ドリーム小説

楽しそうに人体破壊に伴い森林破壊を進める政宗を横目に、は敵の素早い動きを避けながら思考に耽る。

これはどう見たって忍の動きだけど、私はどこぞの忍に喧嘩を売るようなことをしただろうか?

というか、そもそもが探されて、が狙われるっておかしくない?

が姉弟なの知ってるのって伊達の重臣だけだし。

その重臣達も腫れ物を触るように、一切には近付いて来ないのに。

まぁその線は筆頭を襲ってる時点で有り得ないか。

斬り付けてきた敵の腕を叩いて獲物を落とすと、はそのまま放り投げた。

ドーンと派手な音を立てて吹っ飛んだ敵は大きな木にぶつかり激しく揺れた。

敵を投げた瞬間、股の間から見えた光景には声を上げた。




「あ!猪!」

、テメェ遊んでないでさっさと片付けろ!」




政宗の怒号に気を悪くしながらも、草陰から様子を窺っている瓜坊に視線を向ける。

そうか、子供がいたのか・・・。

村を襲うことに味を占めた猪なら駆除を考えていたけれど、こんな小さい子供がいるならどうしたものか。

ふと森を風が駆け抜け、鼻についたきつい臭いにはハッとした。

襲い来た敵の肩を借りて木の幹に跳び上ると臭いの素である葉を見付けた。

それを枝から懐刀でスパンと切るとは猪の前に投げ捨ててみた。

ヒクリと鼻を動かした瓜坊は慌てて森へと逃げ去った。




「こら!手伝え!」




は返事の代わりに木から飛び降りて、渋りながらいろは包丁の下段を引き抜いた。

出来れば使いたくなかったけれど、残りは政宗が手伝えと言うくらいには強い奴等らしい。

・・・ただ単に、猪と遊ぶが気に食わなかっただけかもしれないが。




「私の刺身包丁、あとで砥ぐの手伝って下さいね!」




唯一の長刀である刺身の切っ先を上手く使い、刃をいくつも交えて敵を追い込む。

キンキンと甲高い音をさせながら敵が背後に気を払った瞬間、左の懐刀が敵の首を叩いた。

気を失ったのを確認してからは刺身包丁の傷を確かめて、政宗に目を向けた。




「おい、お前ら何でを狙う?」




最後の一人を叩きのめし、政宗は襲撃の理由を荒っぽく聞いていた。

はその様子を遠くから見ていたが、もう一つ動いた気配に瞬時に菜切り包丁を抜いた。




「独眼竜、覚悟!」




政宗の背後から飛び出した襲撃者だったが、が投げた菜切りの柄を顔面に受け、衣服ごと木の幹に縫いとめられた。

飛んできた包丁に信じられないという顔をする政宗にはケロリとして告げた。




「どうやら今回狙われてたのって、私じゃないみたいですね」








***








ボロボロになって帰って来た二人に老婆は驚いて声を上げた。

朝早くからどこぞへ消えた二人が傷だらけで帰ってくれば誰だって驚くだろう。

結局、あのままとんぼ返りした訳だが、の手にはあの時の枝が握られていた。




「臭い枝なんか掴んで来てどうする気だい?」

「これ畑の近くにいくつか置いとけば、猪は近付いて来ないと思いますよ」

「はぁ?!」

「実証済みです」

「お前、あの時そんなことしてたのか!」




猪などの鼻の利く動物は刺激臭を嫌うとどこかで聞いたことがあるのを思い出し、

は枝を折ると臭いのする植物を投げ付けてあの瓜坊で試したのだ。

呆れながらも政宗はその知識と度胸に姫軍師の実力を垣間見た気がした。




「もう帰るのかい?ならこっちおいでちゃん。髪を整えてあげよう」




名残惜しげに微笑んだ老婆に誘われるようには座りこみ、老婆は乱れた髪に櫛を通した。

何だか嬉しそうに笑うの顔に政宗はホッと息を吐き、帰り支度をしに外へ出た。

それからまもなく馬に水をやっていた政宗は、閏の反応に視線を上げて目を丸くした。




「お婆さん、とんでもなく器用な方だったようです」

「・・・あぁ、その髪、よく、似合ってる」

「ほらみなよ。私にかかれば男の一人や二人落とすのは訳ないさ」




何とも言えない顔で視線を落とすは居心地悪いように、閏の鼻面を叩いた。

の髪は複雑に結われているが派手ではなく、華やかさと凛々しさが少し増したように思える。

そこに控えめに添えられた藤の花がまるでそのもののようだ。

まだお礼言ってなかったですよね、と小さく呟いたに政宗は目を瞬かせると思わず視線が合ってドキリとする。




「簪、ありがとうございます」




久方ぶりに自分に向けられたの笑顔を見た政宗はただ呆然と見ているしか出来なかった。

その様子にうんうんと頷いた老婆は楽しそうに呟いた。




「らぶ、じゃね」

・・・は?










老婆に別れを告げた二人は山道を馬に跨り、カポカポと静かに歩いていた。

何だか妙な空気に黙り込んでいたは、いつ政宗に謝ろうかと考えて込んでいた。

一人で勘違いして、随分酷いことを思っていた。

おそらく態度に出てただろうし、気分が悪かったに違いない。

いつまでも黙り込んでいる訳にもいかないと口を開こうとした時、政宗に遮られた。




「巻き込んで、悪かったな」




どうして政宗が謝るのだとは心底驚いた。

政宗の言葉からあの山中での襲撃のことだと察しはついたが、謝るべきは自分の方だとは首を振った。

今回は独眼竜が狙われたけれど、自分も確かに追われているのだ。

それに、心配してくれたから私を屋敷に残さずここまで連れて来てくれたんでしょう?




「街であの女の人にあばら屋の解体頼まれて、引き受ける代わりに材木貰ってきたって聞きました」

「・・・口の軽い婆さんだな」

「謝るのは私の方です。勘違いして酷い態度を取りました」

「気にするな。俺は俺のやりたいようにしただけだ」




ガシガシと頭を掻いた政宗は照れ隠しに視線を逸らす。

は認めざるを得ないその事実と向き合って小さく笑った。




「・・・あれから過ぎた時は人を変えるのに充分な時間だったようですね」

「俺が変わったと思うのか?」

「はい」




あの事件がと政宗に与えた傷は同じではないけれど、確かに政宗を変えるほどの出来事だったのだと瞳の色が示す。

切なげに揺れる隻眼にはもう一度自分の愚かさを悔いた。

変わらないものはない。

頑なに現実を見ようとしなかった自分が情けなくて居た堪れない。

じんわり胸の奥に浸透してきた政宗の気遣いには小さく息を吐いた。




「・・・もう一度お詫びと感謝を。ありがとうございます、政宗さん」




満面の笑みでそう言ったの言葉に政宗の心がトクンと優しく音を立てた。

の口から出た自分の名前が酷く懐かしく、特別な物に思える。

二人の関係が元に戻ったとは言えないが、またここから何か別の違う関係が築けるようなそんな予感がした。


* ひとやすみ *
・この時代、猪が山から出てくる事はあまりなかったと思っての甘い対処です。
 猪被害は本当に大変だと聞いてます。完璧な対処法ではないけど刺激臭が一般的みたいです。
 動物愛護に人間を含めると途端に難しくなるなぁと対処法について調べて思いました。
 魔法の言葉(二次元!)でそれはさておき・・・。笑
 筆頭・・・!もう、その一言に尽きます!!                                (10/05/28)