ドリーム小説
「失礼します」



庵樹と虎珀がの部屋を訪れて居ると、寺の僧侶が丁寧に頭を下げて入ってきた。

僧侶は庵樹と虎珀そして見知らぬを見ると一瞬不思議そうな表情をしたが、

用事を思い出したのか居心地悪そうに用件を告げた。



「片倉様がおいでになられています」



庵樹がここに呼べ、と言うとまた深々と頭を下げて出て行った。

あまりにも丁寧な僧侶の態度からして、二人は偉い立場の人なのだろう。

虎珀は和尚名代というくらいなのだ。

そんな二人に囲まれて世話をしてもらう自分が畏れ多いとがぼんやり考えていたら、

襖が開いて昨日助けてくれた片倉が入ってきての隣に座った。



「よお坊主、体調はどうだ?」



片倉のその言葉には内心溜息を吐いた。

は以前からよく性別を間違えられるので、慣れていると言えば慣れていた。

高校に入ってすぐの頃に知らない女の子に告白された時には本当に困ったものだ。

それから意地になって髪伸ばしたが、効果はなかったようだ。

そんな事を考えている向かいで庵樹がニヤリと笑ったのには誰も気付かなかった。

苦笑しながらもお蔭様で、と答えたら片倉はそうかと目元で笑った。

片倉のような人でも笑うんだと、失礼な事を思いながらは一応性別は断固否定しようと声を上げた。



「片倉さんは私を坊主と呼びましたが、私はこれでも・・」

「武家の息子らしいぜ」



いつの間にか力がこもっていた自分の声に庵樹の声が重なる。



( ・・・息子?)



その言葉の意味を考えると、男と偽っていることになる。

驚いて振り向けば、庵樹は秘め事だと言わんばかりに意味深な笑みを向けてきた。



「そうなのか?」



と、片倉に見つめられて問われれば反対に座る庵樹からも視線を感じて焦る。



( 何でこんな嘘をつかなきゃ・・)



そこまで考えてハッとする。

最初に疑われた原因は女なのに小刀や袴、ましてや携帯などこの時代では有り得ないことが多すぎたからだ。



( 庵樹さんは厄介な事に巻き込まれないようにする為に?)



目だけで庵樹を見ると顎に手を当てて目を細めてを見ていた。

少しの沈黙を不思議に思ったのか、片倉がを覗き込んできた。

一度目をきつく閉じてから決然と顔をあげるとのその様子に片倉は少し驚いていた。



「そのようです」

「・・ようだと?」

「はい。実は昨晩以前の記憶をあまり覚えていないのです」

「「「!!」」」



これには皆驚いた。

さすがに庵樹が言い出した事だとは言え、何の知らせもなく庵樹の話に合わせた事に対してだ。

虎珀は隣で呆けている庵樹に溜息をついた。






***





( 庵樹、口が開いていますよ)



あのと言う少女は未来から来たと言っていたが、そんな話が片倉殿に信じてもらえる訳がない。

私と庵樹でさえ図りかねているのに。

信じるどころか、いたずらにそんな事を言えば命が危ないでしょう。

だからといって、そこを隠せばいいだけなのに性別まで・・。

庵樹、あなた楽しんでいるだけでしょう?

ぎろりと隣を盗み見れば、庵樹の口元が凶悪なくらい緩んでいた。



「昨晩も奥州に来なければならない用があったようなのですが、

 覚えているのは助けて頂いた時の背中くらいで・・」



意味深にさんが俯けば、片倉殿は庵樹に目を向けた。

すると庵樹も静かに首を振っただけで何も言わなかった。

その首は一体何を意味するのか教えて欲しいくらいです、全く。

庵樹の動作をどう取ったのかは知りませんが、片倉殿はさんの頭に手を置いて撫でた。

さんは慌てたように顔を上げて、佇まいを直して片倉殿を見た。



「礼が遅くなりましたが、昨晩は危ない所を助けて頂いてありがとうございました。

 申し遅れましたがといいます」



ペコリと頭を下げて礼を述べたさんはまだ名乗っていない事を思い出してと名乗った。

と名乗れば性別に気付かれる気がしたのでしょうが、何だかとてもしっくりくる名前だった。



か。俺は片倉小十郎だ」



目元で笑う片倉殿にさんが嬉しそうに笑い返した所でお開きとなった。

門扉まで片倉殿を見送りに出ると、庵樹に片倉殿は一言告げた。



「庵樹と言ったな、あんまり悪戯が過ぎると嫌われるぜ?」



全くその通りだと思います。

私も片倉殿に同意したいと思っていたらどこか慌てた様子のさんが目に付いた。

すぐに胸を撫で下ろしていた所を見ると偽名を名乗った事がバレたと思ったようだった。

すると今度は眉間に皺を寄せて何かを考え始めたみたいです。

何か引っかかる所があったのでしょうが、さんの表情がころころ変わって何だか面白い。

すると片倉殿はさんにまた来ると言って、寺を後にした。

その背中を見送りながら庵樹がさんに笑って言った。



「偽名なんてよく思いついたな。まぁ名を偽るのが色々隠すには一番効果的で、確実だからな」

さんですか。いい名前ですね」



頭を撫でる庵樹に、さんは少し恥ずかしそうに微笑んで兄の名前なんです、と言った。

* ひとやすみ *
・ようやく偽名が名乗れました。庵樹に乗せられて名乗った偽名ですが
 この後の為にばんばん偽名使います!!            (08/11/18)