ドリーム小説
酷く動揺していた。
政宗が妖しく笑ったと思えば、気が付けば押し倒されていて唇が降りてきた。
触れたのはほんの一瞬でに乗り上げていた政宗が瞬きの合間に忽然と姿を消していた。
板間に転がっていたは何度も目を瞬かせて呆然と天井を見上げる。
え?あれ?今、ここに政宗さん居たよね?
絶賛大混乱中のはドカンと派手な音を耳にして、寝転がったままコテンと首を捻った。
砂煙の中に炎の塊。
「ゆ、きむらさん・・・?」
「
嫌がる殿にあのような仕打ち!今日という今日は許せませぬ!!」
「
・・・はっ。アイツが嫌がってるように見えたならテメェの目は節穴だな、真田?」
壁に背を預けるように座り込んでいた政宗が腫れた口元に手を伸ばす。
どうやら政宗は幸村に殴り飛ばされてあんな所まで吹っ飛んだらしい。
そして二人の間には稲妻が走り、メラメラと怒りを燃やしている。
いや実際に幸村が炎を、政宗が雷を身体から発しているのだが。
こ、これって私のせい・・・?!
「待って下さい二人共!私、気にしてませんから!あんなのイタチにでも舐められたと思えば・・・」
「くぅ!口惜しや!某がもう少し早く来ていれば、殿にそのような逃避させずとも良かったものを!」
「Hey、真田!Sory、何聞いても負け惜しみにしか聞こえないゼ」
「ちょ、あの・・・!」
「雌雄を決する時が来たようでござるな!」
「上等だ!泣いて許しを請いな!」
「え、だから、あの!」
の必死な声も空しく、二人は睨み合って自分の得物を抜いた。
重々しい緊張感が空気を支配した直後、ドン!と何かが爆発したように凄い衝撃が押し寄せてきた。
凄まじい爆風に煽られ、は吹き飛ばないように四つん這いになる。
実際は幸村の槍と政宗の刀が交じり合っただけなのだが、剣圧なのか気迫なのか能力者同士の戦いは嵐を呼ぶのだ。
物凄い速さで刃を交し合う二人を見ていては泣きそうになった。
何でこんなことになったんだろう。
私はただ、皆で仲良くいたいだけなのに。
何度目かの衝突に刀を押し合う二人はギリギリと相手を睨んだ。
「一度手放しておいて、今更のこのこ現れて殿の心を掻き乱すのは止めていただきたい・・・!」
「馬鹿言うな。の時とは事情が違うんだよ・・・!」
「事情?些細な理由なら容赦は致しませぬぞ!」
「Ah?惚れた女口説くのに理由がいるのか?」
「・・・!」
政宗の言葉に幸村はもちろんも絶句した。
まさか政宗の口からそんな言葉が飛び出るとは思いもしなかったのだ。
どこか誇らしげな政宗に幸村は顔を歪めて歯を噛み締めた。
「益々殿を渡す訳には参りませぬ!」
「聞けねェなぁ。ただ渡さないだけじゃガキの我侭と一緒だろーが。俺を納得させるだけの言葉を吐いてみな!」
「軽々しく惚れたなどと妄言を吐くとは、殿を何だと思っておるのだ!」
「Ha!!軽い?馬鹿言うな!残念だが、俺は本気だ」
「某とて本気でござる!!某とて・・・、某とて本気で殿をお慕いしておるのだ!」
渡しはせぬと強い眼光で刀を弾き返した幸村に、政宗はニヤリと笑って距離を取った。
一方、は自分の耳を疑っていた。
今、幸村さん何て言った?
え、お慕いって、誰を・・・?
脳内で繰り返される二人の声を時間を掛けて理解したは真っ赤になった頬を覆った。
人並みに二人の好意に照れただが、この状況を引き起こしたのが自分への想いからだと気付いた瞬間真っ青になった。
止めなきゃ・・・!!
身を刺すような殺気に怯えながらは口を開いた。
ふたりとも、もう、やめて・・・!
の叫び声を皮切りに再びドンと激しくぶつかり合った二人には絶望した。
私の声、全然聞こえてない。
の動揺とは裏腹に斬り合いはヒートアップしていく。
息を吐かせぬ猛襲の中、弾かれるように二人は距離を取った。
「やるじゃねェか」
「政宗殿こそ。ですが殿は渡しませぬ」
「奇遇だな。俺も今そう言おうとしていた」
「全力で参る!」
「推して参る!」
二人が同時に地面を蹴り、三度目の衝突で荒れ狂う風には身体を煽られた。
斬り合う二人を止めようと身体を起こしていたのが徒になった。
いくらバランス感覚が良いでも、さすがにこの強風では軽すぎて受身など無意味であろう。
叩き付けられることを覚悟したはギュッと目を瞑り、衝撃に備えた。
「はいはい、そこまで」
突然、幸村でも政宗でもない声が降って来て、は自分が誰かの腕の中にすっぽり収まっていることに気付く。
すっと視線を上げると、迷彩色の派手な忍。
の目の前で斬り合う二人の刀を止めているのは黒尽くめの自分の忍。
「、怪我はない?」
「う、ん」
「佐助ぇ!何故止める!」
「風魔!邪魔するならテメェごとぶった斬るゼ?!」
佐助の優しい声にホッとするの耳に飛び込んでくるのは幸村と政宗の非難の声。
そこに渦巻く怒りの感情が伝わってきては小太郎を見て息を呑む。
め、めちゃくちゃ怒ってる・・・。
「旦那達ねぇ、熱くなるのはいいけど何の為に刀振るってんのか忘れてない?ちゃんと状況見てからやり合いなよね」
挑発されるがままに斬り合っていた二人は佐助の呆れ声にハッとなってに視線を向けた。
力なく座り込むの表情は曇り、服装も髪も乱れている。
申し訳なさ気に謝った幸村と政宗に、小太郎はようやくクナイを片付け、慌てての怪我を確かめた。
「そんじゃ、ま、行きますか」
「行くってどこに?」
二人にどんな目を向けたらいいのか分からなかったは首を傾げて佐助の隣に並ぶ。
佐助は見上げてくるの頭を撫でて、表情を固くして呟いた。
「軍議だよ。織田が動いた」
* ひとやすみ *
・佐助イイトコ取り!笑
一番大人なお兄さんです。カッコいいぞ、佐助!
そしてイタチと書いてダテと読む。笑
少しは気にして上げてヒロイン!政宗の立場がないからさー!
ヒロインを無視して繰り広げられる告白合戦!こんな浪漫の欠片もない話でいいのかなー・・・。 (10/08/14)