ドリーム小説
武田の朝は毎度の事ながら騒がしいが、今日は何かがおかしかった。
酷く落ち着かない空気には部屋から出て首を傾げた。
一体、何があったんだろう?
足早に騒ぎの起こっている方向へ足を進めていると、見知った気配が隣へ音もなく降り立った。
「何の騒ぎなの、佐助」
「侵入者らしいんだよね。しかも面倒な事に中庭と厩の二ヶ所で」
「なんでそんな所に・・・」
「やんなっちゃうよ、こんな朝っぱらから。旦那が中庭に向ってるから、厩はに任せてもいい?」
「うん。早く幸村様の所へ行ってあげな」
苦笑を一つ漏らして佐助は姿を消した。
一方、も緊急事態と判断し、足早に厩を目指した。
辿り着いた先では凄まじい騒ぎだった。
一足先に来ていたらしい厩番がてんやわんやしている隣に駆け寄った。
見るからに馬達が興奮していて、嘶きが鼓膜を激しく叩く。
暴れ回る馬を宥めながら、厩番に叫ぶ。
「何があったのこれ!」
「アイツが入り込んだおかげで馬達が混乱してんだよ!」
「あいつ・・・?」
は騒音に眉を顰めながら、厩番の指の先を見た。
示された指の先にいたのは馬小屋でチョロチョロと遊び回る小猿だった。
見覚えのあるその姿には目を見開いた。
「夢吉・・・っ?!」
「きゅ」
の声を聞くや否や、腕の中に飛び込んで来た小猿は間違いなくあの夢吉で。
何でこんな所に・・・。
そこまで考えて、はハッと中庭の方向を見た。
まさか・・・!!
は厩番にあとを任せ、夢吉と共に駆け出した。
***
佐助がと別れ、すぐに駆け付けた中庭では幸村と見知った顔が大声で騒ぎながら何かを探していた。
ホッと安堵の息を吐きながらも、その光景に文句を言うべく佐助は二人に歩み寄った。
「ちょっと前田の風来坊。前から言ってんでしょ。遊びに来るなら正面から来いって!!」
「おー。久しぶりだな、猿飛!いや、それがさ、夢吉の奴が急にどっか行っちまってさー」
「それでウチの旦那まで巻き込んで、朝から捜索ってわけ?」
あはは、と頭を掻きながら歯を見せて笑った慶次に佐助は大きく溜め息を吐いた。
毎度の事ながら、どうしていつも普通に訪ねて来ないのよ。
諦めたように警備のため駆け寄ってきた兵達を佐助は大丈夫だと追い返して、夢吉探しに夢中な二人に声を掛けた。
「多分、捜し物なら厩だよ。向こうでも大騒ぎだったから」
「厩ぁー?何だ、夢吉の奴、友達でも見付けたのかねぇ」
「そうか!よかったですな、慶次殿」
「が向ってくれたからすぐ片付くと思うけど」
「・・・?」
佐助の言葉に慶次がピクリと眉を動かした時だった。
激しく砂利を踏み散らす音が聞こえ、三人が視線を向けると肩に夢吉を乗せたが飛び出して来た。
噂をすれば何とやら。
顔を輝かせた幸村と、安堵したような佐助がに声を掛けた。
「、お疲れ様」
「おお殿!ちょうど今、」
幸村の声は尻切れトンボとなった。
はただ一点だけを見つめ、二人の間を風のように走り抜け、通り過ぎた。
一瞬で凍り付いた真田主従は、風を追うように振り返ってさらに驚く事になる。
「慶ちゃんッ!!!」
慶次の首に縋るように飛び付いたを慶次は難なく受け止めて破顔した。
心底嬉しそうな顔をしたは何でどうしてと慶次を質問攻めにしながらも、離れる気配すらも無ない。
幸村と佐助は見たこともないくらいはしゃいでいるに呆然としながらただ黙って見ているしか出来なかった。
「おう久しぶりだな、。ちょっくら信州に蕎麦食いに来たのよ」
「はは!慶ちゃんらしい」
「こら、夢吉!お前のせいで俺が怒られたんだからな!大体俺より先にに会いに行くとはどういうこった?」
「私、夢吉に好かれてるからね」
「俺だってのこと好きだぞ?」
「うん。知ってる」
くすくすと笑いあうと慶次を離れた所で見守っていた幸村は目を見開いて硬直していた。
未だかつてあんなを見た事がなかったからだ。
何だか胸の奥で燻ぶる気持ちに眉根を寄せ、二人に割って入ろうとした時、佐助の低い声がした。
「・・・面白くないよね」
思わず見た隣に幸村はギョッとした。
何だかよく分からんが、佐助が怒っておる!
そう思ったのも束の間、佐助はいつものヘラリとした表情で慶次との元へと向った。
あれは何だったのだろうか、と首を捻りながらも、幸村も慌てて三人の元へ走り出した。
* ひとやすみ *
・ようやく再会です!待ってたよ、慶ちゃーん!!
風雲児のおかげで何かが起きるのは必至!笑
見守る会、まさかのダークホースにハラドキしてるといい!笑 (09/09/10)