ドリーム小説

実の兄弟が何十年ぶりに再会する場面がこれとは皮肉なもんだな。

ディーノと部下達は同情したくなるくらい驚いてるが、・・・、いやは淡々と女に声を掛けていた。


アイツは読めねぇ・・・。

感情が表れるはずの瞳は色を灯さず、所作にも声にも何も映さない。

いや、映さないんじゃなくアイツの場合、混沌としすぎていて読み取れないのだ。

形代になった英雄は自分の心を誰にも見せない技術を身に着けていやがった。

それを指摘すると、奴はそうでなければ生きられなかったと自嘲するように過酷な人生を語った。

確かに、そうでなければ身体が震えるほどの存在感を出せる訳がない。


並中の応接室で肖像画を見た時に、それがだとすぐに気付いた。

病院で偶然見付け追い掛けてみたが、尾行は奴に完全にバレていた。

懐に手を伸ばし面倒臭そうに舌打ちされたら出て行くしかねぇだろ。

おそらく懐にあるのは銃。

奴に不得意はないが、銃撃戦を好んでいることは有名だ。

話がしたいだけだと武器から手を離せと言えば、好戦的に鉛玉が欲しけりゃくれてやると笑いやがった。

だが、俺はどうしてもが並盛にいる理由を聞かなけりゃならねぇ。

そう思い、口を開いた次の瞬間、背筋が凍った。




「誰に向かって言ってるか分かってるのか?」




物凄い殺気が身体の自由を奪い、金の瞳はまるで射殺すかのようだった。

もうマフィアじゃないのだから、掟には縛られない。

お前程度にこのが従うと思っているのかと、奴は全身で怒りを爆発させていた。

やっぱコイツ、自分を過酷な人生に追いやったマフィアを恨んでいたか。

その後、爆音がして今に至る訳だが、正直俺としては助かった。

奴とヤり合って無傷でいられるとは思えなかったからな。




「悪いが、彼女に用があるなら俺が代わりに伺おう」




女は心配そうにを見上げており、どうやら奴と無関係ではないようだった。

確かあの女はここ数年、ディーノの周りを嗅ぎ回ってた奴だな。

俺の頭でようやく話が繋がってきた所で、ディーノが叫んだ。




兄さん!!俺、ずっと、ずっと兄さんに謝りたくて探してたんだッ!」

「謝る?キャバッローネの10代目が俺なんかに?」

「止めろ、馬鹿弟子。情けねぇ真似すんな」

「けどッ!」




痛烈な皮肉だ。

10代目を継ぐはずだったにディーノが頭を下げれば、空しさは募るだけだ。

これ以上コイツを煽れば面倒な事この上ねぇぞ。

やれやれと言わんばかりに首を振ったは、なぜかロマーリオに視線を向けて口元を緩めた。




「ロマーリオ、お前に任せて正解だったな。よくディーノを立派に育ててくれた。お前達もな」

「「「 坊ちゃん!! 」」」

「坊ちゃんは止めろ。そんな年じゃない」




一瞬にしてその場の緊張が解けた。

チッ・・・!今までの全部芝居か。

心臓に悪いことしやがって・・・!

目をウルウルさせてる部下達は気持ち悪かったが、酷く落ち込んでいたへなちょこは目を見開いてを見ていた。

アイツ、ずっと兄さんに嫌われてるかも知れない!と煩かったからな。

暗に立派になったと言われたディーノはの行動の矛盾点に首を傾げ、怪訝そうに口を開いた。




「・・・じゃあ何でずっと俺を避けて、」

「ちょっとヤバいのに目を付けられてな」




思い出すのも嫌そうにそう言ったと一瞬目が合った気がしたが、奴はすぐに目を逸らした。

つまりソイツをディーノに近付けないようにわざと接触を絶ってたのか。

デマだと思っていたが、の弟至上主義という噂は本当だったらしい・・・。

しかし、コイツがヤバイと言うとは、よっぽどの奴だな。




「じゃあ、俺、兄さんに嫌われてない、のか・・・?」




恐る恐るそう呟いたディーノには目を細めて微笑んだ。

奴の無表情が一瞬の内に眩しいものに変わり、周りにいた俺達は光の流れ弾に撃ち抜かれた。

コイツ、とんでもねぇ兵器を持ってやがる・・・!

思わず帽子の鍔を下げれば、ディーノは泣きながらに飛び付いた。

ウオンウオンと酷い声音で泣き喚くへなちょこを笑って宥めるに俺は心底感心した。

すげぇなアイツ・・・。

俺なら耳元であんな煩く泣き喚かれたら、ぶん殴ってるぞ。




「なぁ、兄さん。・・・・帰って来ないか?」




貰い泣きしていた部下達はディーノの言葉にピタリと静かになった。

にしがみ付いていたへなちょこは目を腫らしてはいたがボスの顔をしていた。




「俺に、マフィアになれと言ってるのか」

「あぁ。この刺青は譲れないが、兄さんは俺達に必要だ」

「・・・悪いが、群れる気はない」

「兄さん!!」

、お前そんなにマフィアが嫌いか?」

「あぁ」




聞くまでもなかったが、のマフィア嫌いは相当なもんだ。

マフィアの御曹司に生まれながら、家族に人生を狂わされた神童。

やはり恨みあるマフィアに戻る訳がねえか・・・。

落ち込んだディーノに背を向けたは怪我を負った女を抱き上げて、振り返った。




「だが、弟は別だ」




顔を上げたディーノに口端を上げて、並盛にいるからいつでも遊びに来いと言い残し

去って行ったは文句なしにカッコよかった。

あの戦力、ボンゴレに欲しいぞ。

一筋縄じゃいかねーが相手に不足はない。

俺は感涙している弟子を蹴り飛ばして、ニヤリと笑った。


* ひとやすみ *
・小賢しく勘違いを盛り込んできましたが、気が付けば皆さんがとんでもない
 妄想力(?)を働かせて驚くほど先を読んでくれます。あなたリボ様ですか?!笑
 そんな訳で予想通りリボーン視点で再会を書いてみました!
 主人公の挙動不審な鳥心はリボ様に真意を覚らせない技術ととられたようです。笑          (10/03/24)