ドリーム小説
軍議と言われ緊張した面持ちで部屋に向かえば、内部の様子には少々拍子抜けした。
同盟三国で軍議を開いたことがなかっただけに気を張っていたのだが、見知った顔が少数いたばかりだった。
これでは軍議というより、話し合いと言った方がいいかもしれない。
安堵しながら勘助の後ろに座れば、正面にいた体格のいい男が固い表情で目礼してきては慌てて頭を下げた。
上杉の紋袴を着てるからその筋の人物だろうけど誰だろう。
探るようにチラチラと視線をやるに勘助が呆れたように口を挿む。
「あの仏頂面のつまらん男は上杉景勝。軍神の跡取だ。そのくらい知っておけ、馬鹿が」
「くぉら貴様ぁ!全部聞こえておるわ!殿を馬鹿にするとこの無敵の兼続が許さんぞ!」
「・・・兼続」
勘助の言葉に反応するように景勝の隣にいた男が突然怒鳴りだしては飛び跳ねた。
小さく呟いた景勝の声に兼続は渋々黙り、勘助は面倒そうに息を吐いた。
「見るからにあの阿呆な男が直江兼続だ」
「あの方が武勇兼備と誉れ高い越後の智将、直江兼続殿?!」
「ダッハハー!そうであろう、そうであろう!」
の言葉にフフンと鼻を高くしている男を見ては目を白黒させる。
直訳すれば、「ホントにあれが?!」である。
の驚愕具合にお前の気持ちはよく分かると皆が頷く。
だって、アレだもんなぁ・・・。
無駄に派手で喧しい男に上杉側まで溜め息を吐く始末。
勘助と兼続は直接戦ったことはないが、越後の知恵袋、上杉の山本勘助と囁かれれば嫌でも気になる。
伝え聞くその手腕は勘助をしても呻るほどであるが、実物はこれ。
今でも信じられないというのが偽らぬ本心である。
実際、謙信も景勝もどうしてコレが智将なのか今でも不思議でならない。
類稀なる能力をずっと見てきたのだから疑う余地はないのだが、それを上回るウザさが素直に認めさせてくれないのだ。
渋々ながら重臣ばかりのこの場に連れては来たが、非常に空気が薄ら寒いことになっている。
「一万歩譲って智将と認めても、あの阿呆は武道はてんで駄目だ」
「何おう?!」
「・・・兼続」
勘助の言葉に兼続と刃を交えた事のある武将達は力強く頷いた。
何せ一撃で倒せてしまうほどの弱さ加減だ。
兼続が百人居てもには勝てない貧弱さだとかすがが吐き捨て、皆が頷くのではギョッとする。
さっき無敵って言ってたのに?!
何とも言えない雰囲気に終止符を打ったのは信玄だった。
「そろそろ本題に移りたいのじゃが」
凛とした声に皆が姿勢を正して信玄を見た。
部屋に会するは、武田信玄、山本勘助、真田幸村、猿飛佐助、上杉謙信、かすが、上杉景勝、直江兼続、
伊達政宗、片倉小十郎、鬼庭綱元、伊達成実、そしてである。
信玄と謙信の視線に促され、偵察に出ていた佐助とかすがが一歩前へ出る。
「未だ明智と前田は膠着状態。情報通り魔王の嫁は本隊を離脱し東山道を南下、紀伊山中の村を壊滅させてました。
ひでぇもんでしたよ。女子供も容赦なし。おまけに村は焼けて何にも残ってませんでしたよ」
「何もじゃと?」
「はい。それと、その付近から蝮の娘を見張らせておいた上杉の忍が骸で見付かりました。
その位置から見ておそらく加賀へ向かうつもりかと」
「あけちへかせいするつもりですか」
「Hey、待てよ。俺はその村の方が引っ掛かってるんだが」
「某も何だか気になり申す。佐助がこの場で言うのだから何か関係あるのだと思うのだが」
「なるほど。若造共の野生の勘という奴か」
ニヤリと笑った勘助に政宗と幸村は眼を鋭くする。
信玄の宥める声を聞きながら、は物凄いトップ会談に目を回す。
固唾を呑んで見守るの正面で、景勝が口を開いた。
「それで、実際どうなのだ?」
「おそらく、何もないのが問題なんだろうな」
「私も小十郎と同意見だ。焼けても何かは残るものだ。なぜその村が狙われたか分からん以上、今動くのは尚早であろう」
「んー。小十郎とツナがそういうのなら何かあるんだろうね。ねぇ、はどう思う?」
成実の興味本位の言葉で部屋中の視線が集まった。
急に話を振られて僅かばかり驚いたが、はその言葉にようやく頭を動かし始めた。
何も残らなかったというより、何も残さなかったと考えた方がしっくりとくる。
残さないように火を点けたとするなら、何を隠していたのだろうか。
織田がわざわざ隊を割くほどの何か。
しかも、濃姫は本隊に戻らず、明智へ加勢するつもりらしい。
「おそらく村人自ら火を放ち何かを守った。そして私達の同盟を知りながら濃姫が本隊に戻っていない所を見ると、
魔王にはそうまでして手に入れたい物がある。おそらくその村の事件はまだ終わっていない?」
の言葉に満足した智将達は再び討論を始めた。
何だか酷く胸騒ぎがするのは何故だろう。
は落ち着かない心を抑えるように胸元に手を当てて視線を落とす。
前に話した時、謙信は何か知っている風だった。
チラリと盗み見た謙信は眉間に皺を寄せ、同じように信玄も険しい顔をしていた。
この二人はきっともう分かっているんだ。
不意に逸らした視線が兼続とぶつかりは目を瞬く。
兼続もと同じように謙信と信玄を窺っていたようだ。
視線が合った兼続は真面目な顔をヘラリと崩して声を上げた。
「やっぱここは手薄な織田本隊を一気に倒すべきでしょう!大丈夫だ!無敵の俺がついてるからな!」
「喧しいわ!罠かもしれんのだぞ!」
「喧しいとはなんだ!今魔王倒しとかないと後が面倒だぞ!」
「どう言う意味だ?」
「分からないのか?その村はアイツらの隠れ村。加賀にもあると聞いたことがあるから魔王嫁の行動も納得がいく」
「アイツら?」
皆が怪訝そうな顔をしながらも黙って兼続の話に耳を傾ける中、信玄と謙信はハッと息を呑んだ。
目を細めた兼続はシレッとその言葉を口にした。
「斡祇しかいないだろ」
その言葉は室内を震撼させた。
・・・斡祇って、どういうこと?
どよめきと驚愕の空気の中、は身体を震わせて固まっていた。
同姓なだけで自分とは関係ないと思いたいが、何か妙な勘がそうさせてくれない。
あぁ、誰か・・・・。
は祈るような思いで、何かを振り切るように耳を塞いだ。
* ひとやすみ *
・ようやくここまで来たよ。長い道のりだった・・・!
そして思わぬ所で景勝と兼続が出張って驚いた。笑
BSRでの兼続の扱いはかなり凄いと思う。あんな直江見た事ねーよ!笑
無敵だけど弱い彼は馬鹿だけど賢い、といいなぁと妄想を広げて書いてみた。
すっごく大変だったけども。さてここからまたオリジナルの無茶振りいくよー。笑 (10/08/14)