

なんで知ってるのだろう?

不思議に思いながら右を見ては納得した。

店の壁はガラス張りで駅の出入り口が丸見えだった。

これは見付かるはずだ。

通りかかったウェイターに紅茶を頼むと弦一郎と目が合った。




「で。なぜ待ち合わせ場所にいるのに断った?」

「えーと、あぁ、まぁ、うん。本のお金使っちゃってさ・・・」

「使った?お前がか?」

「私って言うかジローが?」

「誰だそれは?」

「誰ってジローだよ

「だから誰だそれは」




要領を得ないの説明を何となく汲み取った蓮二が二人の会話に呆れて整理をした。




「つまりそのジローに貸した事で料金が足りなくなりキャンセルした。

 なぜそのジローとやらに貸したんだ?」

「帰りの電車賃がなくて困ってたからあげた。ジローの事は私もよく知らないからまた会えるかわかんないけど」




紅茶が運ばれてきては淡々とそう言って紅茶を口に含んだ。

いい茶葉の匂いが口に充満して思わず口元が緩む。

それから顔を上げて二人を見た。




「で。そちらのお二人さんは紅茶の美味しいお店から待ち合わせ場所を覗いて何してたの?」

「ゔ・・・」

「弦一郎。に聞いておいてお前が答えないのは少々ズルイ気がするが?」

「何?やっぱり何かあるの?」




言い詰まっている弦一郎を楽しそうに見ている蓮二には首を傾げた。

観念したように大きく溜め息を吐いた弦一郎は声を漏らした。




「本屋の場所を蓮二に聞いていたのだ」

「は?本屋?だって知ってるって・・・」

「知らなかったから一時間前に俺と待ち合わせて本屋へ行く予定だった所にが現れてな」

「・・・それってキャンセルしたんだし、私を呼ばなければ嘘だってバレなかったんじゃないの?」

「馬鹿言え。電話で何もないと嘘を吐くわ、なぜか一時間前に居るわ、おかしな事だらけで放っておけるか」




不貞腐れたように口を挟んだ弦一郎には目を瞬いて蓮二を見た。

おかしそうに紅茶を口に運ぶ蓮二にも苦笑した。

どうやら弦一郎の中では嘘がバレる事よりもを心配する方が大きかったらしい。




「何で本屋の場所知ってるなんて嘘吐いたの?」




ピクリとその言葉に反応したのは弦一郎だけでなく、蓮二も同じだった。

急に雰囲気の変わった二人にの方が驚いた。




「礼を、言おうと思ってな」

「お礼?」

「丸井と試合した時の礼をまだ言えてなかったから機会を作ろうとしていたらしい」




どうやらがテニス部にめちゃくちゃな事を言ってブン太に試合を挑んだ時の事のようだ。

正直、自身、あれはやつ当たりで、好き勝手やっただけと思っていたので

そんな改まって礼を言われる事だとは微塵も思ってなかった。

結果、丸く収まったとは言え、文句を言われても礼なんてとんでもないのだ。




「どうせは大した事していないと思っておるのだろうが、あれで俺は目が覚めた。

 技術だけでなく、全員で上を目指すその意志もまた強さなのだと気付いた。

 これでまた俺達は強くなれる。への礼のかわりに必ず全国制覇をしてみせる」

「あぁ。あれ以来、目には見えない何かが働いて、俺達が強くなっているのがデータに現れている。

 礼を言う、




何をしたつもりもなかったが、真面目な表情で礼を述べた二人には小さく笑って、

ウェイターを呼んでケーキを追加注文した。




「お礼ならここのケーキでチャラね?」




ニヤリと笑ったに二人はおかしそうに笑って頷いた。



* ひとやすみ *
・この連載は弦ちゃん連載か・・・?そう思われるほどに弦一色な気が・・・
 けして書きやすいキャラだとか、個人的に好きだとか言う理由では・・・ゴニョゴニョ
 跡部を出してくれとの声に泣く泣くガマンしてきた私も皆様と同じくそろそろ限界。
 まもなく跡部を召喚します!(予定)恐ろしい黒魔術になりそうです。。。   (09/04/15)