ドリーム小説

歩くたびにコツコツと固い音がする。

固い革靴とのっぺりとしたコンクリートが反発しあうように暗い空間に響く。

俺はなぜか見知らぬ暗い所を歩いていた。

どこまでも続く嫌な空気のする通路をひたすら歩いていると、ポケットでジャラリと金属が擦れる音がした。

思わずポケットに手を差し込んだ瞬間、数メートル先に人の気配がして顔を上げた。




「よお、どうだった?」




声を掛けてきた男は紺の制服をだらしなく着込んでいる。

一体何の制服なのか見当も付かないが、ふと自分の服装を確かめるように見下ろせば同じ物を着ていることに気付く。

ようやく何かがおかしいと思い始めた俺だったが、自分の意思とは関係なく口が勝手に開いた。




「特に変わりはありませんでしたよ」




確かに自分の声のはずだが出て来た声は少し高く、まるで違う誰かにでもなったようだ。

口から飛び出た言葉の意味も分からない。

ただ一つ言えるのは、何だか物凄く禍々しいことを言ったような気がした。

相手の男は面倒そうに溜め息を吐いて帽子を被った。




「だよなー。ま、明日になればアイツらともお別れだからいいが、気味の悪い連中だぜ」

「・・・あぁ、一つ違います」

「ん・・・?」

「お別れは明日ではなく今日です」




男の表情がだんだん恐怖に引き攣っていくのを見て、俺は堪えきれないように笑って至極楽しそうに微笑んだ。

背後に人の気配を感じると俺は振り向きもせず、震える男へ挨拶を述べた。

―――さよなら。またお会いしましょう、と。

視界に赤が飛び込んで来た瞬間、俺は悲鳴を上げたが耳に聞こえるのは俺の高笑いだった。















様!」

「・・・っ」




呼ばれて視界に飛び込んで来た赤はアレとは別の赤で、何度か瞬くとそれが執事なことに気が付いた。

身体が酷く硬直していて唯一動くのは目と口だけで、明るい室内を観察して執事を見れば安堵の息を吐かれた。

あー、夢か・・・。

何で俺が見る夢って怖い夢が多いんだろ。




「魘されてたようですから起こしましたが、よろしかったですか」

「・・・助かった」




動くようになった手で髪を掻き上げると汗で濡れていた。

そうだ。マンションで仕事を片付けて、少し休憩しようと思ってソファに横になったんだっけ・・・。

ギシギシいう身体を動かしてソファに座り直すと思わず溜め息が漏れる。

余計疲れたじゃねーか・・・。




「主人、気分転換に少し外の空気でも吸って来てはいかがですか」




執事の気遣いを俺は有り難く頂戴して、財布と携帯だけ持ってマンションを出た。

纏わり付くような暑さに少しばかり怯むも、気分的にはそれに少しホッとした。

季節は夏。

と言っても、学生の夏休みはすでに終わり、まだ残暑厳しい毎日と言った方がいいかもしれない。

進級出来ないかも知れないと綱吉と武が対称的な顔して言いに来たのが少々懐かしい。

まぁ何とか綱吉達も無事2年に進級して、特に何事もない平和な日々を過ごしている。




さん!」

「久しぶりだな、正一」




人通りが増えた大通りを歩いていると、近くのCD店から俺を呼ぶ声が聞こえて立ち止まる。

手にしていたCDをラックに返した正一は慌てて俺の元へ駆け寄ってきた。

新しい眼鏡の奥で目元を緩ませた正一の癖のある髪を撫でてやる。

何だかんだと正一とはあれから仲がいいんだよな。




「いつもの所でよければ奢るが」

さん、あの店好きですねぇ」




とか何とか言いながらちゃっかり付いて来るのは誰だよ。

俺と正一はいつものように商店街に面したコーヒーショップのテラスに腰を落ち着かせた。

ここいろいろ見渡せて楽しいんだよ。

何よりコーヒーが美味い。

陽を遮るルーフの下から辺りを眺めていると、アイスコーヒーの氷が音を立てた。




「この前の夏祭り、行ったんですか?」

「いや。やることがあったし、あそこからなら花火は見えるからな」

「あぁ、あのマンションこの辺で一番高いですからね」




アイスティーにレモンを沈め、ストローで突いている正一に視線を向ける。

あの事件の後、見舞いに来た正一に泣き付かれた時はどうしようかと思った。

どこもかしこもボロボロだった俺はそのまま入院したが、動けない俺に縋り付いて爆発したようにいろいろ叫ばれた。

殆んどが正一の恐怖体験談で、逆に俺が申し訳なく思う羽目になったんだが。

正直、もう二度と入院なんかしたくない・・・。

思い出すだけで恐ろしいが、弟二人の看病ほど怖いものはなかった・・・!

放って置いてくれたらきっともう少し治りも早かったはずだ。




「あの、噂で聞いたんですけど、あの人、夏祭りで場所代ふんだくって、引ったくりぶん殴った、とか・・・」

「あー、それは綱吉達からも聞いた」

「あ、相変わらず怖い人ですね」




思わず吐いた溜め息が正一の溜め息と重なった。

俺のこの苦悩を分かってくれるのは正一だけかもしれない。

あの人というのはもちろん恭弥のことで、その後、土産と称して巻き上げ品を振舞ってくれた。

チョコバナナ、美味かったけど、兄ちゃんは何だかしょっぱい思いだったぞ。

何だかんだと話していると随分時間が経っていたらしく、正一は塾があるので先に席を立った。

さて、俺も戻ろうかな。

正一を見送って立ち上がろうとした瞬間、突然背後から物凄い衝撃があって首元に何かがきつく巻きついた。

ぐえっ・・・!

な、なんだぁぁぁ?!


* ひとやすみ *
・そんな訳で、始まりました、すいか編!
 春と夏をトントンと飛ばして、正ちゃんとデートです。笑
 気合入れていきますので、応援よろしく願います!!
 よーし!頑張るぞー!!とか言いつつ、ドキドキするなぁ、もう・・・。笑                  (10/06/20)