ドリーム小説

気が付けばいつもと元の学校生活に戻っていた。

何だかんだ言いつつ、は仁王と一緒だったし、女の子達に慕われている。

あれから変わった事と言えば、さらにテニス部との縁が強くなったことぐらいだ。

廊下で目を輝かせて手を振ってくる女の子達には笑い返して、図書館へ入った。

本を読むのは好きだが、引越ししてから何かと忙しく、読むとしても家にある本で済ませていたので

図書館とは縁がなかった。

本を探しつつ配置を覚えようと棚の間を歩き回ってみたものの、やはり目当ての本はどこにもなかった。

カウンターで退屈そうにしている女の子を見て、は足をそちらに向けた。

どうやらには気付いていないようで、カウンターに肘をついて欠伸を噛み殺していた。




「眠そうなところ悪いんだけど・・・」

「うわっ・・センパイ!」

「本を探してるんだ」




慌てて身体をただした図書委員の女の子に笑って用件を告げた。

いくつか話をして学校の図書館に検索をかけてもらったが、やはり学校では購入していなかった。

購入申請をするか、と聞かれたがは横に首を振って断った。

取り寄せは時間が掛かるし、それにあまり需要のありそうな本ではない。




「自分ですぐ購入したいんでしたら、隣町に大きい本屋があるそうなんですけど、私も詳しくは知らなくて・・」

「隣町の本屋の場所なら俺が知っている」

「あ、弦!」




カウンターに本を置いた弦一郎が会話に割り込むようにして入って来た。

落ちるんじゃないかってくらい目を見開いた図書委員をよそに会話を続ける。




「教えて。多分大きい所じゃなきゃ置いてないらしいし」

「・・・いや、俺も欲しい本がある。連れて行ってやる」

「え、でも面倒じゃない?」

「構わん。久々にあの本屋に行きたかったしな」




言い切った弦一郎には苦笑した。

好意で言ってくれているのを無理に断る必要もなかったため、ありがたく頷いておいた。

固まってしまった図書委員に気付いた弦一郎は怪訝そうに声を掛けた。




「どうした?この本を借りたいのだが」

「え!は、はい!返却期限は2週間後です!」

声がでかいッ!

いやいや、弦の方がデカイよ

「す、すいません」




泣きそうに震えている図書委員の子にが代わりに謝って、弦一郎の背を押して図書館を出た。

不満そうにしている弦一郎に溜め息を吐く。




「全く、図書委員たる者があれでは・・」

「弦が恐がらせるからだろ?」

「怒鳴ったのは悪かったが、恐がらせるつもりは・・」

弦の場合、その顔が十分恐いから

「どう言う意味だ、!!」

「はいはい」




またプリプリ怒り出した弦一郎をは慣れた様子で宥めて、廊下で手を振る女の子に微笑み返した。

本屋へは明日行く事を約束しては未だにプリプリしてる弦一郎と別れた。








***








やっべー。

帰りの電車賃の事すっかり忘れてた。

前からどうしても欲しかったシューズが神奈川の店舗に入ったって聞いて、俺はすぐに買いに来た。

念願のシューズを買えた事はEんだけど、帰りの電車賃まで使っちゃった。

ここから氷帝までは電車だと少し遠い。

新人戦で知り合ったボレーがマジうめぇブン太君は立海だからここからなら近いけど、

今日はラケットもないし試合も出来ないなー。

俺は溜め息を吐いて路線図を見上げて立ち尽くすしかなかった。

片手にシューズを抱えてどうしようかと悩んでいると、券売機の前に突っ立っていたのが悪かったのか

人とぶつかってシューズを落とした。

ぶつかった人は転がったシューズを拾って慌てて俺に駆け寄ってきた。




「おっと!ゴメン!」

「俺の方こそこんな所でボーっとし・・・」




渡されたシューズから視線を上げて相手を見た瞬間、俺は固まった。

これマジで。

そりゃビックリするって。

だって目の前に跡部がいたんだもん。




「大丈夫?」




ブンブンと目の前で手を振って困ったように覗き込む跡部に俺は我に帰って瞬いた。

こいつは跡部じゃない。

直感でそう思った俺は答えるようにコクリと頷いた。

そっか、と安心したように笑った跡部(仮)を俺はマジマジと見た。

どう考えても目の前の跡部(仮)は跡部じゃない。

ぶつかったくらいで心配なんかしないし、第一、俺様何様跡部様のアイツは謝らない。

この世に同じ顔した奴が三人いるとは言うけど、ホントにいるもんなんだなと感心しているとまた声を掛けられた。




「並んでたよな?先どうぞ」

「へ?」




券売機を指されて俺は困った。

買いたくても買えねーから立ってたんだって。

カリカリと頭を掻いて唸ると跡部(仮)は何かおかしいと感じたようだ。




「どうした?何か困ったことでも?」

「ゔ。・・・・実は金が足りなくて帰れないんだ。

 仕方ないから俺様何様呼び付けてやろうと思ってるから何とかなると思うけど・・・」




正直、初対面の人にそんな事言うつもりはなかったんだけど、見慣れた顔に気が緩んで思わず言っていた。

苦笑いして顔を上げると跡部(仮)はキョトンとしてから鞄に手を突っ込んで何かを探し出した。

俺も黙ってそれを見ていると見付けたそれを引っ張り出して俺の手に握らせた。




「これで足りる?」




手を開くとお札が数枚握らされていて驚いて俺はつき返した。

こんな大金貰えるわけないC!

慌ててつき返した俺に驚いたのか跡部(仮)も思わず受け取ってくれた。

突拍子のない所は跡部にそっくりだけど、跡部なんかより断然出来た奴だと思う。




「じゃあさ、もしゃもしゃ君の足りない分を払うからさ、代わりに電車の乗り方教えてくれない?」

「(もしゃもしゃって俺・・?)」

「実は電車、乗ったことないんだよね」




ホントに跡部そっくりな跡部(仮)は跡部そっくりに突拍子もないことを口にして俺は呆れた。

でも嘘を吐いてるようには見えなくて俺は返事のかわりにお札を一枚あずかって名前を述べた。




「もしゃもしゃじゃなくて俺、ジローね」


* ひとやすみ *
・でーたでーた出た羊の子!(あの曲調で笑)
 ようやく、ようやく!氷帝組とのコラボが実現しそうですよ、お嬢様方!
 これは結構前から温めてたネタだったのでようやくお披露目できて私のテンションが異常です!
 ぼちぼち他校メンバーも出していきたいと思ってるのでもう少し応援よろしく願います!  (09/04/15)