ドリーム小説

俺とティエラは走っていた。

彼女が言うにはどうやらまだ秘密裏に作戦は実行中だと言う。

俺を引き止めていたティエラが着く頃にはヴァリアー側からの攻撃と言うことでクーデターが始まる段取りらしい。

ティエラは兄が守った自分の命を無駄にしないため、俺はあの傲慢な友人のため、クーデターを止めに走った。

酷く長い廊下にイライラしながら前に進んでいると、乾いた音が屋敷中に響き渡った。

僅かばかりの間をおいて人の声と無機質な音が急速に増えていった。

俺とティエラは慌てて階下を覗き込んで唇を噛んだ。

あちこちに配置された警備の奴等が混乱するボンゴレ側に有無を言わさず攻撃していた。

もはやあれは虐殺だ。

楽しげに加わるベルとマーモンを見付けて眉根が寄る。

・・・始まってしまった。

そっと窺うように見たティエラは絶望と後悔を滲ませた表情で階下の惨劇を見下ろしていた。

飛び交う悲鳴と銃声の中、足音が近くに聞こえる。

を手に取り、背後の敵を待ち構えていた俺は飛び出てきた奴に眩暈がした。




とティーか!うお゙ぉい!これは一体どうなってるんだぁ!!」




・・・何てタイミングの悪い!!

最悪の事態が起こらないように身体を2人の間に割り込むと、ティエラは心配するなと苦笑した。

大人だー・・・。




「どうやら中止したはずの計画が動き出してるようです」

「チッ!変更を聞いてないのはどこの馬鹿だぁ!無線は?」

「ダメです。繋がりません」




俺は改めてティエラの企みの用意周到さに感心した。

もともとザンザスが用意していたクーデターを利用してヴァリアーを隠れ蓑とし、さらには連絡手段も断つとは。

苦々しい顔をしている彼女が今一体何を考えているのか、俺には分からなかった。

とりあえずザンザスと九代目に事態を説明して安全を確保、下っ端の鎮圧は後でする、ということになり

俺達は調印の行われてる広間へと向かった。

その時の俺は目の前の事に囚われていて、誰かに気を配るなんて器用な事出来やしなかった。




「・・・遅かったかぁ」




俺はスクアーロの声を聞きながら、広間だった物を見渡す。

否応なしに鼻を衝く血の匂いが自分が過去に似たような状況を作った事を思い出させる。

どう見ても生存者は居らず、折り重なるように倒れている人はヴァリアー、ボンゴレ、取引相手と無差別だ。

身体にある銃創から見ておそらくここでも撃ち合いになったのだろう。

スクアーロが足場を確保するように転がした人を見て驚いた。

ビクリと肩を揺らしたティエラの反応から見て、まず間違いない。

こいつはティエラの反乱仲間で、俺を襲った奴だ。

何となくここで何が起こったのか想像出来た時、広間の隣の部屋で大きな爆発音がした。

ハッとした俺達は無残にも壊された広間の壁を通り抜けて、殺し合う親子に目を見開いた。

おいおいおいおい。

健全な殴り合いはどこへ消えたんだよ!




「何をしてるんだ、ザンザス!」

君?!まさか・・・!そういう事なの、か?」

「黙れ老いぼれが!こんなカスの手なんか借りなくてもテメェをカッ消すなんて訳ねーんだよ!」




怒り心頭のザンザスには俺の声なんて全然届いてなかった。

物凄い勢いで攻防を始めた親子に成す術なく呆然としていると、

スクアーロが大声で文句を言いながら2人を止めに入ろうとした。




「・・・ティー、これはぁ、何のつもりだぁ?」




ピタリとスクアーロの喉元に突きつけられた剣に室温が急激に下がった気がした。

ティエラはスクアーロに剣を向けたまま小さく笑った。




「悪事を企んだ人間はそれ相応の裁きを受けるのよ」




復讐にこれほど適した言葉はないと思うけど、それはある意味言った本人にも帰ってくる諸刃の剣。

何も知らないスクアーロには意味が分からないだろうが、その時、俺は気付いてしまった。

彼女は自ら闇に飛び込んだのだ、と。

迂闊だった。

切欠はおそらく仲間の死を見たからだろうが、何で気付かなかったのかと俺は俺を殴りたくなった。




「あ゙?」

「一度走り出したものは急には止められない。なら私も守りたい物のために私の道を貫くわ」

「待て、ティエラ!」




俺にニコリと微笑んだティエラは刈り取るようにスクアーロの首へ刃を動かし、

スクアーロは混乱を滲ませた表情で辛うじてその攻撃を避けた。

彼女の言葉が何に向けられた物なのか分からないまま、前後で戦う二組に俺は動揺しまくった。


何なんだよ、コイツらは・・・。

結局こうなるのかよ。

何かを叫びながら命の奪い合いをしている二組にだんだん腹が立ってきた。

俺を無視しやがって・・・!


その途端、急に全員が俺を怖い顔で振り返った。

今更、仲間に入れてあげるとか言っても、もう遅いもんね!

ギラギラさせた視線を俺に向けたザンザスは舌打ちして銃を俺に向けた。

え?!ちょっとタンマ!もう文句言わないからそれは・・・!

ギャー!!コイツ本当に俺にぶっ放しやがったー!!

反応が速かったため間一髪避けられたが、威力が凄まじく爆風で吹っ飛ばされた。

いってぇ!!何すんだ、お前ー!!

そんなおもちゃみたいな憤怒の銃じゃなくて実弾入った普通の銃使いやがれー!!

あ、こら九代目も可哀想な奴を見るような目で俺を見るな!

慌てて受身を取り、ザンザスの襲撃に構えながら、背後のティエラとスクアーロを探す。

げ!あんなトコまで吹っ飛ばされて・・・。

それでも戦い続けてる所を見ると怪我は無さそうだ。




!お前はクソボスを追えぇ!俺も後で行くッ」

「させないわ!」




何だそれー・・・ってあの親子どこ行ったー?!

遠くから叫ばれた声に振り返るともぬけの殻。

慌てて辺りを見渡した俺は壁に掛けられた大きな絵の後ろに何かあるのに気が付いた。

絵を力いっぱい動かすとそこには地下へ続く階段があった。

あー、もう、何て傍迷惑な親子だ!!


* ひとやすみ *
・ここからが大変だー!とか言ってたら、書きたかった所だからか
 気が付けばペロリと先8話分、書いちゃってた!笑
 勢いを落としたくないのでこのまませむい編一気に行っちゃいますー!!
 分かりにくかったらごめんなさい!                       (09/11/14)