ドリーム小説

何で携帯を正一に渡しちゃったかな、俺・・・。

そしたらこんな思いしなくて済んだかもしれないのに。

俺のバカー!!




のバカ!どうしてのこのこ付いて来たのよ!」




・・・うん。

俺も今そう思ってたトコだ、ティエラ。

ここまで付いてきたのは、俺のせいでティエラが人質になったから何とかしなきゃと思ったからで、

携帯があれば居場所が逆探知できると踏んでたんだよねー・・・。

だけど誤算は執事にそれを知らせるために正一を逃がしたことだ。

助けを呼べるし、正一も助かるし、一石二鳥じゃん、とか思った俺、ホント馬鹿!

携帯渡したら元もこもないって!!

下から俺を見上げているティエラは傷だらけで、縛られながらも強気な発言を続けている。

すげーなー・・・、俺なんかもうとっくに挫けてるよ・・・。




「大丈、夫か・・・?傷、残らないといい、な」




いてて・・・。

目が覚めて久しぶりに喋ると声が掠れていて、乾いた唇が切れた。

俺が小さく呟いた言葉がコンクリの建物に響くとティエラは大きな瞳からポロポロと涙を溢した。

あーあー、そんなに泣くなよ。

俺、今、手が使えないし、正直、気の利いた言葉も考え付かないんだから。




「ばかぁ・・・っ!の方が酷い怪我じゃない・・・!」




ティエラが涙声で苦しそうにそう叫ぶと暗くだだっ広い倉庫に反響した。

鼓膜を激しく叩いたその声に眉を顰めると身体中に巻き付けられた鎖が重々しく音を立てた。

あー、こんなつもりじゃなかったのにな・・・。

ドラマや映画の中のヒーローは攫われた女の子をカッコよく助け出すっていうのに

俺はティエラを傷だらけにしてこんな風に泣かしてる。

しかも何の猛獣だよってくらい頑丈に鎖で縛られて、電流流されタコ殴りにされた所まで見せてしまった。

俺、ホント情けないな・・・。

天井から吊り上げられてポタポタと離れた床に向かって滴る自分の血を眺めながらそんな事を思う。

歯は抜けるし、血は吐くし、痛覚なんてもう忘れた。

怖かったのは最初だけで、あとはもう何が何だか・・・。

今は怖がる気力も残ってない。

だから眠って体力温存してたんだけど、どうやらそれが彼女を不安にさせたようだ。

俺の眼下でティエラは泣きながらひたすらに謝っている。

泣くなって。

全部俺が招いたことなんだから。



執事は俺に警告していた。

俺はなのだと。

どれだけ一般に紛れようと、俺が育った場所やしでかした事が消えてなくなる訳じゃない。

それを忘れようと裏社会から離れてのうのうと暮らしている影で、ティエラや執事が必死に俺を隠してくれていた。

知らなかったで済まされる問題じゃない。

現にティエラは誘拐され、正一が巻き込まれ、おそらくディーノも襲われてる。

俺、ホントにバカだ・・・。

もう一度、闇世界で過ごしたいとは思わないけど、俺はだ。

自分の小さな平穏を守るため、俺の大事な人達を守るためには、少しばかり力が必要なんだ。




「泣くな。の片腕が、泣き虫じゃ困る」

「・・・え」

「俺は静かな並盛が好きだ。そのために煩い奴等は、排除する」






自覚したらだんだん腹が立ってきた。

放って置いて欲しいのに、マジうざい!

歯なんて抜けたらもう生えてこないし、思い出したらあちこち痛くなってきた!

何より・・・・!!

ティエラを泣かせやがったな、この野郎・・・!!!








***








・・・・・はーい、カッコつけたのに台無しー。

だって俺、まだ宙吊り。

え、どうやってこの鎖から逃げろと・・・?

やる気出してもどうにもならんてマジ萎える。

左肩は関節外れてるし、肋骨折れてギシギシ言うし、正直俺の身体今どうなってんのか分からない。

ティエラはあれから安心したように蹲って寝てしまった。

何か気を張ってずっと寝てなかったみたいだからなー。

いや、こんな高く吊り上げられてずっと寝てた俺もどうかと思うけどさ。

暗い倉庫に眩しい光が差し込み、重い扉が開いて誰かが来たことを知る。




「ようやくお目覚めか、

「悪いが静かにしてくれないか、彼女が寝てる」

「テメェらふざけてんのか?この状況でぐーすか寝やがって!」




ガン!と派手な音を立てて近くにあった木箱を蹴り倒した男に、ティエラが飛び起きた。

おぉ、マジで寝てたのか、ティエラ・・・。

キャンキャンと何かを喚く男を見下ろしてるのも疲れた。

ずっと下見てんのも首凝るんだぞ?

首の骨を鳴らすようにグルリと回転させるとポキリといい音がした。




「テメェ、消されたいのか?!」

「いいのか?俺を消したら意味ないだろう?」

「・・・ッ!」




チキンなはずの俺がここまで強気な理由その1ー。

奴等は俺を殺せない。

俺が奴等が言う伝説のだと確実な人が証明しない限り、俺、ただのボロボロの凡人。

その2ー。

アドレナリン全開、ブチギレ状態。

その3ー。

あの拷問が痛すぎて怖すぎて、もう何も怖くない。

というか、あっさり死ねるなら本望。


そんな訳でちょっぴり強気な俺は奴を見下ろして、ニヨリと笑う。

青筋立てた男は拳銃を取り出すと躊躇う素振りも見せず、俺に向かってぶっ放した。

銃弾はそのまま天井の黒いシートで目張りしてあった窓を派手に破壊して外へ消えて行った。

俺はパラパラと降って来たガラスを浴びながら、頬を掠めた銃弾の硝煙臭さを感じていた。




「テメェを消すのは跳ね馬にお前を確認させた後だ!世界中にテメェの亡骸を見せ付けてやる」

「・・・俺の弟に手を出してみろ、骨も残らないと思え」

「宙吊りのテメェが何するって言うんだ、えぇ?」




見せしめとばかりにガツンと近くにいたティエラを蹴り飛ばした男に殺意が湧く。

コイツ、絶対、消滅させてやる・・・!




「あぁ、そうだ。テメェが逃がしたあのガキだがな、見付けたぞ?もうすぐ仲間が任務完了を報告してくるだろうよ」

「正一・・・!」




正一が見付かるってことは最悪の事態じゃないのか?!

頭を過った想像に眉根を寄せると、口を切ったのか血を吐き捨てたティエラが微笑んで言った。




「大丈夫よ。あのチクワがそんなヘマする訳ないわ」

「何だと?!」

「確かめてみたら、おじさん?」

「おじっ?!・・・馬鹿にしやがって」




男は忌々しそうにティエラを睨み付けて、電話を取り出した。

どうやら正一を追う仲間からの連絡が遅いのが気になったようで、男は電話を掛けて現状を聞いた。

息を呑んで会話を見守る俺にも電話口の声が届く。




『ようやく見付けた。今から行くよ』




あれ?今の声・・・。

何だか困惑した空気が流れ始めた瞬間、眩しい光が倉庫内に差し込んだ。

入り口で光を背負う人物が二人。

うわー、面倒だなー、また誰か来たよ・・・。


* ひとやすみ *
・痛々しい現状報告です。血生臭い話ですいません。
 主人公、無敵だけど、普通に殴られれば怪我をする普通の人です。
 自分の実力を分かってないのもあるけど、それが友人のためなら目を瞑って
 怖いのを我慢するくらいの根性はあります。
 主人公ブチギレると相手側は碌なことにはなりません。どうなることやら・・・。    (10/05/28)