ドリーム小説
それから私は、この場合、と言った方がいいのだけれど、日雇いとして本当に色々な仕事をした。
なぜか新任の私が政宗公の小姓をやらさせれたり、厨番にされるのも多い。
昨日は小十郎さんと畑の世話を一緒にした。
まさかあの畑の手入れを小十郎さんがしているとは思っていなかったけど。
「しかし、歩きにくいなこの服」
城仕えにあたってという訳でもないようだが、洛兎さんが武家の息子に坊主の着物着せられるか、
と袴を用意してくれた。
確かに袴なのだが、布地が高級なのかいつもと違っていて動きにくいのが現状なのだ。
どうも足に纏わりついて変な感じだ。
が雑用係のような事をしていると、見知らぬ人達にも仕事を頼まれる。
今日は書物を運ぶのを頼まれた。
目的地の蔵に着くと、言われたとおり箱に入っていた巻物を二十五本掴んで踵を返す。
何気にただの紙であっても本数が多いと重量がある。
それに丸い物は運びにくいのだ。
少々無理があったが、そこは愛嬌とばかりに両手一杯に巻物を抱え、廊を小走りで歩いていた所、
角から現れた人にぶつかって巻物が一つ落ちた。
しかし、なけなしの反射神経で左手でハシリと掴んでホッと息を吐く。
ぶつかった人に謝ろうと顔を上げると、どこかで見た事のあるような人だった。
服装の質からして間違いなく重臣の誰かだろう。
は息つく暇もなく頭を思いっきり下げて謝った。
「申し訳ありませ・・・!」
ズザザザァ・・・!
頭を下げたが見つめる床に巻物の嵐。
しまったと思うも時既に遅し。
が抱えていた巻物全てが頭を下げたら腕からすっぽ抜けた。
手元にある巻物はさっき思わず掴んだ左手の巻物一つだけ。
は目の前の男の反応が怖すぎて顔が上げられなかった。
床を見つめるの目に重臣の足が一歩下がったのを見た。
冷や汗をかきながらそろりと起き上がると男は腹を抱えて声を殺して悶絶していた。
え?何、何なの・・・?!
「
無理無理!な、何これ!あっはははは!」
ついに噴出して笑い、壁を叩き出した男にはどうしようかと困惑した。
声を掛けようにもすごい勢いで笑っている男には居た堪れなくなった。
笑いの発作が少し治まったのか、重臣の方が巻物を拾い始めたので慌てて一緒に巻物を拾う。
「あれ?君もしかして覚範寺で預かってるって言う武家の・・?」
「え?は・・はい。といいます」
「君、ある意味器用だよね」
男がの左手に唯一残る皺になった巻物を見た。
するとまた笑いの発作が帰ってきたのか、男はに背けて一つ咳払いをした。
息を吐いたその人は笑顔で拾った巻物を差し出してきた。
はいい人だと、感動して今度は自分の抱えてる巻物をしっかりと抱きしめて頭を下げた。
「ありがとうございました!」
ズザザザザァ・・・!
床に巻物の嵐再び。
まさか相手の持つ巻物にお辞儀で頭突きとか、そんなお約束な事を自分がするとは思わなかった。
お辞儀で頭ぶつけていいのはマイクだけでしょ!
「えぇぇ?!」
「
あっはははははは!ひぃぃ」
アワアワとが拾い集め終わった時には男は笑死しかけていた。
が目線を合わせようとすると笑いが込み上げるらしく、男は目を合わせようともしない。
それから申し訳なくも有り難く、重臣の方は笑い死にたくないと巻物を一緒に運んで下さった。
頼んだ人の元に巻物を届けに行けば、彼はと重臣を交互に見比べて目を丸くしていた。
「成実殿?!いつこちらに帰られたのですか?!」
「さっきだよ。帰ったら真直ぐに梵に報告しなければ機嫌を損ねるからね」
「成実様・・・?」
「、この方は伊達成実殿だ。巻物なんぞ運ばせられるような方ではない!」
「気にする事じゃないよ。笑死したくないしね。じゃあな、」
巻物を預けて立ち去った成実には目を丸くした。
まさかそんな偉い人だとは思わなかったのだ。
ものすごく若くて、雰囲気が何と言うか・・・・軽い。
文句を言いつつ巻物を頼んだ男も、運んだ巻物を部屋に積んで足音荒く立ち去った。
呆然としていたは瞬きを数回して呟いた。
「どうしよ。伊達の三傑全員に会っちゃった・・・」
* ひとやすみ *
・歴史的瞬間ですよね。笑
この話入れるか迷いましたが、ちょっとくらいはっちゃけてもいいんじゃない?
て、心の声がそう言ってたので従っちゃいました! (09/03/19)