ドリーム小説
「忙しないわね」
「仕方ないだろ」
「まぁ、そうね」
俺とレディはソファに並んで執事とティエラがパタパタと行き来するのを見てそう言った。
両親が旅立って数週間もしない内に俺は日本に帰ることに決めた。
なぜなら、リボーンが俺を探してるらしいから!
その情報を執事から聞いた俺はすぐさまレデイに帰国を告げたが、
帰国はレディが仕事で屋敷を空ける時に合わせてほしいとなぜかそう言われた。
別に俺はリボーンに捕まらなければそれでいいから頷いたけど、ここ数日の女の子二人の忙しさは半端なかった。
レディの仕事の準備と俺の帰国準備。
それにしてもそれだけでこんなに忙しくなる物なのか?
「チクワ、ティエラ、大事な話があるから私の部屋に来て頂戴」
「「 ? 」」
「はダメよ。男子禁制」
ニコリと笑ったレディの表情がどこかいつもと違っていた気がしたけど、とりあえず俺は頷いた。
三人仲良く部屋から出て行ったのを見送って、次のミルフィーユに手を伸ばした。
うん。甘いのおいしー。
それから俺のお腹に5つ目のケーキが納まった時、三人が部屋に帰ってきたんだけど、どうも様子がおかしい。
執事とティエラは真っ青、レディは真っ赤な顔をして出て来た。
目から光彩が抜け落ち、血の気の引いた顔をした二人は引き摺るように歩いて自室へと消えていった。
一体、何が・・・?
「仕事にならないから今日は休ませてあげて」
「レディ、一体な、に・・・」
レディを振り返ってギョッとした。
彼女の頬は赤く腫れ上がっていて、しかもクッキリと紅葉型なのだ。
叩いたのかー?!
一体誰が?!と焦りながら、俺はハッとして慌てて冷やす物を探しに行った。
「ねぇ、あの子達のこと好き?」
「・・・あぁ」
「じゃあこの屋敷もイタリアも?」
「?あぁ」
「ふふ。そうよねー。そうじゃなきゃを選ばないわよね」
「何を言ってるのか分からないが、俺はレディも好きだぞ?」
「!あっはは!見る目あるわね!嬉しいこと言ってくれるに屋敷でも財産でも何でも全部貢いじゃうわ!」
「いらん」
「貰える物は貰っとくのが筋よ。私もが大好きよ」
綺麗に微笑んだレディに俺はどう反応していいか分からなくなって目を逸らした。
寂しげにいろんな物を好きかと聞いてくるけれど、そこに彼女自身が含まれておらず、
何だかそれが不自然に思えてレディが好きだとさらりと言ってしまった。
よくよく考えたらこれって告白じゃねー?!
内心、パニックを起こしていた所に爆笑で返されて目が覚めた。
いや、まぁラブじゃなくてライクで言ったけどさ、普通、人の告白らしきものを爆笑で返すか?
相手にもされなかった俺は不貞腐れたが、レディは楽しそうに俺を突いて遊ぶことにしたようだった。
あぁ、さっさと日本に帰りたい!
***
日本を離れて早2年。
何しに渡欧したのか結局分からないままだったけど、行かなきゃよかったとは思わない。
素直にそう思える事を感謝しながらレディとあの屋敷で別れ、俺はようやく並盛に帰ってきた。
10時間以上のフライトは本当に疲れたけど、懐かしい町を歩くのは何だか楽しい。
店仕舞い間際の商店街を足早に横切り、馴染みの店で買い物してみたけど俺だと気付かれなかった。
そ、そんなに変わったかな、俺・・・。
買い物袋をガサガサ言わせながら懐かしの我が家に帰れば、庭先に椅子を置いて恭弥が寝ていた。
何でこんな所にわざわざ椅子運んで寝てんの?
足音を殺して近付いて驚いた。
うわ、でかくなってるよコイツ。
子供の2年ってすごいな。
日が落ちて肌寒さを感じる中、近くに置いてあったブランケットを目にしてさらに首を傾げた。
常備してるなら使えよ。
てか、いつも寒くなるまでこんな所に居る訳?何で?
「恭弥、風邪引くぞ」
葉が落ちる音で起きるというあれは嘘らしい。
声を掛けても起きない弟を見て、俺は髪伸びたなぁとぼんやり思いながら恭弥の目に掛かる黒髪を掃ってやった。
するとパチリと開いた目が俺を捉えた瞬間、恐ろしいスピードで振り払われた。
凄い殺気に思わず飛び退ったものの、腕に掛けていたビニール袋が犠牲になって落ちた。
あー!せっかく買った豆腐がー!
「・・・、兄さん、何してたの」
「何って、起こしただけ・・・」
「兄さんのご飯、もうカピカピどころか化石だよ」
「え」
「兄さんのすぐって2年なんだね」
「いや、」
「一体、どこまで豆腐買いに出掛けてたの?」
こ わ い よ ! !
ゴゴゴゴと聞こえて来そうなくらい大変ご立腹であらせられるようで、その引き攣った口元が物凄く怖い!
一体、いつそんな怖い顔覚えたの?!
ま、まさか、君、それを言うために寒い中、椅子置いて玄関を見張ってたとか言わないよね?!
俺の疑念に答えるように恭弥はニタリと笑って、トンファーで襲い掛かって来た!
ギャー!!咬み殺される!!
かわそうとしてハッとした。
前よりもスピードが上がり、間合いが詰められててかわしきれない!
慌てて軽減させるため交差させた手首でトンファーを受け止めて、それを二撃目のもう片方を受ける盾にした。
くう!直撃は避けたけど、これ手首痛ェんだからなー!
手首でトンファーを挟み込み固定した所で、恭弥の持ち手を膝で強打しトンファーが手から離れた。
これ幸いとそれを恭弥に向かって蹴り上げ、恭弥が避けるはずの場所の死角に潜り込んでようやく背後を取れた。
腕と首を確保した所で恭弥はピタリと動きを止めてくれた。
た、助かったー・・・。
「恭弥、また強くなったな」
「兄さんほどじゃない」
ブスーと不貞腐れたような声に俺は恭弥の頭を撫でてビニール袋を拾った。
この弟は強すぎて俺マジ怖い・・・!
追い抜かれたら俺真っ先に消されちゃう!
が、がんばろ、俺。
「悪かったな、恭弥。すぐ帰って来れなくて。待っててくれたんだろ?」
あ、こういう所は変わらないな。
一瞬嬉しそうにしてすぐに眉根を寄せ視線を逸らした恭弥は、ゆっくりと俺に近付いてきて服の裾を掴んだ。
「おかえり、兄さん」
「あぁ。ただいま、恭弥」
* ひとやすみ *
・ただいまー!ってことでせむい編終了です!
色々特急で詰め込みすぎたんですが、とりあえず一区切り。
「せむい」とは仏教用語で菩薩様が皆の心を救っちゃうぞって意味なのです(施無畏)
出来る限り拾ってきたつもりですが、主人公が救世主になったと少しでも思って貰えれば嬉しいです!
さてー!次は多分原作入りですよー!バビューンといけたらいいな!
そんな訳で今後もどうかお付き合いお願いしますー! (09/11/26)