ドリーム小説

骸はニコニコしたまま、古びたソファにもう一度身を沈めた。

コイツ、顔キレイだし、いつもニコニコしてるから人好きのする顔だけど、中身マジおっかない。

大体、契約って何だよ?!

一方的過ぎるそれは契約とは言わねーだろ!

俺がビクビクしてると「それで」と骸は口を開いた。




「懐かしい顔に会いに来た、って訳でもないですよね」




その一言で二人の視線を集め、ドキリとする。

え?ぶっちゃけ9割そのつもりだったんだけど・・・。

どうしようと視線を逸らせば、骸はクフフと例の笑い声を上げた。

声が低くなった分、怖ぇよ!!




「出来ればとは戦いたくありませんが、邪魔をするなら容赦はしませんよ」




纏わり付く殺気に肌を粟立てながら、俺は早くもここに来たことを後悔していた。

小さい時ならまだしも、こ、怖すぎるよ、コイツら!

オロオロと視線を彷徨わせていると、ソファの後ろに落ちていた白い紙が目に入った。

この場をどうにかしたくて俺は骸と千種の視線を感じながらその紙を拾う。

うぅ・・・!見てる!めちゃ見てるよ!!

皺になった紙を震える手で伸ばして、書いてあった文字を見て驚いた。

並盛中ケンカの強さランキング・・・?!

これって、アレだよな?




「フゥ太のランキングか」

「おや、お知り合いですか?」

「脱獄して情報に疎いとはいえ、あぶり出しにケンカの強さとは」




いくら何でもお粗末だな。

こうやって見てみると、見事に歯を持って行かれた生徒の名前がズラリと並んでいる。

てか、抜いた歯はどこ行ったんだろう?

どっかにジャラジャラ飾ってたらヤだな・・・。




「そこまで知ってるなんて、、あなた、何者です?いくら何でも情報が早すぎます」




初めて笑顔が崩れた骸に俺は目を瞬いて思考する。

ボンゴレ探してるってのは、まぁ原作知識だし、脱獄に関してもちょっと特殊だからなぁ。

脱獄は二週間前くらいに夢で見た。

多分、俺が骸で真っ赤な夢。

全く、夢くらいイイ夢見させろよー・・・。

骸の質問に堂々と答える事が出来ず、俺は笑って誤魔化した。

益々不審そうな顔をする二人に米神を掻く。




「そう警戒するな。俺もマフィアは好きじゃないし、お前達の邪魔をする気はない」




うん。だから顔見せ程度だったんだけどね。

だってさー、この世界に俺がいる時点で、俺から見てこの世界は俺の物語な訳だから、

ボンゴレとか原作とか正直あんまり関係ないとか思ってたんだよ。

でも、もしここで俺が出しゃばって黒曜ボーイズ編、皆で仲良しこよしで終わり!みたいなことになったら

あの氷漬けの馬鹿が出てきた時、綱吉がハイパー化できずTHE ENDじゃね?!

そんな訳で、俺は及ばずながら綱吉達のパワーアップに協力することにしたのだ。

と言っても、ようするにただの放置なんだけど。




「邪魔する気はないが、俺にだって気に食わないことはある」




だから、少しくらいは手を出すかも、と前もって軽く宣言しておく。

突き刺さるような視線が痛くて、逃げるように舞台後ろの仕切り用の暗幕に手を伸ばす。

どうしよう、この空気。

暗幕の重厚な生地に所在無く触れた時、全くアホなことに自分の足に引っ掛かってバランスを崩した。

こけないように必死に掴んだのは脆い暗幕で、ビリビリと豪快な音を立てたが俺は根性で姿勢を立て直した。

あー、ビックリした!怖かった!

ドキドキと煩い心臓の音が暗幕の向こうに横たわっていたそれを目にした瞬間、凍りついた。

フゥ太・・・!!

大事そうにランキングブックを抱えて眠っているフゥ太の目尻には涙の跡があった。

俺は黙ってそこに膝を着くと、フゥ太の乱れている髪を撫でた。

もう少し俺が早く気付いてやれてたらフゥ太がこんな風になることはなかった。

自分が心底不甲斐ない・・・。

引き千切った暗幕をフゥ太にそっと掛けて、立ち上がって骸を見る。

俺は今物凄く自分に腹が立っている。

だけど、起こってしまったことを変えることは出来ない。




「フゥ太はここに置いていく。だが、これ以上フゥ太を傷付けるなら黙っていない」




俺だって説教くらい出来るんだぞ?

大人の威厳という奴を見せ付けてだなー・・・、その、多分、反抗されたらちょっと泣いちゃうかもだけど。

俺の精一杯の見栄に骸は変な顔をして細々と連れて帰らないのかと聞いてきた。

出来るなら今すぐフゥ太を沢田家に帰したいが、今それをやってもフゥ太が傷付いた結果だけしか残らない。

嫌悪に陥っているフゥ太の心を救いたいなら、ここで綱吉達と会って納得して自分から帰って来ないと意味がない。

だから、絶対迎えに来るから、もう少し待っててくれ、フゥ太。




「分かりました。もう彼から聞き出せる情報はないでしょうし、危害は加えませんよ。ですが、安心しました。

 知人の情に流されてに大事な人質を連れて行かれるかと思いましたから」

「骸・・・、お前は分かっていないな」

「・・・何がですか?」




安心?馬鹿言っちゃダメだぜ?

お前達の状況のどこに安心できる要素があるんだよ?

俺は握り潰してしまっていた白い紙を骸に手渡して、ソファの淵に凭れ掛かった。

そのランキングの一番上の奴はなぁ、ハンパねーんだよ。




「お前に比べれば経験は劣るが、純粋に体術のみなら勝負は分からない」

「一体、何の話をして・・・」

「アイツは強いぞ。伊達にトップに居座ってないからな」

「雲雀、恭弥・・・?」

「あぁ、自慢の弟だ」




あのおっかないのを倒せるもんなら倒してみろよー・・・。

今の恭弥、マジで怖いんだからな?!

応接室でジッと情報を待ってられないほど、今のアイツはキレちゃってる。

確かに骸の幻術は厄介だが、桜クラ病さえなければ恭弥は骸といい線いってると思うんだよな。

だから、ガチンコ勝負なら存分にやりあえばいいと思う。

そのためにシャマルの所へも行ったんだし。

さーて、どっちが強いかな?

目を見開いて固まっている骸に俺は小さく笑った。


* ひとやすみ *
・こうして恭弥vs骸戦は仕組まれた!笑
 何だかちょっといろいろ考えてる主人公。でもその半分も理解してもらえないという。笑
 恭弥に兄ちゃんの言葉聞かせてやりたかった!きっと喜んで校歌とか口ずさんじゃうよ!
 というか、ホントに抜いた歯ってどこいったんだろー?                         (10/07/31)