ドリーム小説
宴もたけなわ、参列客も出来上がって来た頃、上座でニコニコしていたの傍にドサリと誰かが座った。
振り返ればそこには不機嫌そうな片目の竜が座っていた。
手酌で酒を煽る政宗の姿をチラリと見た後、は再び視線を参列客へと戻す。
そこには真っ赤な顔で客に交ざって酒を代わる代わる注がれる幸村がいた。
「・・・再会が真田との祝言とか、そりゃないだろ、kitty?」
ぼやく様に呟いた政宗には困ったように笑う。
政宗の好意は散々感じていたが、こればかりはしょうがない。
多分、政宗を選んでいたなら自分を上手く愛してくれるだろう。
だけど、が惚れたのはあの不器用な人なのだから仕方がない。
恋は落ちるもの、まさに名言である。
言葉に詰まっているを見て、自分の発言が困らせていると察した政宗は不機嫌そうに頭を掻いた。
「・・・お前、あの馬鹿でいいのか?」
「・・・あのバカがいいんです」
「Shitッ・・・!」
さらりと惚気られた政宗は胸糞悪くなって酒を煽ると、の肩を抱いて引き寄せた。
花嫁が旦那ではない男に抱き寄せられるというその有り得ない事態に周囲は騒然となったが、
政宗は気にせず腕の中のの耳元で囁く。
「・・・全く、男の趣味が悪いな、Kitty?俺にしとけばよかったのにな?」
「それこそBad taste。趣味が悪いでしょう?」
「・・・Hey,girl、言ってくれるな。逃がした魚はでかいと後悔するぜ?」
「Impossible!」
クスリと艶っぽく笑うにズキリと胸が軋んだが、政宗はそれを表に出さないように押しとどめた。
が幸村を好きなことに気付いていたとはいえ、やはりつらい。
引き際を悟らないほど政宗は鈍感ではなかったが、このまま引き下がるのも癪に障った。
それをも理解していたのか、抱き寄せた政宗の腕の中で困ったように笑っており、戯れを許しているようだった。
心の中で最後だからと呟いて、政宗は目を瞑ってをきつく抱いた。
目を開くとの肩越しに怒り狂った幸村が見えた。
・・・全く、幸運な男だぜ。
政宗は羨ましさを呑み込んで、悪戯心での頬に口付けて囁いた。
「幸せになれよ、」
目を瞬いて驚いただが、その小さな祝福に心から微笑んで頷いた。
すると次の瞬間、は政宗の腕の中から引っ張り出され、幸村の背に庇われていた。
怒り狂った幸村がに手を出すなと吼え、政宗はニヤリと笑った。
花嫁の奪い合いにその場が沸いて、は政宗の睨んだ通りの展開になったと苦笑した。
取っ組み合いを始めた赤と青の若人に周囲が囃し立てる。
やいのやいのと大騒ぎしていた中、一筋の風が駆け抜けた。
「を放って何しとるんじゃ、お前らはぁぁぁぁ!!」
信玄の唸る拳が幸村と政宗の頭に突き刺さり、二人は声もなく吹っ飛んだ。
呆気に取られてその場は一気に静まり返ったが、はハッとして転がっていった幸村に駆け寄った。
「幸村さん!」
「ありゃー。酒も入ってるから完全に目回してるな・・・」
慶次のその一言には幸村の頭を膝に乗せて様子を見ることにした。
それを見ていた周囲が流石新婚だと再び沸く。
どうやらその場にいた面々は信玄の暴挙をなかったことにしたいらしい。
深々と溜め息を吐いたは近くに座り込んでいた慶次に声を掛ける。
「ねぇ慶ちゃん。こっちはいいから政宗さん見てあげて?」
「えー。野郎の世話なんかみたくねぇよ。アイツは転がしといたらいいよ」
どうやらアイツぶっ飛ばされてスッキリしたかったみたいだし。
そんな言葉を隠して慶次は転がる政宗を見た。
どこかからかっぱらってきた酒を飲みながら、慶次は隣りの美しい花嫁を見てポンポンと頭を撫でる。
「よかったな、」
キョトンとしただったが、優しい眼差しの慶次を見てへにゃりと笑み崩れた。
そんなの幸せそうな顔を見て慶次は少しほろ苦い酒を煽った。
* ひとやすみ *
・政宗最後の足掻き。納得は出来てないけどカッコいい男で居たいお年頃。
最後はぶん殴られてスッキリしたかったそうです。ちなみに題名に悪意はないよ?笑
かなり代償は大きかったようですが。これで一応身辺整理できたかな?笑
もう少し続きます!またぜひお越しくださいませ! (16/06/02)