ドリーム小説
「ギャー!ちゃんのウソツキー!!こっちは全然危険はないって言ったじゃない!」
キャーとヨナヨナしく声を上げながらも、キヨは大の男達をバッタバッタと倒していく。
グスンと鼻を啜りながら帯紐を駆使して豊臣兵を片付ける。
町人を避難させて躑躅ヶ崎屋敷の守りに着いたキヨは予想外の急襲に文句を溢した。
町中に敵兵を出来る限り入れないようが前線に赴き、そう陣を敷いたのだ。
しかし、その目的はかわされたのかどこからか入り込んだ敵兵は、
まともに戦える兵のいない躑躅ヶ崎屋敷に特攻を仕掛けて来ている。
屋敷の守護は普段は蔵やらを警護している一般兵とキヨという貧弱な物だった。
「まずいな。このままじゃ屋敷を乗っ取られる。そうなりゃちゃんは・・・。チッ。そういうことか」
思わず男の口調に戻っているキヨは半兵衛の狙いに気付いて舌打ちした。
キヨ自身が強くても、あまりに多勢に無勢。
おそらく半兵衛は屋敷と中にいる使用人を人質に降伏させる気なのだ。
倒せど倒せど減らない敵にさすがのキヨも焦っていた。
せめて
伊三がいればと、偵察に出ている弟を理不尽にも恨んだ。
その隙を衝いて捨て身覚悟で敵兵二人がキヨの腕にしがみ付いた。
身動きの取れないキヨの目に塀を乗り越えようとしている敵が目に飛び込んできて叫ぶ。
「止めろ!勝手に入るな!」
その直後、石礫がゴンと派手に敵兵に当たり、塀を登っていた男は気を失って落ちた。
今度はキヨがその隙を利用して自分を押えている敵二人を殴り倒し、石の飛んできた方向を見て驚いた。
「あー、飯屋も宿屋も誰も街にいないんだが、どうなってんだ、これ」
ガシガシと頭を掻きながら声を掛けてきた男にポカンとしながら、迫ってきた敵の声にキヨはハッとした。
このチャンス、逃す訳にはいかない。
「やーん!熊ちゃん、キヨ怖ーい!!助けてー!」
「は?熊?いや、お前、めちゃ強じゃねーか」
「助けてくれたら、ご飯でも宿屋でも何でも奢っちゃう!」
「よし乗った!」
キヨと熊は背中合わせで不敵に笑って、豊臣兵を恐怖のどん底に突き落とした。
***
思った以上に策が上手くいかなかった半兵衛はイライラとを見下ろした。
その内心を読むようにが笑うので、眉根を寄せた。
柄に手を伸ばした半兵衛はそのままを目指して走り出した。
異様な殺気を感じたはいろは包丁を紐解き、菜切り包丁を掴む。
遠距離から居合いと共に放たれたのが、関節剣であることに気付き咄嗟に菜切りの平で受け止めた。
その重さと鞭のようなしなやかさには一瞬で遠距離は不利だと判断し半兵衛の元に走り込んだ。
それを見越していたのか、広範囲に物凄いスピードで繰り出される剣に足を止めたが、剣が頬を掠めて赤い血が舞う。
ピリピリとした緊張感に包まれる中、急に半兵衛が後ろに飛び退った。
元いた場所に深々と突き刺さるクナイが乱入者を知らせる。
見知った気配にがホッと息を吐くと、目の前にまっ黒な忍が降り立った。
「風魔。取りこぼした君を追って来てみれば、彼女に出会えたんだが、まさかもう彼女に手懐けられてるとはね」
「失礼なこと言わないでくれる?それより貴方、小太郎の言う事が正しければこんな事してる場合じゃないわよ」
「何?」
その直後、半兵衛の後ろに現れた忍が何かを囁くと半兵衛は血相を変えて兵を引いた。
引いていく敵を見送っていると、半兵衛は最後に小太郎を睨み付けてあっという間に撤退して行った。
「おい、風魔。お前何したんだ?」
「豊臣秀吉のいる大坂城が明智に襲撃を受けてるの。自業自得だよね、小太郎」
コクリと頷いた小太郎に慶次は首を捻った。
疲れ果てながらもケラケラと笑っている達の元に、武田本軍の帰国が告げられ町は安堵と歓喜に包まれた。
***
「勘助様!あぁ、性格や普段の行いが悪いばっかりにこんな形でお亡くなりになるとは!」
「・・・勝手に殺すな」
「、ゴメン。山本様のこと頼まれてたのに。もしかしてこうなるって予測してた訳?」
「佐助のせいじゃないよ。予測出来る範囲ではあったけどまさかこんな事になるなんて」
「それは暗に俺のせいだと言ってんのか、馬鹿弟子」
「
当たり前です。怪我するわ、伊達優位の同盟結んでくるわ、どっちが馬鹿ですか」
矢で傷を負ったものの命に別状はなかった勘助の枕元でが呟く文句に佐助も冷や汗を掻く。
躑躅ヶ崎襲撃の報告に甲斐へ撤退した武田軍を追撃しないことで伊達は武田に大きな貸しを作った。
その直後、伊達からの早馬が着き、伊達上杉武田で同盟を組まないかと持ちかけられたのだ。
早い話が妻女山で見過ごしてやったんだから、その借り返せって訳だ。
おそらく同盟に上杉が上がっているのは武田と同じ理由だろう。
は目を合わせようとしない師匠を睨んで、立ち上がった。
キョトンとする佐助には苦笑した。
「実は通りすがりの優しい人が今回の豊臣反撃戦を手伝ってくれたらしくて、まだお礼出来てないの」
本隊が帰って来たのでそれどころじゃなかったのだが、その人はまだ屋敷に滞在しているらしい。
親切な熊さんというキヨの話は要領を得ないが、彼がいなければ持ち堪えられなかったのは事実。
はようやくその恩人の部屋へと足を向ける事が出来た。
本当に熊のようによく食べてよく寝る豪快な人だという話を女中から聞きながら部屋に案内される。
部屋の中からキヨの声が聞こえ、入室しては息を呑んだ。
「あ、ちゃん!お仕事終わっ・・・!」
「だと?」
目を見張るような速さでの袂を掴んで畳に投げ付けた男は奥歯を噛み締め悔しそうに顔を歪めた。
突然のことに出遅れたが、キヨは男の下の苦しそうなを助けようと帯紐に手をかけた。
しかし、すぐに本人から制止の声が掛けられる。
「おっ前なぁ・・・生きてるなら生きてるって言いに来い、この馬鹿娘っ」
「・・・生きててすいません、洛兎さん」
「そうじゃねぇ。こういう場合は生きててくれてありがとうって俺が言うところだ」
洛兎の大きな手で頭を撫でられたは何とも言えない顔をして懐かしい法衣に顔を埋めた。
* ひとやすみ *
・色模様編はこれにて完結!
ようやくいろいろ動き出しそうです!どうなるかなぁ(え
さぁ、ここからまたオリジナル路線を走ります!つ、付いてきてね?!
最終章に向けて頑張りますのでよろしくどうぞです!! (09/12/23)