ドリーム小説
混戦に混戦を重ねた戦いは信長の敗北で呆気なく幕を閉じた。
敵対していた明智・濃姫の軍もいつの間にやら後退しており、撤退の動きを濃くしていた。
喜びに沸く前田斡祇の両軍は合流し、状況確認に奔走していた。
一度末森城へ退こうとしていたのだが、同盟軍はもうすぐそこまで来ており、一同はこの陣で待ち構えることになった。
ただでさえ合流しただけで忙しいのに他軍が来るということで、陣内は人が入り乱れ、
後片付けやら出迎えの準備やらで皆が忙殺されていた。
も陣の解体や情報収集に追われており、とてもじゃないが誰かとゆっくり話し合う暇などなく、
未だ靭太と会えておらず、斡祇の状態も確認出来ていない。
靭太も同じようなものだったが、まともに采配を振るえない前田夫婦に代わり、
なぜか前田で老臣達と共に指揮を飛ばすという不可解な状況に陥っていた。
「なぜだ?!私は斡祇の人間だというのに!」
「あー・・・。こういうのは助右衛門の仕事なんだけど、今回は槍振り回すしか脳のない連中しか来てないからなぁ」
「・・・末森城にいたあの幸薄そうな男か」
すぐさまコクリと頷いた慶次に靭太は納得したように呻いた。
この惨状がいつものことならばあの男の幸せが逃げるのも無理はない。
靭太は末森城にいた奥村助右衛門永福に同情しながらも、この場にいない幸薄男を呪った。
すると斡祇の鷹文部隊の男が転がるように走り来たので、靭太は何もかも放り投げてその文に飛びついた。
不安そうに見上げる鷹文部隊の男を余所に、靭太はもたらされた情報に笑みを浮かべた。
「双野木は被害も少なく森蘭丸を撃破したそうだ。蘭丸自身は行方知れずらしいが、我々の大勝利だと書いてある」
パァっと顔を輝かせた男に靭太は笑って頷いてやると、男はその報せを皆に伝えるべく駆け出した。
これで一先ず斡祇の危機は去った。
の忍が大活躍だったことを伝えてやらねばと靭太は口元を緩めたが、まだからの連絡はない。
あいつも忙しいのだろうと溜め息を吐いた矢先に後ろから慶次の声が投げかけられ靭太が切れた。
「うぉ!同盟軍が到着したらしいー!靭太、何とかしてくれー!」
「
やかましいわ!!!」
***
前田の陣に案内されるなり落ち着きなく辺りに視線を走らせる幸村と政宗に佐助は苦笑した。
ここには援軍を要請してきた斡祇の当主がいると聞いて一先ず話を聞きに来たのだが、
二人のこの様子を見れば何に重きを置いているのか丸分かりである。
帰還の最中、同盟軍がすでに勝敗の着いた他軍の戦場へわざわざ寄ったのには理由がある。
普段は居場所を晒すことのない斡祇当主が表舞台に出てきたのだから、この機会を逃すわけにはいかない。
何としても斡祇との繋ぎを作っておかなければならないと、信玄と謙信が強引に加賀へ人をやったのだ。
その使命を引っ提げて同盟軍代表の政宗と幸村達が帰還途中に寄った、と言えば聞こえは良いが、
実際はそわそわと落ち着きのない二人が心底ウザくなって勘助が追い払っただけである。
もちろん二人の頭の中はを探すことでいっぱいだ。
織田軍を分断して袋叩きにしたあの鬼神のような若者二人がキョロキョロと、
まるで迷子の子供のような顔をしているのを見て佐助は何だか複雑な気持ちになる。
仕事を忘れている主人達に代わり、佐助は勘助から預かった書状を手に当主へ目通りしたい旨を伝えて待つことにした。
しばらくすると騒がしい中を凛とした空気を纏う綺麗な男と慶次がやってきた。
「遅れて申し訳ない。私は斡祇靭太と申します」
軽く頭を下げた靭太にようやく幸村と政宗もやることを思い出し、目の前のことに集中し始めた。
洗練された動きをする靭太を見て、三人は彼が斡祇当主かと憶測していた。
佐助も一度を助けて合流していたが、すぐに幸村の元へ戻ったので斡祇の情報は何も知らなかった。
「よう!お前ら、あの魔王さんを倒すとはすげーなぁ!」
「それに関しては私からも礼を言いたい」
「なんの!全てはお館様の手際と我らの結束ゆえでござる!」
「Ha!所詮魔王も孤立すればただのおっさんだったってだけだ」
満更でもないように答える二人に慶次は苦笑した。
魔王相手に奮闘したことを労う気持ちは事実だが、こんなに早く二人が来た理由を思うと微妙な気分にさせられる。
それでも無事なことくらい伝えてやらねばと慶次は持ち前の人の好さを発揮した。
「お前ら、が気になってすっ飛んで来たんだろ?アイツは無事だよ。のおかげで俺達は持ち堪えた。
何があったかは知らねぇが、あんま怒ってやるなよ?」
慶次の言葉に若者二人と靭太は照れたり怒ったり拗ねたりと表情をコロコロ変えた。
何とも言えない甘酸っぱい空気に佐助は苦笑いし、不意に感じた気配に口元を緩めて幸村を呼んだ。
佐助の視線を追って一同が背後を振り向く。
「え、使者って幸村さんと政宗さんなの?!」
当主として顔を出しに来てみたら、見知った顔ばかりでは目を見開いた。
少しばかりくたびれてはいるものの、大きな怪我もないの姿に幸村と政宗は安堵した。
聞きたかった声を耳にしてようやく戦が終わったのだと実感したのだった。
一方のも、信長と死闘を繰り広げただろう二人の無事な姿を見て肩の力が抜けた。
良かった、本当に終わったんだ・・・。
気が抜けてへにゃりと笑ったはそのまま前のめりに倒れ伏した。
* ひとやすみ *
・これでひとまず一段落です。まだ山場が残っていますが、
あと少しで砂散華編も終幕です。そしてついに最終章へ突入します!
いやー、長かった。そしてすごく楽しかった。いや、終わりはもう少し先なんですがね。笑
後少し、ヒロインと一緒に泣いたり笑ったりしていただけると嬉しく思います!続き頑張るぞー! (12/02/19)