ドリーム小説


「はいはいっと。、ここが甲斐の国だよ」

「うわー。奥州とは随分違うな」




無邪気な声を上げたは佐助の背から身を乗り出して甲斐の国を眺める。

―――ここが風林火山を掲げる武田信玄の領地。






***






遡ること、数日前。

あの時、確かには蘭に殺された。




「振り?」

「そう。殺された事にでもしときゃ、誰もアンタを追いはしないよ」

「・・・黒脛巾が堂々と工作していいのかよ」

「猿は少し黙りや。だから何かを証明する大事なもんをおくれ」




普段から荷物の少ないは悩んだ挙句、髪をあっさり差し出した。

それに反対したのは意外にも蘭で、女の髪は命とも言うアレなのか最後の最後まで渋っていた。




「仕方ないから少しだけな」




蘭は整えるように耳元の髪を切り落とし、後ろ髪をすくようにかき集めてそれをの髪紐で結んだ。

長い間、放置して伸びた髪が軽くなり、耳元の毛が短くなってスッキリした。

髪紐失い、風に遊ばれるの下ろされた髪を見て佐助が感心したように呟いた。




「へぇ。そうしてると、どこぞの姫さんのように見えるね。まぁ男が言われても嬉しく無いだろうけどさ」

「「・・・・・・。」」




言葉を失った二人に佐助は首を傾げ、我に返った蘭は盛大に溜め息を吐いた。




「だから、アンタは猿なんだよ・・・」

「は?!何、俺、何で貶されてんの?」

「いいかい、猿。はアタシのみたいなもんだ。泣かしたら承知しないよ」

「・・・・・・・」




本人そっちのけで言い合う二人には遠い目をして薄く笑う。

あはは。私、女捨てたつもりはないんですけどね。

あえて弟を強調した蘭に落ち込んでいると、頭にポフリと手が乗った。




「あとは任しとき」




蘭は珍しく優しく笑ってからの頭を乱暴に撫で回した。

それから戻って行った蘭を見送り、行き場のなくなったを佐助が甲斐に誘ったのだ。






***






「悪いんだけど、生きて戻った事報告しなきゃいけないんで、一緒に来てくれる?」




そう佐助に言われ、コクリと頷いたのは数時間前。

目の前には立派なお屋敷。

何を隠そう、これこそが武田信玄の住まいの躑躅ヶ崎の館なのだ。

の動揺など知りもせず、佐助は門番に軽々しく挨拶をして入っていく。

佐助って偉かったの・・・?

て、アレ?猿飛佐助って架空の人物じゃ・・・?

またもの中で世界観が歪みつつも恐々と門番に頭を下げると、門番も不思議そうに頭を下げ返した。

どんどん奥へ進む佐助に不安を覚えながら付いていくと、物凄い声が耳を打った。

すごい気迫で槍の稽古をしている人がそこにおり、どうやら先ほどの声もこの人の物らしい。

がビックリしている暇もなく、佐助は「ここにいて」とだけ告げて俊足でその人の隣に降り立った。




「真田の旦那!ただいッうわ!!あっぶな!危ないよ旦那!」

「黙れ!佐助!お主、報告もせずに今頃のこのこと現れよって!」

「わ、分かったからそれ止めて!燃えるから!」




見る見る内に燃え上がった二本の槍は、その人の怒りを示しているように激しく揺らめき、佐助に向けられた。

繰り出される二本の槍を佐助は持ち前の運動神経で避ける。

は目の前で起こる珍事に硬直して目だけをしきりに瞬かせた。

え、えーと、あれは、人間技・・・?

怒り爆発のその人は、ようやく真っ赤な槍を収めて眉根を寄せた。




「佐助お主怪我でもしたのか?」

「さすがだね。うん。実は恥ずかしながら大失態しちゃってさ。あん時はさすがに俺様死んだって思った・・」

お!お館様あぁぁぁぁ!!

「え、何で?!」




急に顔色が真っ青になったその人は唐突に凄い勢いで屋敷の奥へと走り去った。

さすがの佐助も驚いたらしくその背中を呆然と眺め、思い出したように慌てて追い掛けて行った。

静かになったその場に一人残されたは、口をポカンと開けて立ち尽くすしかなかった。




「え・・・と、これは、置いていかれた、のか?」




どうしよう、とようやく我を取り戻したが辺りを見渡すと、背後に女中がいた。

お互いに目を何度か瞬かせ、は困ったように話を切り出した。




「あの、佐助が先にどこかへ行ってしまって・・・」

「あぁ、真田様ですね。お二人はおそらくお館様の元でしょう。私がご案内致します」

「あ、すいません」

「いえ。いつもの事ですから」

「( いつも?!)」




ホホホと微笑む女中に付いて奥へ進むと、とんでもない大騒ぎが起こっているようだった。

女中はこれもいつもの事ですからと微笑んで、案内を終えて踵を返していった。

恐々と部屋の中を覗くと、貫禄ある大柄の人と先ほどの槍の人、佐助がそこにいた。




「お館様!大変に御座ります!!さ、佐助が化けて出ましたぞ!!

「えぇー?!ちょっと勝手に殺さないでよ!」

「む。佐助よ、成仏してくれ

「た、大将まで!何言ってくれちゃってんの?!旦那が信じちゃうでしょ?!」

「はっはっは!幸村があまりに面白いもんで、ついな」

「旦那、俺ちゃーんとまだ生きてるから」

「なんと、生霊であったか!

「頼むよ、もうホント・・・」




何だコレ・・・。

ここ、躑躅ヶ崎でしたよね・・・?

大丈夫か、武田軍・・・。



* ひとやすみ *
・始まりました、第二章!!
 そしていきなりギャグ志向。笑
 いや、前がちょっと暗すぎたとかそんなんじゃなく、ゴニョゴニョ・・・。
 と、とにかく!甲斐にて再発進です!よしなにお願いします!        (09/06/11)