ドリーム小説
「無理だと言ってるじゃないですか!」
「うるせぇ!つべこべ言ってると小十郎に逆賊として突き出すぞ!」
「・・うぐ・・・ッ」
の時にごろつきから助けてくれた藤次郎さんは信じられない事に伊達政宗公だった。
何にも知らずに盗賊だと勘違いして城主に刀を向けた私は大馬鹿者だ。
それ所か、として出会った時に私は、政宗公に向って怒鳴り散らした気がする。
混乱しているをよそに政宗は足音荒く、厨に向っていた。
辿り着いた厨では、昼過ぎの中途半端な時間に突如として城主が現れて皆驚いていた。
そしてそんな城主が首根っこを掴んでいる少年を見て眉根を寄せるのだった。
「少々、借りるぜ」
時々そんな風に現れる政宗に慣れているのかすぐに厨から人気がなくなった。
雑に手放されたは襟元を直すと食材を漁っている政宗を見た。
本気で言ってるのだろうか、この人は。
昼飯を食い逃して腹が減ってるからメシを作れだなんて。
包丁なんてもん持ってんだから作れんだろ、なんていい加減な事を言って。
見知らぬ人間に城主が口にするものを触らせるなんて正気の沙汰じゃない。
「早く作れ。腹が煩くてかなわねぇ。それとも今更できねぇとか言うのか?」
何だかその視線にカチンときた。
乗せられているのは分かっているけれど、料理好きのプライドが揺さぶられたのだ。
返事の代わりに近くにあった丸々とした大根を叩き切った。
***
初めは売り言葉に買い言葉みてぇな感じで料理を始めたみたいだが、今じゃ嬉しそうに作っている。
しかもどうやら完全に俺は忘れ去られている気がする。
腰に差さっていた包丁を使い分け、綺麗な手際で野菜や魚を捌いていた。
何やら餅と格闘しているので覗き込めば、必死に餅を丸めていた。
「貸せ、団子か?」
「え?あ、うん。お願いするよ」
するとは次の作業に慌てて移った。
どうやら本人は気付いてないが、あれが地のようだ。
まぁそれも面白いな。
政宗は口元で笑うと餅に取り掛かった。
「出来た」
並べ終えたは満足そうにして振り返ると、ジッとこっちを見てる政宗に気付いた。
「(政宗公と一緒だったの忘れてた!!)」
「おう、さっきの客間でいいな?」
「あ、はい」
お膳を持ってスタスタ歩いていく静かな城主に何だか焦りを感じる。
は大皿を抱えながら、血の気が引いていた。
客間に戻ってきた二人は何故か向かい合って膳を並べていた。
政宗が上座に座ると思っていたは下座に膳を据えたのだが、気付けば向かい側に腰を下ろした政宗がいた。
料理自体にそれ程時間は掛からなかったが、手間が掛かっている。
最初は使うのに戸惑っていた鮪を惜しみなく使っているし、身から香辛料の香りがしていて食欲をそそった。
何より、政宗はと言う男がここまで美味しい料理を作れたのに驚いている。
黙々と箸を口に運ぶ政宗を見ながら、は目の前にある同じ料理に手を付けた。
時間がないとは言え、城主に出す料理にお茶漬けはなかったかな、と落ち込む。
あの食材で早く出せる物、それにすぐ夕食だしあっさり食べれる物がいいと思った。
だけど勝手に使った食材が鮪なんて申し訳なさすぎて背筋が丸くなる。
大トロは残しておいたから、と一人言い訳をしてみる。
「お前・・男のくせに何で料理なんか出来んだ?」
不意に話しかけられて向かいを見るとお膳の上の料理は全て綺麗に無くなっていた。
は唇を噛んで笑いを抑えると向き直ってただの趣味です、と答えた。
ふーん、と言いながら政宗は食後に用意したみたらし団子を手に取った。
政宗は団子を一口かじると、串をに向けて爆弾を投下した。
「お前、厨番になれ」
「・・・・はぁ?!」
もう一口団子をかじった政宗は付け足した。
「それか小姓にしてやってもいい」
「はぁ?!」
この急な展開についていけないはとりあえず拒否した。
むしろ話がすっ飛びすぎてそうするしか出来なかったのだ。
「無理です!」
「あぁ?!お前ずっと無理ですしか言ってねぇじゃねぇか!」
「うぅ、無理なものは無理なんです!」
互いに譲らず、気付けば熱中するあまり二人の距離は近付いていた。
すると急に襖が開いて人が現れた。
「・・・って政宗様?!」
「殿が?」
二人してギラギラと強烈な顔をして入り口を睨めば、そこには小十郎と綱元が居た。
二人は状況が分からず、部屋にあるお膳や団子にさらに混乱する。
「こいつ何とかしろ!」
「この人何とかして下さい!」
* ひとやすみ *
・白状するとマグロ丼茶漬けが食べたかったんです!
いや、夜明は生魚ダメですが。笑
料理上手なちゃんが作った物なら食べれるかなーって思って・・・。(09/03/01)