ドリーム小説

「手荒な真似はしたくねえんだが、どうする?」




頭に突きつけられた銃口にレディは溜め息を吐いて肩を竦めた。

全く、少し外に仕事に出たらこうなんだもの。

赤いドレスに血が飛び散ったはずだが、目立つことはない。

先程までの仕事相手はすでに息絶え、上等なカーペットに横たわっている。

帽子と目隠しに遮られ相手にはレディの表情が読み取れないが、レディは数日前に別れた同郷の人を思った。

は無事に日本に帰れたかしら?

男に促されるまま外へ出ると、黒塗りの車が大きな口を開けて待ち受けていた。

日の光が眩しく、目を細めてから頭に浮かんできたビジョンに思わず笑う。




「チクワを置いてきて正解でしたわね」




車のドアに手を掛けたまま、一向に乗ろうとしないレディに怪訝そうな顔をした男は銃口で背中を突く。

せっかちな男だとレディは呆れたが、男も気に食わないことがあるようだった。




「ったく。何で俺がこんな怪しげな女を連れて行かなきゃなんねーんだよ」

「貴方のボスが予言を待ってるんでしょうけど、彼に会いに行くのは私ではなく死神ですわよ」

「ハン!お得意の予言か?生憎、俺はそんなもの信じねえ」

「そう。これは私の可愛い友人の言葉ですけれど『悪事を企んだ人間はそれ相応の裁きを受ける』んですって」

「あ?」

「最後にもう一つ。私、この車に乗りたくありません。出来れば出発は明日にして欲しいんですが」

「無駄な足掻きは止めろ!いいからさっさと乗れ!」




聞く耳持たない男にレディはもう一度肩を竦めて、車に乗り込んだ。

人知れず走り出した黒い車はまるで裁きを待ち受ける罪人。

全てを知るレディは一人静かに唇を歪ませて笑った。







***







「それでお前の兄は見付かったのか?」




黙り込むディーノの姿に返事は聞かなくても分かった。

放って置いたら仕事そっちのけで兄の捜索に出掛けてしまうので、家庭教師は気が抜けない。

どんどん沈んでいく弟子にへなちょこめ、と内心悪態を吐いて、リボーンは帽子の唾を下げた。




「お前の見間違いだったんじゃねーのか」

「俺が兄さんを見間違える訳ないだろ!!」

「そんでもお前、相乗りのヴァリアーが誰だか気付いてなかったじゃねーか」




うっと息を詰めたディーノにリボーンは呆れたように息を吐き、数週間前のアレを思い出す。

確かにアイツはハンパねー奴だった。

外出先で狙われたディーノがタクシーを相乗りして帰って来たので、

いつものように修行の一環でライフルで狙えば、ヴァリアーと目が合った。

トリガーを引いた瞬間に気付かれ驚いた矢先に奴はディーノを庇って銃弾に飛び込んで来た。

何でそんな事をと思えばディーノの様子がおかしくなり、後で聞けばあれは実の兄だと言う。

確かキャバッローネの長男といえば、かたしろで行方を晦ましたあの

通りであの反応だという訳だ。




「生命の不思議だな。同じ血が流れてるのに片や伝説、片やへなちょこ」

「そうなんだよ!兄さんはホントに凄いんだ!」

「・・・それで奴の行き先は?」




皮肉を言うも兄を誉められた事の方が嬉しいらしく、リボーンは舌打ちをした。

伝説になるほどの兄を心底尊敬しているらしい。

リボーンはその様子を興味深く観察しながら言葉を続けたが、ディーノは眉根を寄せた。


兄さんが着ていた隊服からヴァリアーを探せば、2年もそこにいたと言う。

スクアーロに怒鳴り込めば、兄さんが口止めしたんだから仕方ないだろと逆ギレされた。

兄さんはそこまで俺に会いたくないんだろうか・・・。

それでも俺はどうしても兄さんと会って話がしたい。

ヴァリアーにそれ以上の手掛かりはなく、俺は覚えてる限り兄さんに関連している場所を回った。

そして不意に思い出したのは兄さんの初恋の人である予言師だった。

レディの元に部下を探らせにやったが、他に当てなく最後の手掛かりに縋るしかない。

その直後、部屋に慌てて飛び込んで来た男はレディを探らせていたはずの部下でディーノとリボーンは首を傾げた。

荒すぎる息を整えた部下は叫ぶように捲し上げた。




「ディヴィナトーレを追っていたら、一足遅く彼女はマフィアに連れ去られて」

「どこの馬鹿だそれは!」

「そ、それが、既にそのファミリーは壊滅してて」

「何があった?」

「詳細は分かりませんが、偶然ディヴィナトーレが誘拐された直後、何者かに襲われたらしく」

「どうなってるのか分からねーが、レディは無事なんだな?」




ざぁっと見るからに青褪めた部下は口を開けたまま、固まっている。

ディーノが眉根を寄せるとリボーンが舌打ちした。

こういう時、読心術というのは厄介だ。

促されるように部下は震える唇で若いボスの質問に答えた。




「か、彼女を誘拐し、た奴等の車は、スリップ事、故を起こし、崖下に落下し、ました」

「・・・!!!!」

「せ、生存者は・・・いませんッ」




物凄いプレッシャーに包まれた室内にリボーンは再び舌打ちをした。

回収された事故車はもはや車と呼べないくらいの酷い損傷で、乗者していた人は即死と診断された。

しかし、どこを探しても確かに乗っていたはずの真っ赤なドレスの彼女の遺体だけは見付からないまま事件は幕を閉じた。


* ひとやすみ *
・始まりました!、というか正直迷ってます。
 この話をしばらくしたらせむい編に組み込もうかなー、と。
 そんな訳でいつかこの話がせむい編ラストになってるかもしれません。
 要するに入れ忘れというか、設定変更の歪みというか・・・。
 ややこしいことを言ってすいません!これをずっとうだうだ悩んでたんですよ。
 グダグダで始まりましたが、どうぞよろしくお願いします!!!                 (10/01/23)