ドリーム小説

は文台の前でうんうんと唸っていた。

やはりいくら考えても期待されるような言葉は書けそうにない。

少し後ろで控えていた小太郎はそんな主を静かに応援していた。

そんな折、ピクリと顔を上げたは見えない何かを見るように目を細めた後、嬉しそうに立ち上がった。

少し遅れて小太郎は来客に気付いたが、止めるより先に部屋を飛び出したは遠慮なく客人に抱き付いた。




「お蘭さん!!」

「おやまぁ、気配に敏いとは本当のようだねぇ」

「・・・!!」

の子飼いに成り下がったか、風魔」




中腰で構える小太郎にそういい捨てると、蘭はまるで自室のように座り込みいつもの煙管を取り出した。

ピリピリと警戒している小太郎には座るように声を掛け、嬉しそうにお茶を淹れる。

一息吐くように煙を吐くと小太郎は迷惑そうに身じろぎ、蘭は薄く笑った。




「まさかアンタがに付くとは意外だったが、正解だよ」

「・・・・・・・・」

「・・・小太郎、恥ずかしいからそれ以上は言わないで」




蘭は目を丸くした。

が一人で勝手に喋っているようだが、急に雰囲気の柔らかくなった小太郎を見て会話をしていることは間違いなかった。

相変わらずこの子はぶっ飛んだ子だよ・・・。




「全く。を逃がすとは本当にあれは馬鹿だねぇ」




誰とは言わず呆れ返る蘭に小太郎は力強く頷いた。

は苦笑して蘭と小太郎に湯飲みを渡すと、再び口を開いた。




「私は会えて嬉しかったですが、今日は何かあったんですか?」

「何だい?アタシが会いたいから来たのでは不服なのかい?」

「・・・嘘は吐いてないけど、何か隠してる感じですね」




ずずずとお茶を啜ったは湯飲みの淵から蘭を盗み見た。

会いたいだけなら同盟のさし迫った忙しい時に来る必要はない。

これはおそらく政宗に命じられたんだろう。

は苦笑を一つ漏らした。




「政宗さんも心配性ですね。あれから特に何もありませんし、小太郎もいるから大丈夫なのに」

「・・・本当にあれは馬鹿だよ。の方が上手じゃないかい」

「それでもお蘭さんに会えるように気遣ってくれたことは嬉しいですよ。・・・・あ」

「今度は何だい?おや、また客のようだね」




来客の度に警戒する小太郎を宥めながら、は襖を開けて予想通りの人物に微笑んだ。

ぎこちなく微笑み返した客人は室内の顔ぶれに、ギョッとした。




「黒脛巾?!」

「ウチで働いていたかすが、だったかねぇ」

「・・・ウチってまさか、」

「まぁ害があった訳でなし、好きにさせていたんだけど、こんな形で会うとはね、上杉の小娘」




相変わらず喧嘩を売るような喋り方をする蘭には慌てて二人を止めに入った。

かすがもまさか菊華屋の元締めが黒脛巾の頭領だとは知らなかったようで、あからさまに警戒の色を濃くした。

しかも部屋の奥にいるのは風魔ではないか。

は軽く事情を説明し、話を逸らすようにかすがの手の物を指差した。




「これは、謙信様からへの文だ」

「おや、悪巧みでもしてるのかい?」

「そんな訳あるか!謙信様は風流を愛され、無理矢理連れて来られたが寂しくないようにと・・・!」

「そういや、も文台にいたんじゃないかい?」

「話を聞け!」




ガヤガヤと騒がしくなった室内には苦笑して、書きかけの文を見た。

菊姫への返信を書いてはいたのだが、打ち掛けを着た時の周りの反応と言われても、自分で見惚れてたとか

書くのは阿呆らしいし、何よりそんな在り来たりな文章であの菊姫が納得するはずもない。

がうんうんと唸っている内に蘭は文を盗み見て口端を上げると、筆を取った。

サラサラと書き付けた文を満足そうに眺め、小太郎に押し付けた。

文を読んで固まった小太郎にかすがは不思議そうに近寄り、内容を見て目を見開いた。




「これは本当か!!悪い虫が付くとはこの事だ!!」

「え?」

「アタシが代わりに虎の娘子に文を書いておいたよ」

「な、何書いたんですか!!」




怒り心頭のかすがと小太郎に蘭はケラケラと笑い、当のは文の内容が気になって仕方なかった。

ドタンバタンと大騒ぎの室内ではあったが、目が三対キラリと光り一瞬で警戒網が張られた。




「「・・・そこッ!!」」




クナイが二つ天井に突き刺さり、落ちてきたそれに蘭が容赦なく淹れたばかりのお茶をぶっ掛けた。

熱湯を浴びて転がり回るそれにはあんぐりと口を開いた。




「佐助?!」

「あっちぃ!!てか何なのこの仕打ち?!」

「何じゃ、猿か」

「それならそうと早く言え」

「・・・・・」




分かっていてやったに違いない忍三人を、は困ったように窘めて佐助に駆け寄った。

ぐずぐずと鼻を鳴らす佐助にが声を掛けると、物凄い勢いで抱き付かれた。




「旦那のお守り大変だったんだからね!何やっても殿殿ってそればっかり!旦那に文の一つでも書いて黙らせてよ!」

「おい、猿。が虎の娘子に書いた文を持って帰って、真田にも読ませてやれ」

「え、俺様もしかしてちょうどいい所に来た?」

「ちょっと待って!それは絶対ダメ!新しく書き直すから!」

「いやいや、確かに預かりました」




小太郎の持っていた文を素早く奪い取り、懐に仕舞い込んだ佐助をは恨みがましく見た。

の反応を見て面白そうだと佐助は内心笑ったが、これが後に彼にとんでもない悲劇をもたらすことになる。

それにしても、と佐助は部屋を見渡して呆れ返った。




「何なのこの大層な顔ぶれは・・・。戦でもする気?」

「知るか。に会いに来たらこうなったのだ」

「よくもまぁ、こうも忍ばかり。相変わらず面白い娘だねぇ」




感心されてるのか、呆れられてるのか、部屋中の視線を集めたは頬を掻いた。

おかしな空気を一掃しようと、は強引に佐助に話を振った。




「それで、佐助、甲斐で何かあったの?」

「あぁ、復興の目途がついたんだよ、




少し懐かしい笑顔で佐助はにそう告げた。

人質生活に終わりが見えたが、見えない所で火種が燻ぶり始めているのにまだ誰も気付いていなかった。


* ひとやすみ *
・ひとまずここで星回帰編は終了ですー!
 さてそろそろ武田組にもお出まし願いましょうか!
 そして、追記なんですが、佐助とかすがの関係はすでに修復されてます。
 命のやり取りが日常の忍ーズは命令さえあればいつ敵対しても仕方ないという考えです。
 さすがにかすが姉さんも佐助に頭を下げたでしょうが、佐助もあの時自分が襲撃しようとしたのが
 ヒロインだと気付いてるだけに複雑だったり。裏を見せない二人にヒロインもあえて黙ってます。
 次編は皆様の闇討ちに遭うかも知れない展開の予定なので私も複雑ですが、
 頑張りますのでお付き合い願います!とりあえずここまでお付き合いありがとうございました!     (10/06/03)