ドリーム小説

突然、がアジトに現れて本当に驚いた。

という名がジャッポーネの名前だとは聞いていましたが、まさか並盛でまた彼に会えるとは思っていませんでした。

嬉しい侵入者に僕は当時言えなかった言葉をに告げた。




「あの時のことは本当に感謝しています」

「なら、今度からはアップルパイの味見をしてから去るべきだな」

「おや、やはり不味かったですか」

「・・・頼むから砂糖と塩の確認だけはしてくれ」




当時を思い出したのか険しい顔をして、不貞腐れるように小さく呟いたに僕は千種を覗き見た。

確か砂糖を担当したのは千種でしたよね。

何とも言えない表情をしている千種を見て僕は耐え切れず噴き出した。

リンゴの塩漬けケーキとは何とも面白い物を作ったものですね。

一頻り笑った僕はまだ苦い顔をしているにこっそり微笑んだ。

あの形も色も悪いケーキを食べようとしてくれたんですね、

僕を助けてくれたあの時から全く変わらない彼が酷く眩しかった。

に歩み寄り、その手を取ると美しい金色の瞳が僕を捉えた。




「もう一度あなたに会える日を楽しみにしていました、Il mio Messia」




背丈と色気を増して僕の元へと帰ってきた僕の救世主。

こんなに眩しければきっと女性だけでなく世の人間全てを惹き付けてやまないに違いありません。

優しすぎるのもあまりいただけませんね。

すると僕の拙い嫉妬心などお見通しなのか、は苦笑して僕の髪を撫で回した。

が何を考えているのか、これは昔から僕には全く分からなかった。

彼を理解したくて僕は必死になって身に付けた能力を磨きました。

三叉槍で傷つけられた者は全て僕に身体を乗っ取られる。

ですが、この条件はに対してハードルが高すぎますね。

案の定、抱き着くフリをしてみましたが、やはりバレました。

戯れには少々拙すぎましたかね。

咎めるような視線を向けるに僕は肩を竦めてソファへ腰を降ろし、ストレートに何しに来たのかと聞いてみた。

視線を逸らして僕の問いに答える気のないに邪魔をするなと釘を刺してみるもやはり反応がなかった。

探りを入れる僕には不意に歩き出して落ちていた何かを拾った。




「脱獄して情報に疎いとはいえ、あぶり出しにケンカの強さとは」

「そこまで知ってるなんて、、あなた、何者です?いくら何でも情報が早すぎます」




はやはり何も答えませんでした。

ここに来て初めてが何者なのかと考えた。

が何者でも関係ないと思っていましたが、今の状況下では不安定要素にしかなり得ない。

けれどは小さく笑って、邪魔をする気はないとそう呟いた。




「邪魔する気はないが、俺にだって気に食わないことはある」




足早に暗幕へと向かい手を伸ばしたに僕は息を呑んだ。

急に声音が変わり暗幕を怒りに任せて豪快に引き千切った瞬間全てを悟った。

彼がそこにいたことも初めから全部バレていた。

先程の荒々しさから一変、黙ってフゥ太君の前に膝を着いて慈しむように頭を撫でたが何より恐ろしかった。




「フゥ太はここに置いていく。だが、これ以上フゥ太を傷付けるなら黙っていない」




怒りに震えるが纏う空気にあてられる。

酷く痛く重たい空気に僕も千種も戦意すら持てませんでした。

が怒りに暴走すれば僕達なんて呆気なく散ってしまうと瞬時に想像が出来た。

そして、この後、僕はにあの気に食わない言葉を貰うのだ。






***






「たっらいまー!6位狩りも・・・ってあれ?何か別の人の匂いがするんれすけどぉ?」

「犬、さまがここに来た」

「・・・はぁあぁぁあ?!」

「ウルサイ」




狩りから帰って来た犬が大声を上げて千種が耳を塞いだ。

犬が驚くのは無理もありません。

が去った今も僕の心は彼に向けられているのですから。

8年前のあの日から彼にまた逢えることを心の支えに僕達は死に物狂いで生きてきた。

だからこそ、ここでに再会したことが何だか不気味だった。

何故、僕達の行動を彼が把握していたのか?

何故、分かっていながらここへ来たのか?

何故、こんなにも僕はイライラしているのか?

分からないことが多すぎる。

いや、最後の疑問の答えだけは分かっています。




「雲雀、ですか」

「へ?骸しゃん、ヒバリって確かー、リストのてっぺんにいた」

「雲雀恭弥はさまの弟だった」

「・・・はぁあぁぁあ?!」

「ウルサイ」




本当に気に入らない。

雲雀恭弥は強いと自信満々に笑ったの顔が忘れられません。

いくつもの死線を潜り抜け、多くのマフィアを闇に葬り、地獄のような毎日を過ごしてきた僕達だからこそ、

ここまで生き残り、力を得たのだと自負していた。

が僕達の行動を把握していたなら、僕の強さを知っているはずです。

なのに、そのが僕に弟の強さを楽しそうに語った。

本当に気に入りませんね、雲雀恭弥。

並盛で、の側でヌクヌクと過ごしてきた人間に、この僕が負けるわけがない。




「犬、千種。雲雀恭弥は僕の獲物です。手は出さないように」




クフフ。残念ですが、貴方の弟は僕の手によって地獄を見るでしょう。

例え貴方が僕の救世主で、最強であろうとも、今度ばかりはその予想は外れますよ。

どんな手を使ってでも完膚なきまでに潰して差し上げましょう。

雲雀恭弥には勿体無い。

地に這い蹲らせて分不相応だと思い知らせてあげますよ。

彼に相応しいのはこの僕だとね。


* ひとやすみ *
・物騒な考え方をする子になったものです・・・。無理ないけど。
 恨むのは当然だけど世界に仕返ししてやるーとか面白いね!って誰か言ったげて!
 あのまま兄ちゃん所で育ってればもっと現実的な子になってたでしょうに。
 まぁ、そうなってたらそうなってたで恭弥に咬まれてたでしょうが。笑             (10/07/31)