ドリーム小説

弟が怖くて家に帰れません。

家に帰れない人ってこんな気持ちなんだろうなと思いながら俺は今、公園のベンチに座っている。



兄さん、弟がいたの?』



全てはこの一言から始まった。

あんまり恭弥が怖い顔して言うもんだから説明しようとすると背を向けられた。

そして「別にいいよ。兄さんの弟は僕だけだから」と恭弥はのたまった。

何ていうか、兄ちゃんには弟の存在なんか認めるかボケ!と聞こえたんだが、

そこんとこどうだろうか、恭弥様・・・。

それからと言うものの、まるで監視でもされてるかのように恭弥の視線を感じる。

怖すぎて家になんか帰れない。

コンビニで買った飴を転がしながら、かれこれ2時間はこうしている。

鳩って飴食うかなぁ・・・。

群がっていた鳩が一斉に飛び立って辺りを見渡すと何か凄い物が目に飛び込んで来た。

牛が鳩を襲ってる。

いや、まぁ、ランボなんだけど。

ランボが何かを叫びながら鳩をけしかけて、前を走るイーピンが鳩の襲撃に遭っている。

おいおい、鳥に群がられると怖いんだぞ?

その直後、イーピンがこけて、ランボが大笑いする。

やりすぎだっての。

俺はベンチから立ち上がって、泣くのを我慢しているイーピンに手を差し伸べた。




「怪我はないか?」




キョトンとしているイーピンはコクリと頷いて俺の手を取った。

ランボが鳩を引き連れて彼女を助けた俺に何か文句を言っている。

お前に文句言われる筋合いはないっての。

少し懲らしめてやろうと俺は声を低くして呟いた。




「煩い。焼いて食うぞ、牛」




なぜだかその直後、鳩が全部その場から飛び去った。

なんでー?!

冗談が効き過ぎたのかランボも硬直してしまっている。

やっべー!大人げなかった!




「冗談だ。だけど女の子を泣かせて喜ぶなんて小物のすることだ」




もうするなよとランボを見ればぎこちなく頷いてくれた。

イーピンはなぜか俺をガン見していて、何だかおかしな雰囲気になった。

俺はとりあえず持っていた飴を二人にやって、その場を後にした。

チクショー!また居場所を失ったじゃねーか!!







***







「え?ティエラと連絡がつかない?」

『はい。恐らく日本に飛んだのだと思うのですが、連絡がなかったのが気になって』

「日本に飛ぶ予定があったのか」

『・・・申し訳ありません。様のお耳に入れるようなことではないと判断しましたので』

「一度、そっちへ戻る。話はあとで聞く」




俺は通話を切ると、一杯のコーヒーで居座ったファーストフード店を後にした。

予定が出来たのは嬉しいけど、内容が不吉すぎる・・・。

それに執事の奴、俺に何か隠してないか?

頭の中で悶々と考えながら歩いていたのが悪かったのか、角から飛び出してきた少年とぶつかった。

体格差で少年は吹き飛び、荷物が散乱した。




「うわっ」

「悪い。大丈夫か?」

「ご、ごめんなさい!大丈夫で・・・あれ?僕の眼鏡は、」


・・・・バリンっ




ばりん・・・?

違和感のあった右足をどけてみると無残に割れた眼鏡がそこにあった。

ギャー!!眼鏡踏んじゃった!!

悲鳴を上げる少年とシンクロしながら心中で絶叫。

は!そうだ。弁償しなきゃ・・・!




「本当に悪い。すぐに新しいのを用意させてもらう」

「う、うぅ、・・・はい」

「俺は雲雀だ。何かあれば連絡をくれ。出来る事は何でもするから」

「あ、僕は入江正一と言います」

「しょ・・しょういち?!」

「?」




ギャー!!こんな所でまた原作キャラと遭遇してるじゃんよ、俺ー!!

キョトンとしている幼い入江に俺は変な汗を掻きながら、携帯で眼鏡屋に手配を頼む。

こういう時、ホント並盛牛耳っててよかったと思うよ。




「電話で一言で依頼しちゃうなんて、さん何やってる人なんですか・・・?」

「自営業・・・かな?あの眼鏡屋はウチの子会社だからな」




何ていうか、こんな純朴そうな正一の耳には入れたくないよな。

並盛、ほぼ支配してます、とか。

自分で言ってて悲しくなってきた。

見えない目で一生懸命荷物を拾っている正一を手伝うことにしよ・・・。




「うわっ!あ、あのさん、これって・・・!」




あ。・・・。

ぶつかった時に落としたのか。

真っ青な顔をした正一を見て、俺の血の気も下がった。

これって、ヤバくない?




「そのままこっちに来い」

「・・・え、あの」

「いいから早く!」




語気を荒くした俺に心底ビビってる正一は涙を浮かべながらを持ってゆっくり近付いてきた。

俺はコートを脱いで正一に頭から被せると強引に片腕で抱き寄せた。

を黙って取り返すと、正一の肩が恐怖で震える。

あぁ、何か怖がらせてゴメン!

銃剣持ってる男が子供に怒鳴って力任せに抱き締めたらそりゃ怖いってな。

でもな、今、結構、俺も切羽詰まってんのよ・・・!




「まさかこんな所でガキと遊んでるとはな、

「お前、誰だ?」




正一の背後から現れた男はニタリと笑っただけで何も答えなかった。

驚いたのか身じろいだ正一に静止を促して、男を観察する。

道を聞きにきた観光客・・・って訳にはいかないよなぁ。

あからさまに拳銃チラつかせている様はどう見たって極悪人。

マジ、怖いんですけどー!!




「全く、世界は狂ってるぜ。こんな乳臭い野郎の首に何億も賞金懸けてるとはな」




何ですと・・・・?!

俺、賞金首なの?!

初耳なんですけどー!!

じゃ、じゃあ、もしかして俺、今、思ってる以上にヤバイんじゃ・・・?


* ひとやすみ *
・はい。また考えなしに出ました原作キャラ。
 正ちゃんはいつか出そうと思ってましたが、まさかここで出張るとは・・・。
 ようやくチビちゃんズも出せた!イーピン好きなので喜んだのも束の間、
 え、あれ?イーピンて喋れなくない・・・?泣                       (10/05/10)