ドリーム小説
雪解け久しい時期になっても慶次は米沢城に居座っていた。
今日もと小十郎と共に畑の様子を見に行き、農民達と親しそうにしていた。
町に出ても楽しそうにしていて、どうやら慶次は人好きのする顔らしい。
呼び出された小十郎と別れ、は一人で城の廊下を歩いていると、向かいから蘭と篠が歩いてきた。
城であまり接点を持つとの事がバレかねないので、頭を下げて通り過ぎるのが常だ。
すれ違いざまに蘭が珍しく声を掛けてきて、は振り返らずに立ち止まった。
「大型団体が来る。二日間の大仕事だよ、」
「大型団体・・?」
「この城に出入りする大名だって話だ。一体誰なんだろね」
面白そうに笑う蘭の声を聞きながら、小声のやり取りは続く。
「菊華屋の事は篠に全部任せてるんだが、仲良くやってるそうじゃないか。いい子だ」
「・・・・見付かるのでもう行きますよ」
「くく、そう拗ねるな。仲良くと言えば、アンタと仲良くしてるかすがって娘、この大仕事で故郷に帰るそうだ」
「え、かすが姉さんが・・?」
思わず振り返ったに蘭は悪戯っぽく笑ってその場を離れた。
呆然と立ち尽くすを一瞬、篠が振り返ったが、誰もそれに気付く事はなかった。
***
がいまいちすっきりしないまま足を進めていると、小十郎と再び鉢合わせた。
を探していたと言う小十郎は何だか困った顔をしていて首を傾げる。
とりあえず一緒に執務室へ向い、入ってみては驚いた。
物凄く機嫌の悪い政宗と綱元が息も絶え絶えに言い争っていて、振り返った二人の顔に思わず身を引く。
物凄く恐ろしい顔だ・・・。
そこに小十郎が溜め息混じりに小さく呟く。
「いいか。絶対に政宗様に頷くなよ」
「??」
状況が全然分からないは疑問を浮かべながら政宗を見た。
ギラギラした目で睨んでくる政宗に嫌な予感を感じずにはいられない。
「!二日、面倒だが出掛ける。ついて来い」
「なりませぬぞ、殿!を連れてなど!」
「Ah?!だって男だ。それぐらい・・」
「なりませぬ!!」
言い争う政宗と綱元に困ったように小十郎を見れば、疲れたような顔をしていた。
このままでは埒があかないのでは小十郎に言った。
「あの、何が何だかわかりませんが、明日から二日間は用があって来れません」
「そうか!なら来なくていい。むしろ
来てくれるな」
「はい?」
状況が分からぬままは小十郎に背を押されて部屋から追い出された。
閉められた襖の向こうから未だに聞こえる怒鳴り声には溜め息を吐いて寺に戻る事にした。
が廊下を立ち去るのを確かめてから、小十郎は溜め息を吐いて小さく呟いた。
「を連れて行ける訳ねぇだろ、夜の花街なんぞ」
まさかそのが花街で働いてるとも露知らず、小十郎と綱元はの身を守ろうと政宗に抵抗し続けた。
「も俺や成実と大して歳が違わねェだろうが」
「殿や成実と一緒になさるな」
「What?まるで俺達が汚れてるみたいに言うじゃねェか、綱元」
「
汚れてるでしょうが。むしろ獣。ばっちいです」
「ばっちいってお前なぁ・・!」
そこに成実と慶次が両手に菓子を抱えて入って来た。
騒ぎの事情を小十郎が話せば二人は楽しそうに笑った。
「いいねぇ!こっちの花街も賑やかかい?」
「接待するのに花街か。まぁ手っ取り早く話が進みそうでいいんじゃない?」
饅頭を頬張る成実と慶次に政宗は諦めた。
面倒臭い話し合いだとは思うが、それで一気に解決するならそれに越した事はない。
けれども嫌な事には変わりはなく、不満を慶次にぶつけた。
「で。テメェはいつまで居座る気だ、前田!」
「んー?ずんだ餅食いに来ただけだったんだが、気になる子見付けちまったんでね」
「Ah?得意の恋だの愛だのいう奴か」
「さぁてね」
饅頭の次にずんだ餅に手を伸ばした慶次を政宗は鼻で笑った。
気にした様子もなく、美味しそうにずんだ餅を頬張る慶次は思い出した様に声を漏らした。
「あ、そういや南と西で何だかおかしな動きをしてたぜ?面倒事の予感がするな」
手に付いた餡を夢吉が食べたのを見て慶次は驚いていたが、その場に居た伊達軍の武将達は眉間に皺を寄せた。
その不穏な動きは間もなく訪れる終焉の序幕に過ぎず、動き出した砂時計はサラサラと楽しい時間を削って
確実にを追い詰めていくことになる。
* ひとやすみ *
・かなり中途半端ですが、これにて米沢城編終了です。
さてさて、ウチの筆頭はどこまで崩れていくのでしょう・・・。
ですが強くていい男を捨てた訳ではありません!イイ所見せろよ、伊達男!(09/04/28)