ドリーム小説

最初の襲撃事件から数日。

すでに被害者は風紀委員だけには止まらず、一般の並中生にまで及んでいる。

昼夜問わず物凄いハイペースで生徒が襲われるので、さすがに街中が事件の存在を知ることになった。

犯人は何故か歯を持っていく猟奇的な黒曜生とまで分かっているのに、

一向に尻尾が掴めない状態で風紀委員はピリピリしている。

というか、恭弥が究極に恐ろしいことになってるからなんだけどね・・・。

物々しい雰囲気の並中応接室に座って、俺は出入りの激しいリーゼントを見ていた。

なぜ俺がここにいるかって?

あのドス黒いオーラを放つ恭弥を前に手伝いを申し出ない奴がいるなら見てみたい・・・!

そんな訳で、日曜だというのに俺は恭弥の代わりに応接室で留守番中なのだ。




さん。また二人やられました」




携帯を耳に当て、苦々しくそう言ったJrに眉根を寄せる。

これで被害者はもう17人目だ。

また恭弥が荒れるな・・・。

俺は溜め息を吐いて被害者の名簿に新たに二名の名前を書き込んだ。




「恭弥に現場と被害状況を報告してやれ」

「はい」

「もう学級閉鎖では追い付かないか。職員会議で学校閉鎖を提案するしかないな」

「・・・委員長は大丈夫でしょうか」




そればっかりは俺にも分からん・・・。

頼むから今恭弥の前に群れて現れてくれるなよ、並中生。

これ以上の面倒は御免被るぞ!

何とも言えない顔をしたJrに俺は肩を竦めて立ち上がった。




「どこかへ行かれるんですか?」

「ちょっと野暮用をな。お前達も今の内に休んどけ。恭弥が帰ってきたら休みなんてなくなるからな」




力なくヒラリと手を振って応接室を出ると、纏わり付くような暑さが俺を迎えてくれた。

あー・・・考えたくねー・・・。

誰も怪我なく、何にも起こらなかったらどんなにいいか。

俺はこの一連の事件の犯人を知っている。

おまけに結果まで知っちゃってる反則技だ。

どうしよっかなー、俺は。

校舎の外から勢いをなくしたセミの鳴き声が聞こえてくる。

秋はすぐそこだ。

皆、幸せに過ごせたらいいのにな。

俺は迷いなく廊下を歩き、縁遠かったその部屋の扉をノックもせずに入った。




「可愛い子ちゃんの休日デートのお誘いなら喜んで・・・・げぇ?!」

「げぇ、とは随分だな、Dr」




薬品の独特な臭いのする保健室にいたシャマルは俺を見て顔を引き攣らせた。

そんな顔されるほど俺この人に何かしたっけ?




「何でお前がここにいるんだ?!面倒事はごめんだぜ」

「何でも何も、ここは俺の母校だ」

「はぁ?!お前みたいなデタラメ人間が通ってた?!」




シャマルは一体俺のこと何だと思ってんだよ・・・。

どう考えたってお前の方がデタラメだろうが。

一つ溜め息を吐いてクシャリと前髪をかき上げたシャマルは俺に身体を向けた。




「・・・言っとくが、俺は男は診ないぞ」

「それは構わないが、自分で蒔いた種くらい何とかしてもいいだろう?」

「何の話だ?」

「桜クラ病」




一瞬目を見開いたシャマルはすぐに眉根を寄せた。

俺が恭弥の病気を何とかしろと言いたいのは伝わったと思うが、納得がいかないのか変な顔をしている。

今年の春に恭弥はシャマルに桜クラ病を発病させられた。

おかげで俺は恭弥と桜が見れず、恭弥は不機嫌で散々だった。

まぁそんな話はどうでもいいとして、桜クラ病を今何とかしとかないと少々やばい。




、雲雀恭弥を野放しにしてどうするつもりだ?あの跳ねっかえりには弱点の一つや二つくらいあった方がいい」

「まぁな。でも今それがあると困るんだ」

「・・・ったく。何でが雲雀の病気のこと知ってるんだ」

「何でって、恭弥は俺の弟だからな」

「・・・・・はぁ?!」




椅子を蹴倒して大声を上げるシャマルに俺が驚いた。

俺より10も年上の男が目を白黒させているのが何だかおかしい。

この様子じゃ、俺と恭弥が兄弟だということを知らなかったんだろうが、俺としてはそっちの方が不思議だ。

リボーンは俺が雲雀なのを知ってたから、てっきり皆知ってるもんだと思ってたよ。

シャマルはガクリと首を落として、椅子を立て直すと眉根を寄せて呟いた。




「跳ね馬に雲雀恭弥だと・・・?全く、恐ろしいガキばっか育てやがって」

「別に俺が育てたわけじゃないんだが」

「一緒だろうがよ!、お前、化け物ブリーダーか何かか?」




失礼だな!

本気で言ってるシャマルに俺は盛大に眉根を寄せた。

俺からすりゃ病気振りまく蚊を飼ってるお前の方が恐ろしいっての!

ふんと鼻を鳴らして視線を逸らせば、シャマルは静かに口を開いた。




「まぁ俺が蒔いた種だ。桜クラ病の処方箋は出してやるが、残念ながら今手元にない」

「明日また来る。もし俺がこれない時は確かな人間に渡しといてくれ」

「・・・はぁ。が動いてるってことは、今起きてる事件は面倒なことだってことか」

「まぁな」




頼むからオジサンを巻き込まないでくれと溜め息を吐いたシャマルの背中に俺は謝った。

そりゃ無理だ。

患者が男だろうと無償で働いてもらうからな。

俺は処方箋の件をもう一度念を押して、保健室を出た。

さて、そろそろ、覚悟を決めますか。


* ひとやすみ *
・何だかいらなかったかなーとか思う話。
 現状把握とどさくさに紛れてシャマル先生と再会。笑
 てか書いといてあれだけど、処方箋て何だろう?やっぱ蚊なのかな?
 もしそうなら恭弥とかパッチン!とやってそう・・・。笑                  (10/07/25)