ドリーム小説

奥州への偵察の事があっさりバレた、基、うっかりバラした佐助は、自分を見つめて目を逸らさないに参っていた。

いくらバレたといっても、その内容をに話してしまってもいいものかと。

逡巡する佐助を見透かすように、はバレてるんだから話してもいいはずだと詰め寄ってくる。




「うぅ。俺様知らないからね?!結果から言うと黒脛巾が言った通りになってたよ」

は死んだってことか・・・」




あえて避けた言葉を自ら口にし、佐助は窺うようにしながら小さく頷いた。

悔しそうでも悲しそうでもないに、少し違和感を感じながらも報告を続ける。




「町ではって言う人物は行方不明として扱われてるみたいだったよ。

 まぁ、手違いで謀反者にしちゃったなんて言えないだろうからねー」

「そっか。ねぇ、城は・・・城はどうだった?」




目が合ったは落ち着いているようだったが、その眼が酷く揺らいでいるようにも見えた。

佐助はどこか必死そうなに躊躇いながらも正直に答えた。




「良くも悪くも普通。まるでなんて最初から居なかったように普通だったよ」

「普通・・・」




は佐助の答えを聞いて興味を失くしたように、背を向けた。

まもなく蝋燭が必要になる時刻になる。

薄暗い庭に視線を向けて、は小さく笑った。




「何も隠れて調べてくれなくても良かったのにな」




小さな呟きが自室に響き、佐助の耳に届いた。

の表情が見えない佐助にそれがどのように伝わったのかは分からなかったが、焦ったような声が返ってきた。




!勝手に調べた事は悪かったと思ってるさ。だけど大将は別にを疑って調べたんじゃ・・・!」

「佐助。ちゃんと分かってるよ」

「俺が隠れて奥州に行ったのは・・・」

「信玄公が私を心配して、傷付かない様に、悲しまない様にと、佐助を遣わしたんでしょ?」




なぜか弁明に必死な佐助には苦笑を漏らして、ちゃんと分かってるともう一度言った。

自分を思ってくれた武田の主と、心配性の忍には胸に刻み込むように目を瞑って口元を緩めた。




「ありがとう、佐助」




深く気持ちの込められた言葉にオロオロと戸惑う忍をはクスリと笑い、部屋から追い出した。

その夜は月が優しくを照らし、穏やかに更けていった。








***








は耳を打つその音に飛び起きた。

床板を打ち抜きそうな激しい振動と音がする中、ここが自室で布団で寝ていたのだと自覚した頃に

ようやくその音が足音だと気が付く。

徐々に大きくなるそれが自室の前でピタリと止まり、思わず身構えた。

スパーン!!と開け放たれた戸の向こうには見慣れた顔があった。




殿!遠駆けへ参りましょうぞ!!




満面の笑みで飛び込んできた幸村には唖然としながら、遮るように掛け布団をずり上げた。

あまりに突然の事だったので、寝起きであるの思考が追いつかない。

ニコニコと返事を待っている様子の幸村にはパクパクと開け閉めしていた口から辛うじて声を絞り出した。




「・・・・・・・、着替えたらすぐ行きます」




希望通りの答えが聞けた幸村はへにゃりと笑って「では後ほど」と、戸を同じように勢いよく閉めて足音荒く立ち去った。

急に静寂に包まれた部屋では瞬き、布団にもう一度横になった。

冴えてしまった目を何度もパチクリさせて、寝返りを打つ。




「キャーとも叫べなかった・・・・」




同級生に寝起き見られた女子高生の反応って何だっけ、と眉根を寄せた。

着実に強く、図太くなっていってる自分には言いようもなく悲しくなった。







***







「さすがですな!お館様にも御せなかったその暴れ馬に乗れるとは!」

「偶然、閏と気が合っただけですよ。今だって私は閏に乗せてもらってるようなものです」




幸村の隣を軽々と駆ける閏の横腹を軽く撫でたは苦笑する。

閏に認めてもらえなければ私は今、背に乗っていないんだろうな。

本当にわがままな馬のようで、閏のスピードについて来れないなら振り落とさんと言わんばかりに走り回るのだ。

そのスピードに余裕でついて来れる幸村も凄いが、それに閏が対抗するので二人が駆ける速さは尋常ではない。

もちろん本気駆けではないのだが、は舌を噛みそうになり口を噤む。

幸村が手綱を引いて速度を落としたので、もそれに従う。

随分と森を走り山を登ってきたが、先に見えるのは崖。

砂を蹴り上げて前を行く幸村の背を見ていると、振り返って手招きされた。

がゆっくりと閏を進めて、目に飛び込んできた景色に息を呑む。




「これが我らが守り、生きる甲斐ですぞ」

「す、ごい・・・・。これ全部・・・」




言葉にならないほどのパノラマだった。

テレビで見る時代劇の風景がどれだけ胡散臭く、ちっぽけかと思い知らされる。

遠くに見える田畑やあぜ道、町や家が点々と景色を埋め尽くしていた。

あの中で生活するだけでは味わえない迫力にただただ視線を走らせる。




「これが甲斐・・・」




が感歎の吐息混じりに小さく呟いた声に幸村は優しく笑って頷いた。


* ひとやすみ *
・佐助とはすっごく絡ませやすいんですが、なぜか幸村難しい。
 私が書くとどうもアホの子みたいになります。笑
 おかしいなぁ。合言葉は楽しくカッコよくなのに・・・。
 何ていうか、自分の男らしさに気付いた話。笑            (09/07/13)