ドリーム小説
四日目にもなると風で舞う落ち葉にも慣れて箒を扱うのが上手くなったと自分でも思えた。

門前で黙々と落ち葉を一ヶ所に集めていると後ろから声を掛けられた。




「どうした、




驚いて振り返るとそこには、片倉さんと鬼庭さんが立っていた。

片倉さんは忙しい人だと聞いていたのにこの所よく寺に来て声を掛けてくれる。

その気遣いが嬉しくもあり、照れを含んで何気なく目線を下にやった。

すると目に入った物が浮かれた私を現実に引き戻した気がした。



( 帯刀している・・・)



目の前にいる二人は本物の武士で、改めて時代の違いを感じた。

ホントに戦国時代に来てしまった。




「すまないが、洛兎和尚か虎珀法師は居るか?」

「虎珀さんならいます」




少し硬い言葉で話す鬼庭さんは顔ほどに怖い人ではないと昨日少し話してそう感じた。

私が歩き出すと二人も並ぶようにゆっくり歩いてくれる。

そんな大人二人は強面だろうと何だろうと優しい人に決まってる。

内心苦笑しながら門を潜るとまたもタイミングよく庵樹さんが廊下を歩いて来た。




「今度は二人で来たのか!」




和やかに話す三人を見ていたら、片倉さんに庵樹に会えたから虎珀に会わなくてもよくなった、と言われた。

付け足すように虎珀は俺の部屋に居るから大丈夫だ、と庵樹さんに言われ、

私は三人が去っていくのを見てるしかなかった。

仕事をしに来た二人に付いて行こう何てこれっぽっちも思ってなかったけど、

何だか取り残された気がして少し寂しかった。

縁側に座ってぼんやりと外を眺めていたら結構な時間が過ぎていたらしく、

声を掛けられた時には陽は西に傾いていた。




・・?そんな所に居ては風邪を引きますよ?」




見上げれば虎珀さんと鬼庭さんが不思議そうに私を見ていた。

もう話は終わったのかと聞くと、面倒な話は小十郎に押し付けてきたと鬼庭さんが言い、

虎珀さんを見れば同じように頷いていた。




「でも大事な話だったのでしょう?虎珀さんが居なくても大丈夫なの?」

「私は名代ですから。少々厄介な案件で、私じゃ話にならないので」




苦笑する虎珀さんに何だかずっと引っかかってる事を聞いてみた。




「洛兎和尚から寺の事を一任されたのは虎珀さんですよね?」

「えぇ。和尚が居ない間は私が全て任されています」




それを聞いてがにっこりと笑顔を向けると、虎珀は不思議そうにしながらも仕事が残っているらしく、

早々に部屋に戻っていった。

虎珀さんの後姿を見送ってから顔を正面に戻すと、鬼庭さんが私の隣に黙って座っていた。




「うわっ!」

「貴殿は殿・・と言ったか」

( 無視ですか?!)

「・・は、い。呼び捨てて下さって構いませんよ」




なら自分も綱元で構わないと目尻の皺を濃くして笑うおじさんにすごい好印象を覚えた。

隣にこっそり座る事以外は。



さすがに年上を呼び捨てる事は出来ず、綱元さんと呼びますと言えば、

何だか嬉しそうにしていたのは気のせいじゃないと思う。

二人で身の周りで起こった事など、他愛ない話をしていたら陽はすっかり顔を隠してしまった。




「そろそろ戻らねば主が鬼のように怒るな」




綱元さんが何気なく庵樹さんの部屋の方を見ていたが、私は違う事を考えていた。

それは言うつもりはなかったのだけど、思わず口をついて出てしまっていた。




「独眼竜というくらいですから、やっぱり鬼ではなくて竜の方が似合いますね」




綱元さんは目を見開いて私を見たので、まずい事を言ったかと思い、俯いた。

その視線に居心地が悪く、居た堪れない気持ちでいっぱいになった。




「・・は賢いな。いい目を持っておる」




綱元さんがやんわり笑ったのを見て、ようやく息を吐くと頭を撫でられた。

最近、頭を撫でられることが多くなったような気がするのは何故だろう?




「どこで私が政宗様に仕えておるのが分かった?」




まだ頭の上に手を置いたままの綱元さんは目を細めて聞いてきたけど、その答えは簡単な気がした。

ここ遠山覚範寺は政宗公の父である輝宗公の為に創建された縁の地らしいので、

政宗公に近しい人が来ることも予測できるし、寺の皆が丁重に扱う綱元さんや片倉さんは特にその可能性が大きい。

それに、対面した後になって思い出したのだけど、片倉小十郎って伊達の三傑の一人だし、

よくよく考えれば綱元さんも後の茂庭綱元で三傑の一人だ。

後者は、色々説明するのに問題があったから、前者だけをそのまま伝えたら

綱元さんは良くできました、と言わんばかりに私の髪を撫で回している。

・・・・これは後できちんと髪を直さなきゃいけないかもしれない。




「気付いたのはそれだけではないであろう?」




急に話が変わり、ついていけなくて首を傾げると、綱元さんはようやく頭を放してくれた。




「先程の虎珀法師との会話、何か気付いたのではないのか?」




そこまで言われてようやくピンときた。

この人の方こそ侮れない。

一体、どこまで見越しているのか。




「庵樹さんのことですね?」




鎌を掛けてみるが、表情一つ変わらず相変わらずニコニコしている。

さすが歴史に名を残すお人だ。

仕方ない、腕によりをかけて攻略に挑みましょうか。



さぁ、答えあわせです。


* ひとやすみ *
・何だかいろいろ知ったかぶって書いてますが、嘘やら本当やらを
 混ぜて書いた二次創作なので信じちゃダメですよ?     (08/12/2)