ドリーム小説

日が落ちて辺りがだんだん薄寒くなってきたのを感じながらは縁側に座ってぼんやりとどこかを見つめていた。

まさかの展開にどうやらまだ頭が付いて行ってないようだ。

人質という立場に自分がなるとは想定もしていなかったため仕方ないが、場所が場所なだけに考え込んでしまう。

その報告を床に就いている勘助にすれば、案の定怒鳴り散らされた。

なぜ自分が怒られなければならないのかと思いながらも、伊達への非難を聞いてきた。

が一つ溜め息を吐くと思考は再び同じ疑問に返って来てしまった。


政宗は姫軍師がだと知っていて人質に要求したのだろうか?


だとすれば一体どんな顔をして会えばいいのか。

うんうんとが頭を悩ませていると、身体が冷えたのかクシャミが漏れた。

その直後にふわりと肩に羽織が掛けられて、は背後を振り返って礼を言った。




「ありがとう、小太郎。あ、待って、ここに座って」




すぐに立ち去ろうとした小太郎を掴んで隣に座らせると、はお茶の準備を始めた。

落ち着かない様子の小太郎に湯のみを渡すとおずおずとだが受け取ってくれた。

じっと湯気を上げる湯のみを見つめていた小太郎から何かを感じたは視線を上げた。




「え?そんなに嫌なら始末するって・・・・え?!まさか独眼竜を?!」




コクリと頷いた小太郎には慌てて首を横に振った。

どうやらが縁側でずっと悩んでいたのは人質になるのが嫌だからだと捉えたらしい。

不思議そうに首を傾げた小太郎には苦笑して呟いた。




「奥州はね、甲斐に来る前に居た場所なんだけど、米沢城はあまりいい思い出がない場所だから。

 嫌なわけじゃないんだけど、ただ今更どう接したらいいのか分かんなくて・・・」




長い前髪の奥で眉根を寄せた小太郎が何を思ったかまではは感じ取れなかったが、何やら物騒な予感がした。

の寂しそうな表情を見て、やっぱり始末しようと誓った小太郎は何も間違ってはいない。

慌てて話を変えようとは口を開いた。




「あ、えと、それで私は人質だから多分小太郎を連れて行けないと思うんだけど」

「・・・・」

「え?連絡役?私がいつでも状況を知れるように?」




コクリと頷いた小太郎には嬉しそうに微笑んでお茶を啜った。

と同じようにお茶に口を付けた小太郎には満足そうに頷いてもう一度空を見上げた。

奥州で何があろうと大丈夫。

私は姫軍師で、もうあの時の弱いじゃないのだから。

お茶を全部飲み干した小太郎に何だか嬉しくなって座っていた距離を詰めると、首を傾げられは声を漏らして笑った。






***






翌朝、何かがいつもと違うと首を傾げたは辺りを見渡した。

しかし、特に変わった事はなく、静かな朝だった。

警備に関しても特に問題がなかったのだが、があまりにソワソワしてるので小太郎は確認も兼ねて見回りに行った。

小太郎の気配が離れていくのに気付いたは申し訳なく思った。

別に何か異常がある訳じゃないんだけど、どこかおかしい。

何だかこれじゃあまりにも静かすぎて不気味というか。

そこまで思ってははたりと進めていた足を止めた。

・・・・・・・静か?

くるりと辺りを見渡して、些細な生活の音や誰かの足音などしか聞こえない状況には徐々に目を見開いていった。

真っ先に浮んだのは虎の若子だった。

何せ幸村はあの戦いで政宗と戦い、撤退時に殿[しんがり]を務め、怪我だらけだ。

まさか昨日無理して軍議に出て、傷が開いたとかじゃ・・・!

は確信もないまま、幸村の部屋に向かって走り出した。

辿り着いた部屋の前にいたのは佐助と小太郎だった。




「ちょっと旦那!いい加減にここ開けなよ!じゃないと風魔が壊して入りそうなんだけどー?!」




誰が修理すると思ってんのさ、と大声で叫んでいる佐助を押し退けるように小太郎がクナイを翳す。

一体何がどうなっているのか、は慌てて二人に事情を聞けば、何ともおかしな返答があった。




「どうもこうも旦那拗ねちゃって。天の磐戸状態よ」

「拗ねる?幸村さんが?怪我の手当てしたくないって?」

「怪我の手当て?・・・あ。あー!うん、そう!旦那もだったら手当てさせてくれるよ!今頃傷が開いてるだろうし」




不思議な間があったものの、は大変だと締め切られた襖に寄ると中に声を掛けた。

不機嫌そうに鋭い視線を向けてきた小太郎に佐助は冷や汗を掻きながら視線を逸らす。




「幸村さん、どうしてこうなったのか分かりませんけど、私でよければ話を聞きますからここを開けて下さい」




返答を待つ静かな時間が流れ、やはり私じゃダメだったとが溜め息を吐いた時、急に襖が開いて

凭れかかっていたは転がるように部屋の中に倒れ込んだ。

の小さな悲鳴が聞こえたと思ったら、あっという間に部屋の中に姿が消え、再び襖は素早く閉められてしまった。

残された佐助と小太郎は目をパチクリさせ、我に戻ると小太郎の射殺さんばかりの視線に佐助は引き攣った。




「わ、悪かったって!傷が開いたとか嘘吐いて!だってこうでもしないと旦那閉じこもってと話しないだろうし。

 これはあの二人の問題だから仕方ないでしょ?」




仕方ないから止めなかったのだと小太郎は分かっていながらも、やはり気に食わなかった。

に嘘吐いて心配させるとは。

燻ぶる怒りのやり所が見付からず、小太郎は噴火したように持っていたクナイを佐助に投げ付けた。


* ひとやすみ *
にひっそりぴったり寄りそう小太郎。書いてて楽しかったー!!
 小太郎好きなんで何と言うか、スリコミ万歳!笑
 この忍二人って意外と面白い組み合わせだなーと思います。
 さてさて次はどうなることやら・・・。                    (10/01/28)