ドリーム小説
「の様子がおかしい?」
「どう見ても変だろ。親父なんか変な男にハマり込んでるんじゃないかってオロオロしてたぞ」
夕食が済み、リビングでテレビを見ていたが不意にそんなことを言い、母は洗い物をしてた手を一瞬止めた。
確かに近頃のは少し変だ。
遠くを見てたと思ったら急に泣き出したり、いつも祖父と一緒に見ていた時代劇も見なくなった。
おまけにあんなに好きだった料理もしないどころか、日課の袴も着ずに部屋に閉じこもっている。
母はキッチンに投げ出されたままのいろは包丁に目を向けて溜め息を吐いた。
・・・そうねぇ、そろそろ、声を掛けた方がいいかしら?
「放って置け。あれはそんなに軟じゃないわ」
「お義父さん」
「でもさ爺ちゃん!あのが、目に見えて変なんだぞ?ヤバくないか?!」
「はお前と違ってしっかりしとるから大丈夫じゃ!ピイピイ外野が騒ぎ立てることでないわ!」
「ひでぇッ!」
急須と湯呑をシンクに置いた祖父は喚くに意地悪く笑った。
母は増えた洗い物に手を伸ばしながら、苦笑した。
全く、は旦那にそっくりだし、はお義父さんにそっくりだわ。
息子が義父に丸め込まれる姿を見て、を思い出す母もどうかとは思うが、
この義父に似た娘がこのままおかしいままなはずがないと母は改めて確信したのだった。
「爺ちゃんは心配じゃないのかよ?!」
「喧しいわ。お前みたいなへたれーな兄に心配されるが可哀相じゃろが」
「うわっ!ヘタレとかどこでそんな言葉覚えてくんだよ?!」
「近所の幼稚園児がお前みたいなのをそう呼ぶと言うておったわ」
「・・・よ、幼稚園児に言われる俺って」
完敗して落ち込むを見て祖父はニヤリと笑い、さりげなくいろは包丁を手に取って部屋を出て行った。
おそらくに変わって手入れをするのだろう。
素直じゃなく分かり難い祖父に母は小さく笑った。
***
生活が一変した。
特別なことはなくても毎日することしたいことが山のようにあって、忙しく過ごしていたのに、
今は何もかもが憂鬱で毎日恐々とただ時間を潰す日が続いている。
世界が目に見えて暗くなったようだった。
あれからの本棚にある歴史小説にはハンカチが掛けられ、好きだった時代劇も見れなくなった。
歴史の教科書も戦国時代付近は見れた物じゃないし、泡沫が置いてある道場には近付くことすら出来ない。
これじゃ、まるで、失恋したみたいじゃない。
そう思ってはふと気が付いた。
「世界まで越えちゃって、大失恋もいいところ・・・」
ベットで仰向けに寝ていたは、そんな自分を薄らと笑った。
いつからこんなに弱くなったんだろう。
こんなことではあの人達に笑われる。
そう思った瞬間、は何かに気付いたように声を漏らした。
「あ・・・・・」
まただ。
また考えてしまっている。
思い出したくなくて遠ざけているのに、考えているのはいつもあちらのこと。
世界を渡った原因が分からない今、願ったって仕方ないことなのに、苦しいから考えたくないのに。
「もう、やだぁ・・・」
は目元を腕で隠すと、呻くように呟いた。
本当に自分が情けない。
あちらではここに戻りたくて仕方なかったのに、今は向こうを忘れられずにいる。
こんなことではダメだと分かっているのに、一体どうしたらいいのか分からない。
矛盾した思いがの心を酷く締め付ける。
考えなければ、時間が解決してくれる?
それとも、あちらに渡る方法を探し出す?
誰か・・・・、
誰か、助けて。
「かえりたいよ・・・」
絞り出すかのように零れた言葉の意味をもまだ知らない。
心を残してきたあの戦乱の世に帰りたいのか、あちらを知る前の無垢なる自分に帰りたいのか、
その言葉の本当の意味を知る者はまだ誰もいない。
* ひとやすみ *
・暗い。暗すぎる・・・!がこんなだと調子が狂います。おかげで話が短いっていうね!(え
自分でも分かっているんですが、気持ちがグルグルしちゃってます。
家族は家族で心配してるんですが、相変わらずキャラが迷走してます!笑
さて。次話結局我慢できず・・・。ぶち込みます!後悔はしてないやい!笑 (13/06/02)