ドリーム小説
「同盟だぁ?!」
「はい。四国が生き残るためにそれが一番手っ取り早いでしょう?」
長い髪を押さえて淡々と話すに元親は目を見開き、素っ頓狂な声を上げた。
なかなか見所のある女だと元親は面白がって手助けをすることにしたが、まさかここまでぶっ飛んでるとは思わなかった。
潮風を浴びながら海を見てはしゃぐに元親は言葉も出ない。
ただを内地に送り届けるだけだったのに、釣った魚はとんでもない物だった。
そんなものを引き換えにしたら船が沈んじまう。
元親は顔を引き攣らせて、船の上で叫んだ。
「あぁ?!んなこと聞いてねぇぞ!俺はお前を送る見返りを聞いてるだけで、破滅への道を案内しろとは言ってねぇ!」
「何、甘っちょろいこと言ってるんですか。そんなんだから毛利といつまで経っても決着つかないんでしょう」
「てめぇ・・・!」
「それに!これは私の命を懸けた契約です。そっちが仰ったのでしょう?海賊にもの頼むならそれ相応の物を差し出せ、と」
ギラリと光る眼に射抜かれた元親は悔しいかな黙り込むしかなかった。
そう。もとはと言えば、これは元親が欲張った結果なのだ。
面白がって手を出しては見たものの、火傷どころか山火事必至の現状に成す術がなかった。
頼りになる頭領が小さな女軍師に圧される姿に、可之助は身体を震わせた。
かあちゃん、女って怖ぇぇよ・・・!!
やっと、帰れる・・・。
キラキラと輝く水面が自分の行く末を照らしているように感じた。
足の速い関船で瀬戸内海を渡りながら、は希望に満ちた表情で遠くを見つめる。
全部終われば、またあそこに帰れる。
暖かい陽だまりのようなあの場所へ。
・・・しかし、そこへ至る道のりが簡単ではないことは分かっている。
が背負った条件はそんなに簡単なものじゃない。
先を思っては小さく息を吐いたが、すぐに口元を緩めた。
弱気になることなんてない。
私が通って来た道はいつも険しい道なき道だったじゃないか。
期待と不安の混ざった感情を抱えながら、は高揚する気持ちに胸が躍った。
出発前には長宗我部の所有する船や港、街や人などさまざまなものを見せてもらっていた。
船の大体が機動力を優先した関船であり、戦うには乗り移って敵船で戦うしかない。
毛利も似たり寄ったりらしいが、それでも向こうには戦艦と呼んでいい安宅船も数隻所有しているそうだ。
さすが天下の毛利。財力が違う。
そこに今まで負けなかった自力は賞賛に値するが、いつまでも続くかと聞かれると厳しいと言わざるを得ない。
まぁそのためのカラクリ兵器なのだろう。
あれにはさすがのも驚いた。
酔っぱらった元親が自慢するように見せてくれた木騎と呼ばれる巨大木馬。
あんなのはっきり言って反則である。
男の子って巨大な戦うロボとか好きだよね、とドン引きした。
もちろん最強にはリスクもある。
「海賊業の最大の理由はやっぱり資金不足だよね・・・」
簡単に言えば、大きい物を維持するにはお金が掛かるのだ。
そんなわけでこんな長宗我部を生かすために同盟を結ぶことが重要なのだ。
・・・と、言いたい所だが、このの提案には裏がある。
の無謀にはリスクもあるが、それ以上に同盟が成れば大きな利益が出るとは踏んでいた。
水軍を持つのと持たないのとでは大きな差がある。
海を制する者は商いを制する。
だからこそは水軍の力を引き込むことにした。
そして志摩の九鬼水軍への抑止力にしたかった。
本来なら織田に組する九鬼だが、織田は同盟軍がすでに下してしまい、野放しになった今幅を利かせているらしい。
それならば、反則技だが信長が考案したという鉄甲船を作って九鬼を降し、手に入れようじゃないか。
それにより鉄を売る新たな販路を手に入れる斡祇はニンマリ、強力な後ろ盾を得る長宗我部はニヤリ、
水軍を得る同盟軍はニッコリである。
Win−Winの関係とはまさにこのこと。
そんなわけではこんな危ない橋を渡っていた。
転んでもただでは起きないのが斡祇という女である。
「私が誰に鍛えられたと思ってるの・・・」
フッと笑ったは走馬灯のように今までの過酷な試練を思い出して遠い目をした。
とにかく向こうが要求したのだからと、こじつけては逆に喰い付いた。
こんな上等な餌を逃してなるものかと、は目をランランと光らせていた。
それを見ていた元親は背筋に走った寒気に早まったかと再び顔を引き攣らせるのだった。
* ひとやすみ *
・私欲に溢れた同盟を持ちかけるヒロイン。一石二鳥も三鳥も狙う辺りがいい具合に小狡い。笑
あと少しで帰蜻蛉編も決着です。まぁもうちょっとゴタつくんですが、もうしばらくお付き合いを!
何かいろいろ適当なこと書いてますが、雰囲気楽しんでもらえれば幸い。笑 (14/08/05)