ドリーム小説

は今一人三河の国にいた。

瀬戸内から上陸して摂津、山城、近江、美濃へと山陽道から東海道へ向かって歩きに歩いた。

と言っても元親から分捕った路銀をふんだんに使い、馬を酷使したと言うのが正解なのだが。

長曾我部が徳川に戦を仕掛けるまであと半月。

とにかくは焦っていた。




「(信じらんない。状況証拠しかないのに徳川に焼き入れるって自滅したいの、あのヤンキー?!)」




もはや同盟以前の問題である。

的には海軍欲しいから、ちょっと手伝ってあげるという慈善事業のつもりだった。

けれど、長曾我部はの思惑に反して予想外の動きをした。

理屈じゃなく感情や思い付きで動く人間ははっきり言って軍師の天敵と言える。

こうなってしまえばと長曾我部どちらが得をしたのか、曖昧なところである。

手伝うと言った手前、約束を破るのはの信条に反する。

余計なことをするんじゃなかったとは心底後悔しながら、城下町で徳川家康についての情報を集めていた。


元親によると長曾我部と徳川は何やら縁があるらしく、非常に仲がよかったそうだ。

しかし、ある日、元親が留守にしている隙を突いて徳川が四国に押し寄せ、仲間を皆殺しにしてしまったらしい。

徳川に話を聞こうと詰め寄ったが返答が曖昧すぎて、兄貴戦闘準備中。今ここである。

しかも、よくよく話を聞いてみたら、戻ってきたら敵も味方もおらず、落ちてた旗で犯人が分かったとか。

偽造工作可能な状況にが待ったを掛け、ちゃんと探って来るから半月待っててくれと飛び出してきたのだ。




「でも、徳川がそういう小狡いことする利点がないのよねぇ」




茶屋でお茶を啜りながらぶつぶつ呟くの眉間には皺。

家康は幼少の頃からあちこち人質生活を送り、その生まれあってか周囲にかなり気を遣っている。

の印象は柳のような人物だと噂からも感じており、元親のいう卑劣な手段に違和感を覚えていた。

大体、三河は厄介な位置にあり、今混乱の渦にある元織田領や武田領などに囲まれており、

わざわざ仲のいい四国に喧嘩売りに行って敵を増やすほど暇だとは思えない。

は団子に噛り付いて深く溜め息を吐いた。




「徳川家康かぁ。どんな人だろう。会ってみたいなぁ・・・」




直接会えれば一番手っ取り早いに決まっている。

まぁお忍びで偵察に来ている自分が会えるはずもないと分かっていても言わずにいられない心境だった。

もう一度深く溜め息を吐き、最後の茶を啜ると、隣りに誰か座っていることに気付いた。

大柄なその客を見上げては自分の目を疑い、言葉を失った。




「えっ」

「キュイーン」




どこからどう見ても黒い人型ロボット、機動戦士何某って奴が隣りに居た。

でかっ!・・・っていうかお茶飲んでる?!え、何でこんなところに?!

未だかつてないほどの混乱ぶりを見せるを余所に、彼は茶屋の娘に代金を支払っている。

いつものなら彼が支払った金額が自分の分も一緒に払われていることに気付いただろう。

だが、とにかく人型ロボが隣りでお茶を飲んでる事態に付いていけないは振り向いた彼に驚くしか出来なかった。




「キュインキュイーン」

「え、ちょっ」

「またいりゃあせ〜」




大きな手で身体を鷲掴みされたは逃げることもままならず、外に連れ出された。

店の娘は何てことないように笑顔で見送ってくれるが、異常事態ではないのかこれは?!

周囲は心得ているようで、急に彼の周りから潮が引く様に離れていく。

何が何だか分からない内にはグッと抱き込まれ、彼が少し腰を落とした瞬間、は悲鳴を上げた。




「きゃあぁぁぁぁぁ!!」




彼は火を噴いて空を飛んだのだ、例の機動戦士のように空高く。

まるでロケット花火のように打ち上げられた達に観客が湧くが、はそれ所ではない。

が居る場所はテレビで観たスマートで安全なコックピットの中ではない。

彼の片手という不安定極まりないシートベルトただ一本である。

何とも悲しげな悲鳴が響き渡る中、彼はものともせずに眼前の城へと向かって飛んだ。




「忠勝ー!あれほど生き物は拾って来てはいかんと言うたろうがー!」

「キューン・・・」

「・・・何だろう、これ」




ぐったりとしたが連れて来られた城の奥、何やら背の低い男の人がロボに説教している。

よく分からぬまま放り出されたはフラフラしながら少年を観察する。

金色の装束に三つ葉葵の家紋?!

そういえば、このロボの人、忠勝って・・・。

の頭の中でいろいろ繋がり始め、血の気が一気に引いた。

説教は済んだのか、青年はを振り返って笑顔で声を掛けた。




「ワシは徳川家康。まぁ皆、竹千代って呼ぶがな。おめぇは?」

「・・・私はといいます」

「そうか!、なーんもないが、ゆっくりして行けよー」




ニッコリ笑って歓迎してくれている城主に逆らえるわけもなく、は青褪めたまま頷くしか出来なかった。

何やらキュインキュイン機械音がする中で、は自分の不運を呪った。


* ひとやすみ *
・警告!ここから原作ストーリーに見せかけた全くの別物になります!
 かなり無理ある設定なので苦手な人は次に進まない方が無難です!
 夜明の無茶振りは慣れてんよという方だけお付き合い下さいませ!
 というか私の中で竹千代が小さかったり大きかったりと安定しません。
 話の内容的に大人なんですが、パノラマではチビの方に固定しちゃっていいかなぁ。                     (14/08/17)