ドリーム小説
見た目に反して政宗の心情はひどく荒れていた。
風美楼を出てから抑えていた怒りが沸々と湧き出てきているのが分かる。
を蔑ろにして嫌がらせを黙認している重臣達にも腹は立つが、それを家臣にさせている自分にもっと腹が立つ。
一部を擁護すれば、もう一部で角が立つ。
分かりきっていた事だが、実際に起こった時、上に立つものとして何も出来ないのが歯痒い。
守ってやる事も咎める事も出来ず、やり場のない怒りを持て余す様に政宗は夜の花街を歩き回った。
足早に歩いていると、さらに気分が悪くなる物を見付けて政宗は足を止めた。
嫌がる女の腕を掴んで数人の男が囲んでいる。
ここが花街である以上おかしな光景ではないが、いくら何でも多勢に無勢。
しかし今の政宗に見付かった男達に同情すら覚える。
前にもこんな事あったな、と政宗は薄絹を被る真っ赤な着物の女を見て口角を上げた。
「Hey,guys!!楽しそうじゃねェか」
男達が振り返った瞬間、女の肩がビクリと揺れる。
男達と同じように見られているだろう自分に悲しくなりつつ政宗は言葉を続ける。
「女と楽しみたきゃ店に行けよ、you see?」
「何だてめぇは!」
予想通り反抗して近寄ってきた男を政宗は憂さを晴らす様に投げ飛ばした。
有無を言わさず投げ飛ばされた仲間に男達は怒り、声を上げて政宗に襲い掛かってきた。
次から次へと向ってくる男達に、政宗はストレスを発散させるかのように楽しげに拳を振るう。
怯える所か、むしろ楽しんでる政宗についに恐れをなして男達は散り散りに逃げた。
しかし女の腕を掴んでいた男だけはどうにもこうにも後に引けず、後ろから腕を掴んだまま女を羽交い絞めにした。
面倒そうに政宗が頭を掻いた瞬間、女がしゃがみ込んで男の腕から抜け出し、腕を掴んでいる男の手を逆手取り
そのまま前に背負い投げた。
その衝撃で女の被る薄絹がハラリと落ちて、女の顔が露になった。
男を投げ飛ばした事に驚く以前に、その見知った人物に政宗は目を見開いた。
「お前は・・・・」
「お久しぶりね、藤次郎さん」
***
澄ました顔をしていただったが、内心物凄く混乱していた。
誰かに会う事があるかもしれないと思っていたが、まさか政宗だとは思っていなかった。
ふと姐さん達が騒いでいた風美楼の話を思い出した。
大きく息を吐きながら、薄絹を拾っては決心した。
そう。今ここで会ったのは藤次郎なのだ。
なら自分はのまま、藤次郎と接するべきだ。
薄絹から視線を上げた瞬間、政宗の背後にさっき投げ飛ばした男が腕を振り上げて立っていた。
はとっさに帯に挟んでいた扇を男の額に投げ付け、スコーンと小気味いい音がして男は再び地面に倒れた。
政宗は倒れた男と飛んでいった舞扇を見て、眉根を寄せる。
「お前、舞妓か・・・?」
「うん。これでも筋がいいって褒められてるよ」
ニコリと笑ったに政宗は複雑そうな顔をして拾った扇をに返した。
は前と同じような状況に小さく笑って同じように声を掛けた。
「よければお礼をさせてって言いたいトコだけど、花街にいるなら先約があるか・・・」
「いや、腹が立って飛び出してきた所だ」
「何それ」
「気にするな。礼に何をくれる、lady?」
「Funny thing!!私が花街案内してあげる」
は政宗の手を掴んで煌々と賑わう街へと駆け出した。
行くなどとは一言も言っていないのだが、政宗は繋がれた左手を見て悪くないと思ってしまった。
店への呼び込みをしている大通りに入った所で、は少し待っててと言い残して人混みに消えていった。
残された政宗はこんな風に用もなく花街を見て回る事なんてなかったと物珍しそうに辺りを眺めていた。
すると肩に手が乗せられて振り向くと、いかにも妓女と言わんばかりの女がそこにいた。
「お兄さん。ちょっと遊んでいかないかい?」
「Ah?人を待ってるからまたな」
「あら、その子アタシよりいい女なの?」
「・・まぁな、そこらの女より面白い」
「ま、妬けること」
笑った女が政宗の肩から手を離した瞬間、腕を後ろに引かれて政宗の身体が傾く。
いつの間に帰ってきたのか、何だか面白い顔をしたが政宗の腕を引いていた。
「姐さん!この人はダメですからね」
「あら、お兄さんの言う子はこの子かい?」
「あぁ」
「ふふ。アンタいい人見付けたね。花街で逢引とは見る目あるよ。仲良くね」
「え?逢引って・・・」
「Hey!!行くぞ、」
が驚きの声を上げてる間に政宗は楽しそうにの肩を抱いてその場から離れた。
背を押すように歩かせる政宗が出会った時とは違って何だか機嫌が良さそうでは首を傾げた。
* ひとやすみ *
・再会です。花街について好き勝手書いてますが、侮蔑してる訳でも推奨してる訳でもありません。
完璧フィクション&私的妄想なので、いつも通りふーん、てな感じで流して下さいね。
ここで頑張らにゃどこで男をあげる、筆頭!!!! (09/04/30)