ドリーム小説

新しい道が一本出来るだけでこんなに車通りが少なくなるのか。

轟々と車が音を立て走り抜けていく隣の新国道を後ろ目に俺は人気のない道をひたすら歩く。

黒曜ヘルシーランド、通称黒曜ランド。

まだこの道が旧国道ではなかった時、娯楽複合施設として稼働していたが、

一昨年の台風でめちゃくちゃになって以来ここは閉鎖された。

改築計画があったぐらいだからもちろん再始動計画もあったんだが、計画は全て頓挫。

なぜなら、現黒曜ランドのオーナーが俺だから。

所有者からまるっと全部買い取っておかなきゃ、今頃ここは新しい娯楽施設に生まれ変わっていただろう。

彼らのことを思った俺はそのまま放置。

おかげでここは誰の手も入らないまま廃れてしまった。

別にアイツらのためを思ってやった訳でもないが、ただもう一度会えるとするなら廃れたこの黒曜ランドだと思ったんだ。

まさかそのせいで黒曜センターがこんなホラーな場所になってるとは思わなかったけど!

だだっ広い駐車場の塀を乗り越えて入った先は土砂と倒木が入り混じるジャングルだった。

や、やっぱ再開発した方がよかったかも・・・。

長居したくなかった俺はそこを走り抜けて目的地へ向かった。




「何者だ!」




即 見 付 か っ た ・・・!

黒曜中の制服を着た男達がわらわらと出てきて俺を取り囲む。

最悪だな。

まぁ、最悪なのは不運な俺か、捨て駒にされ恭弥に咬み殺されるコイツらのどちらなのか。




「お前ら、ここは俺の言うことを聞いて引いておけ」

「ふざけんな!」

「俺はお前らのボスより優しいと自負してるんだが?」

「黙れ!」

「・・・忠告はしたぞ」




俺の言葉も虚しく、襲い掛かってきた黒曜生を見て溜め息を吐いた。

やれやれ、怪我させないように気を失わせるのって面倒なんだぞー。







***







さーて・・・。

アイツらがいるのは上だと思うが、どこのフロアだ?

2階のボーリング場跡をウロウロしながら人を探す。

どうやら黒曜生を配置してるのは外と1階だけらしいな。

わらわらと湧いて出てきた黒曜生だったが、案外物分かりのいい奴等だった。

気絶させた生徒の処遇に困り、ズルズル引き摺って歩いてたら皆あっさり道を開けてくれた。

うん。放置しなかったのが良かったんだな。

そんな訳で俺はウロウロしてるんだが、上に昇る階段が見付からない。

階段壊すとか面倒なことしやがって・・・。

元の道を引き返して左にそれると非常用のハシゴが見付かった。

ボロいハシゴに不安を覚えながらも昇ると暗く広い空間に出た。

・・・・これは映画館か?

目が慣れるのをジッと待ち、辺りを見渡していると、パキッと背後でガラスが割れた音がした。

ハッと振り返ると同時に瓦礫の影から丸い何かが音を立てて飛び出してきて、俺は咄嗟に床を転がった。

小石痛ってぇ!!

地面に吸い込まれるように刺さったそれは小さな針で、殺傷力がないからこそ毒の危険性を訴えていた。

これって・・・!

引き戻されていったヨーヨーに第2撃が来ると感じた俺はを抜いて瓦礫目掛けて走った。

予想通り再び飛んできたヨーヨーに、俺は肩に掛けていた長ランを盾にして服越しにの引き金を引いた。

これでダメならもう策ないんだけど・・・?!

弾は狙い通り、ヨーヨーの紐を打ち抜いて、瓦礫の影にいたアイツは目を見開いていた。

唖然としていてもう攻撃する意思のなさそうな眼鏡君に息を吐き、俺は針だらけで銃痕残る長ランを見下ろした。




「制服が台無しだ」

、さま・・・」

「久しぶりだな、千種」




え、と、おーい?生きてるよなー?

驚愕の表情を貼り付けたまま一切動かなくなってしまった千種にどうしようと眉が下がる。

ずっとこうしてもいられないので先に進むが、千種が動かないので手を引いて行くことにした。

全く、いつまで経っても面倒のかかる子だな。

おそらくこの扉の先に骸がいるんだろうが、さっきの千種みたいに攻撃されるのは勘弁願いたい。

なので卑怯だけども、千種を先に部屋にねじ込んでみた。

開いた扉の隙間から中の様子を窺う。




「おや、千種。鼠はどうしました?」

「骸様・・・、」




鼠って酷くねーか・・・?

どうやら犬はいないようだが、今なら入っても大丈夫かな?

俺は一度深呼吸をして足を踏み出した。




「人の町で何チョロチョロしてるんだ、骸」

?!」




ガタリと古びたソファから立ち上がった骸は目を丸くして俺を見ていた。

まぁ、コイツらと会ったのはイタリアだったから驚くのは無理もないが。




「驚きましたよ。がジャッポーネにいるのは想像出来ましたが、まさかこんな所で会えるとは」

「俺もだ」

「あの時のことは本当に感謝しています」

「なら、今度からはアップルパイの味見をしてから去るべきだな」

「おや、やはり不味かったですか」

「・・・頼むから砂糖と塩の確認だけはしてくれ」




キョトンとした骸は千種をチラリと見て、笑い出した。

心底楽しそうに笑った骸はゆっくり歩みを進めて俺の手を取ると目を細めて微笑んだ。




「もう一度あなたに会える日を楽しみにしていました、Il mio Messia」




背格好はかなり変わってしまったが、禍々しいほどに綺麗なオッドアイは全然変わってない。

くすぐったいほどに俺を慕ってくれる骸に苦笑した俺は頭を撫で回してやった。

無邪気に喜んで俺に抱き着こうとした骸の腕を反射的に掴む。




「これは何だ?」

「・・・チッ。契約しておきたかったのですが」




回された腕にいつの間にかしっかりと握られている三叉槍を叩き落すと骸は思いっきり舌打ちをした。

な、何て油断のならない・・・!

千種の溜め息を聞きながら、俺はバクバクしている心臓を押えた。

何もなかったように無邪気に微笑む骸に、俺は過ぎ去った年月を思った。

うわーん!骸がスレたー!!


* ひとやすみ *
・そんな訳で今回の主犯の登場です!!
 早くもチビッ子時代が懐かしいですが、デンジャーな骸も
 可愛がっていただけると嬉しいですー!!
 懐かしきアップルパイネタ!覚えてる人何人いるかなー?                   (10/07/25)