ドリーム小説

絶対無理だと思っていた姉弟作戦に虎珀さんは手を叩いて喜んだ。

え?えぇ?絶対無理でしょう!?

の声も空しく、その日はすぐにやってきてしまうのだった。








初任務は過激だった。

もはや任務と言っても過言ではないお蘭の言葉はとんでもない物だった。



『私もそうそう抜け出してばかりいられない身分でね。

 そうさね、、その時は城に私を呼びにきておくれ』



何でもないようにお蘭さんは言ったけど・・・

城には小十郎さんや綱元さんが居ますからー!!

ホントに無茶言う人だ!!

だけどそれ以外何をするのかも聞かされていない以上、城を訪ねるしかない。

城にさえ行けば案内役の人が来てくれるらしいけど。





は溜め息を吐いて城へと歩き出した。






***






米沢城にはあっさり着いた。

だが、ここからまさかあんな事になるとはは思ってもいなかった。

お蘭の客として部屋に通され、案内役の人を待っていた時だった。

物音がして顔を上げると数人の女中が入って来た。

案内役の人だろうかとがぼんやり思っていると、女中達は素っ頓狂な声を上げた。




「そこで何をしてるの?」

「あなたどこの女中?厨?まさか侍女の・・・?」

「え?えぇ?わ、私は・・」




次々に質問されてが動揺していると凛とした声が聞こえた。




「何事です?」




その場にいた皆の視線がその人物に向いた。

女中達が一斉に頭を下げた事から何やら偉い人物なのだろう。

朱色の衣が良く似合った女の人で、威厳ある顔付きは迫力がある。




「何をしてるのです?貴女方には仕事がありましょう?」

「はいィっ」




その人物の一言で蜘蛛の子を散らすようにあっという間に女中達は去っていった。

その場に残されたはポカンとその様子を見ていた。




「さて、貴女もですよ。名は何と言うのです?」

「あ、と」

「では、貴女も持ち場に戻りなさい」

「あの私、今日は・・・」




その迫力ゆえに尻込んでいると、さっきの女中の一人が帰ってきた。




「女中頭、片倉様がお呼びです」

「また、ですか。わかりました。参りましょう」




女中頭だというその人は溜め息を吐いて部屋を出て行こうとした。

は何だかホッとしてその様子を見ていると、気配を感じたのか女中頭が振り向いた。

そして爆弾を投下した。




と申しましたね?城下の問屋に帯衣を頼んでおります。取りに行ってくれますか」

「え??え、私は・・・」

「喜多様が仰ってるのですよ!早くお行きなさい!!」




側にいた女中が烈火のごとく怒鳴り散らして、二人は部屋を去った。

残されたは泣きたくなった。




「だから私はお蘭さんに会いに来たんだってば・・」








***







お蘭様に客が来ていると知らせが入り、私は言われた客間へ向かった。

面倒を見てやれ、と私に言ってくだされたのは嬉しいが、

お蘭様がそのようなことを仰られたのが何故だか引っかかった。

一体、その娘をどうするおつもりなのだろうか?

言われた客間が近付いてきたが、何やら騒がしい。

足を速めて部屋に近付けば、驚いた事に目指していた部屋から女中頭の喜多様が出ていらした。

驚いて頭を下げてちらりと部屋に視線を向ける。




「貴女はお蘭の所の篠ではありませんか」

「覚えていらっしゃったとは光栄です。ここで何かあったのですか?」

「いいえ。ただ女中が客間に居たので注意したまで」

「女中が客間に・・?」

、と申したか。あの者に城下まで帯を頼みました」

・・・にですか?」

「何です?お蘭の所の者でしたか。あとは任せましたよ、篠」




喜多様が去っていくのを見送って私は客間に入った。

そこには人の気配はなく、私は深く溜め息を吐いて踵を返した。




「お蘭様に報告せねば、は城下に居ると」








***







どうしてこんな事になったのか。

気が付けばあれよあれよと城下に来ていた。

久しぶりに女の格好をして世間に出たのが間違ってたのか。

着ている綺麗な藍染の着物を見下ろした。

姉弟作戦が決まった時に虎珀さんがこの小袖をくれた。

寺に寄贈された物だと言っていたが、ホントの所はどうだろう。

女の人のいない寺に小袖持って来る人なんていないと思う。

やっぱり虎珀さんが私のために買ってくれたんだろうと思うと頬が緩んだ。

女中と勘違いされて追い出され、今更戻るのもなんだか気が進まない。




「ここまで来たんだし、反物もらって帰ろう」




すぐに見付けた呉服屋はどうやら、お城の愛用の問屋らしい。

見知らぬ私でも女中頭の名前を出せば、あっという間にで反物二巻を渡された。

それを持ってフラフラと歩きながら、町の活気溢れる様子を眺めていた。

呼び込み上手な様々な店に誘惑されそうになりながら城へ向かっていると、

背後から数人につけられているのに気付いた。

こんな事が分かる様になったのも洛兎さんの修行の賜物だ。

粗い足音などを聞く限り、町のごろつき辺りだと予測できた。

この程度ならば倒せないこともないけれど、町中で城のおつかい途中に暴れて騒ぎにはなりたくなかった。

どうしようかと辺りを見渡すと、小路が脇にあるのを見付けて考えが閃いた。



* ひとやすみ *
・何だかめちゃくちゃ情けないことに・・・。
 次はあの人が出ます!!        (09/01/25)