ドリーム小説
なにやら色々とあったけれど、私にこの世界での居場所が出来た。
寺のお坊さん達は今まで洛兎和尚と呼ぶ事が禁止されていたらしく、
解禁になった時みんなの安堵した顔に思わず笑ってしまった。
私、洛兎さんに拾われて本当に良かったなぁ。
心底、そう思いながら廊下から見えるはずもない城下を見た。
辺りはすでに陽が落ち、見える物は何一つないのだけど。
「、何をしているのですか?」
振り向くと首を傾げながら巻物を抱えた虎珀さんが近付いて来ていた。
ちらりと暗闇に目を向けてからすぐに虎珀さんに向いた。
「何でもないですよ、中に入りましょう」
私が使っていた部屋がそのまま私の部屋になった。
部屋に入って改めて見回すとホントに何もない。
部屋の中央に向き合って座ると虎珀さんが巻物を広げた。
そこには何かの詳細がビッシリ書かれていたが、筆で書かれた文字は読めそうにない。
不思議に思って顔を上げると虎珀さんは困ったように笑っていた。
「本当はもう少し早く伝えて差し上げればよかったんですが、
洛兎の気まぐれによって事が変わってしまうので何も言えませんでした。申し訳ないです」
「そんな!私はただの居候です、そこまで気を遣っていただかなくても・・・」
「それがそうもいかなくなったのですよ」
「え?」
息を吐いた虎珀さんは背筋を伸ばして私の目を見た。
何やら難しそうな話らしい。
虎珀さんの空気が変わった。
「五日前にも言ったように明日、この覚範寺で祭事があります。
それは盛大な物でして・・その、お城の方々も来られます」
言いにくそうに言ったのを聞いて納得がいった。
この所、寺への人の出入りが激しかったのはそう言う事か。
盛大と言った規模はこの巻物の細かさを見たら私でも分かる。
「・・・政宗公がいらっしゃるのですね」
***
本当に驚くぐらいは観察力が鋭い。
この寺に来てたった五日しか経っていないと言うのにすでにいろんな事を理解している。
小さく頷いて肯定の意思を伝えると、続きを言おうとした私をが遮った。
「・・私がここに居ない方がいいということですよね」
は、い・・・?
どこに行ったらよいですかね、と真剣に聞いてくるに驚いた。
確かに、記憶喪失の少年なんてお城と関わらせるのはよくない事。
実は身元不明のこの娘が何か善からぬ事を考えているかもしれない。
にはその間、寺から離れていてもらうしかないでしょう。
・・・・・・と、以前の私なら言ったでしょうね。
今でも未来から来た少女なんて信じられるはずもないですが、
がどんな娘かなんて寺の者たちを見ていれば分かります。
この真直ぐな瞳をする子が嘘をついてここに転がり込むなんて思えません。
そう思わせるのがこの子の策略なら私の見る目がなかったという事なのでしょう。
そう素直に思える自分が何だか可笑しくて堪らず声に出して笑ってしまいました。
何事かと目を白黒させているが微笑ましい。
「何を言ってるんですか。明日は忙しいんですよ?手伝わないつもりですか?」
「え?でも・・・」
「でもも、なんでも、ありません。働かざる者食うべからずですよ」
渋々頷いたの目は不安が見え隠れしていた。
これはどうやら納得してない所か、自分を信じていないようですね。
全く、聡い娘の割りに自分に関しては疎いんですね。
「、貴方はこの寺に居てやましい所は何一つないと胸を張って言えますか?」
「それはもちろんです!」
「なら、何も迷う事なんてないですよ。だって貴方もこの寺の仲間なのですから」
頭を撫でてやるとはくしゃりと表情を崩した。
おや?
嫌ではないようですが、何だかいろんな感情が入り混じったような顔をして俯いてしまいました。
ふふ。何だか親にでもなった気分です。
「さぁ、悩んでる暇はないですよ!明日の貴方のお仕事について説明しますからね」
顔を上げさせてニッコリ笑って言うとは呆けていた。
その表情が強張っていたように感じたのはきっと私の勘違いでしょう。
* ひとやすみ *
・祭事に突入です!
いろいろ入れてたらお城が遠くなりました。。。(08/12/21)