ドリーム小説

怒涛の数週間だった・・・。

運命の神様は俺のことを生理的に受付けないほど嫌ってるんだと思う。

肖像画に始まり、恭弥の仮病事件に反抗期、挙句に恐怖の赤ん坊にまで出会ってしまった。

まぁディーノと再会出来たのは嬉しかったけど、向いてないのにマフィアになれとか怖いこと言われて、

無理してティエラをお姫様だっこして帰ったら筋肉痛だし、恭弥に冷たい目でスケコマシとか言われて散々だった。

ていうか、俺の健全たる生活の一体どこを見たらそんな単語が出てくるんだよ?!

恭弥が執事に聞いたとんでもない俺の嗜好に死ぬ気で訂正をしたけど、疑惑の目で見る弟に泣きたくなった。

結局、物で釣った俺は3日間、恭弥と命懸けで遊ぶ事になり、全身痣だらけ・・・。

挙句、父さんまで参戦して母さんにおたまで殴られて帰るまでに、並盛にいくつか開拓地が出来た。

・・・・・・・・平穏って何?




「まぁ!君ったら本当にお料理上手ね!」




そして俺は今、なぜか沢田家で奈々さんと昼飯を作っている・・・。

何でこうなったのか、俺にもよく分かんねー。

言われるがままにキャベツを刻んでいると、奈々さんが不意に笑い出した。




「ふふふ!まさかツッくんが君と一緒に帰ってくるとは思わなかったわ」




俺もそう思う。

綱吉は初めて会った時のことを覚えてないって言ってたし、二度目って言ったってぶつかったアレだけだし・・・。

だから街をブラブラ散歩してた俺を綱吉があんな必死に引き止めた意味が分からなかった。

恐ろしいほどの気迫で叫ぶもんだから思わず付いてきたけど、きっとリボーンに脅されて俺を呼び止めたに違いない。

お、俺、何かしたっけ?!




「でも残念だわ。君をみんなに紹介したかったんだけど、リボーン君とビアンキちゃんはデートに行っちゃったし、

 子供達は遊びに行っちゃって誰も居ないのよねぇ」

「そうなのか」




え?それって執行猶予ってことでしょうか?!

やったー!!ビアンキナイス!!

脳内で響くファンファーレに万歳三唱していると、奈々さんが上を見上げた。




「それにしてもツッくん、着替えるだけにしては遅いわねぇ」




俺も天井を見上げ、帰宅して真っ直ぐに2階の自室へ上っていった綱吉を思う。

俺に渡したい物って何だろう・・・?

街で呼び止められた時、綱吉は俺に渡したい物があるから家まで来てくれないかと必死に訴えた。

今時、下手なナンパでもそんなこと言わないだろうけど、断ると後が怖い気がして・・・。

やっぱ俺、情けねぇ。




君、ありがとうね」

「え」

「あの子とまた仲良くしてくれて」




唐突に奈々さんに礼を言われて、トマトを落としそうになった。

俺と綱吉が仲良くしてると嬉しいのか?

何で?




「あの子、前は学校が好きじゃなかったみたいで友達があまり出来なかったみたいなの。だけどリボーン君が来てから

 ウチに獄寺君や山本君が来るようになって賑やかになって私もすごく楽しいのよ」




ニッコリと笑った奈々さんに俺は納得した。

そうだよな。この家、元はと言えば二人暮らしだもんな。

家光は蒸発したことになってるし。

賑やかなイメージが強かったけど、リボーンが来るまでは母子二人の静かな家だったはずだ。

だから奈々さんは居候が増える事も、綱吉に友達が出来る事と同じように嬉しいんだ。




「本人は出来が悪いと思っているようだが、あれだけの人と運を引き寄せるんだ。綱吉は大物になる。

 俺が言うんだから間違いない。奈々さんもそう思ってるんだろ?」




奈々さんはいつもの笑顔でニッコリ笑っていたけど、何も言わなかった。

間違いないっていうか絶対だって。

原作知ってる俺が言うんだもん。

だから俺の中での綱吉のイメージはダメツナっていうよりも、ここぞという時に頼りになるハイパーヒーローだ。

すると部屋の外でゴンと何かが落ちる音がした。

振り返ると少し間が空いてから綱吉がこっそり部屋に入って来た。




さん、こ、これ、前にウチに忘れていった本。母さんに預かっといてと言われてたから」

「あぁそうよ!君、これ返しそびれててごめんなさいね」




あぁ。奈々さんの荷物運んだ時に原作入りに気付いて置いて逃げたあの本か。

何だ、渡したい物ってこれのことかー。




さんもお昼食べて行きますよね?」

「いいのか?」

「もちろんよ。君が作ってくれたようなものだもの」




沢田親子のキラキラした目に押されて、お呼ばれすることになった。

・・・・・が!

綱吉ってこんな奴だったっけ?

さっきまで超オドオドして俺に怯えてたのに、何このキラキラ!

一体、何があったんだ・・・?




さん、箸上手ですね」

「俺は綱吉と同じ年くらい並盛に住んでるからな」

「えぇ!じゃあ俺より上手いんじゃ・・・。ディーノさんなんて・・・あ、ディーノさんって言うのは、」




綱吉の口から聞くディーノの話は何だか不思議だった。

楽しげに話す綱吉が本当にディーノを慕ってるのが分かって、何だか嬉しかった。

モサモサと食事を続けていると、綱吉がジーっと見ていることに気付いた。

な、なに・・・?




「どうした?」

「あ、いえ、何か、さんってディーノさんに似てるかもって」

「は」

「あ!いや、顔とか性格じゃなくて、何となく雰囲気が・・・」




は、初めてそんなこと言われた・・・!

全然似てない兄弟だっていつも言われてたから、綱吉の発言に俺は心底驚いた。

うわー!すっげー!これか?!

これが超直感って奴か?!

俺がアホ面晒してたせいか、物凄い勢いで綱吉が弁解をしている。

あー、違うんだよ。

首を振ると綱吉は俺を見上げて小首を傾げていた。

だよなー。意味不明だよなー。

でも俺は嬉しかったんだ。




「ありがとな、綱吉」

「??」




ほのぼのした空間がこの後帰宅した赤ん坊と毒サソリによって一気に修羅場へと変わることをまだ俺は知らない。


* ひとやすみ *
・ギャー!一月近く放置してごめんなさい!!
 あーでもない、こーでもないと書き直してたらこんなことに・・・!
 今回はほのぼの出来たかなぁとドキドキしながら上げました。
 何かこの所騒がしかったからなー。うから編もあと一山かな?               (10/04/27)