ドリーム小説

「あっれ?いるー」

「帰ったんじゃなかったの?」




開いた扉の向こうから小さな人影が部屋に入って来た。

小さなベルとマーモンはセットなのかと思いながら、てとてと歩いてくる二人にげっそりと視線を向ける。

てか、徹夜明けにスクアーロの武勇伝1時間38分も聞かされてみろ、マジで辛い。

義手をカパカパさせて嬉しそうに語ってくるから逃げるに逃げられず、さっきようやく脱走に成功した。

どうしたのー?と2人して首を傾げているミニヴァリアーズに俺は溜め息交じりに説明する。




「スクアーロに剣帝とやりあった時の話を聞かされた」

「はぁ?何、、あのクソ長い話に付き合ってやったの?」

「物好きだね」




俺だって好きで聞いてたんじゃないやい。

途中で部下の人が来てくれなかったら、俺、絶対逝ってたよ。

てかやっぱスクアーロ、皆に「俺とテュールの(略)」話してたんだな。

道理でナレーションスキル高いと思った。効果音のタイミングとか完璧だったもん。




「疲れた」

「あの話ケッコー笑えるよね」

「面白いけど話が長すぎるよ。要するに相手を理解するために手を斬り落とした馬鹿なスクアーロを入隊させるため、

 自分の命と引き換えとか何のメリットもない事をした剣帝と3日も戦ったって話でしょ」

「しし!しかも先回りされて剣帝の血筋情報消されてやんの!ダッセー」




・・・・・・シュールすぎるゼ、ヴァリアー。

こんな恐ろしい会話してるのが10にも満たない子供と赤ん坊って・・・。

しかもスクアーロ、お前の武勇伝がものすごいコンパクティーな話になってんぞ。

でも、すっげーなマーモンズダイジェスト!分かりやすすぎる!

決闘後、遺恨を残さないよう剣帝の近親者を消そうとしたが、あっちが上手ですでに情報が書き換えられていたらしい。

てか、この話のどこが笑えて面白いんだよ!

スクアーロが間抜けだとケラケラ笑っている子供二人に思わず眉根が寄る。

現代の子供達の残酷性に俺は心が痛いぞ。

・・・・ん?あれ?何か引っ掛かる。

剣帝との決闘って3日間だったっけ?




「で、はいつまで王子に立ち話させるわけー?」




俺の思考はベルの俺を呼ぶ声にぶった切られ、霧散した。

長い袖で隠れて見えない手を腰に当てて、俺を不満そうに見上げているベルに目を瞬く。

確かに俺だけこの長ーいテーブルに着いてるけど、ご覧の通り空席だらけですよ?

どこでもお好きな席にどうぞ、と視線を向けると、ベルがぷーと頬を膨らませた。




「王子をそんな硬い椅子に座らせる気?しょーがないから、そこで許してやる」




ビシィっとベルが指を差したのはこの俺で。

・・・・はい?

つまり、えーと、そこどけってことですか?

もしかして、ここ、ベルの指定席だった?

思わず椅子を引くとベルが足元にやって来て、なぜか今度はまた座れと怒られた。

そして現在、俺の膝の上にベル王子がご機嫌で座っている。

・・・なんで?




「まあまあだね。王子のイスになれること光栄に思っていいよ」

「僕の記憶じゃ、一週間前にここの椅子の座り心地が気に入らないって入れ替えたのはベルだった気がするんだけど」

「うるせー。てか何勝手にの肩に乗ってんの?見下ろすなよ」




バトル勃発5秒前。

なぜか俺の膝の上にいるベルと、これまたなぜか俺の肩の上にいるマーモンが睨み合っている。

頼むから俺の上で喧嘩すんのは止めてくれ!







***






無駄に元気なチビ達の相手をしてられず、俺は速攻で逃げた。

面倒臭くなって肩のも膝のも振り落として来たから、正直あとが怖い。

不慣れな屋敷をウロウロしていると、気付けば地下に降りてきていた。

ズガンズガンと微かに銃声が聞こえ、音の方に向かうと射撃練習をしているティエラの姿があった。

普段の彼女からは想像も出来ないくらい二丁拳銃を構える姿は勇ましい。

そこにあったヘッドホンを借りて、俺も練習場に入る。

物凄い上手な訳じゃないみたいだけど的に当たってるし、俺なんかより随分と上手いと思う。

そんな風に観察しながらティエラに近付いて行った時、ピリッと走った殺気にびっくりして思わず膝が折れた。

何にもしてないのに膝カックンとかダサかったんだけど、しゃがみ込んだ拍子に振り返ったティエラが発砲した。

俺の頭があった位置を通り過ぎて行った銃弾2発はコンクリートの壁に深くめり込んでいる。




「やだ、じゃない」




やだ、なのは俺の方だー!!

殺されかけてまだドキドキしてる心臓の音を聞きながら、俺は声にならない悲鳴を上げた。

もう、絶対黙って彼女の後ろには立たない!!

しかし、今の拳銃だったから助かったけど、剣だったら多分俺、頭無くなってたな。

てか、今の間合いは一体・・・。




「ティエラ、銃を使うのに今の間合いじゃお前死んでたぞ」

「えぇ、中距離武器なんだからもっと速く反応しなきゃいけないとは分かってるんだけど」

「銃より剣の方が向いてるんじゃないのか」




少し驚いたように目を見開いたティエラは小さく苦笑して首を振った。

何でー?こんなに接近しないと気配に気付かないんじゃ、剣の方が無難だと思うんだけど。

てか、殺されかけて何でこんな話してんだ、俺。




「剣は使わないわ。どうも剣の扱いが下手で抜くと周りを無茶苦茶にしちゃうし、

 加減が分からないから大変な事になっちゃう。だから剣はダメ」

「不器用すぎだろ」

「兄にもよくそう言われたわ」




ニコリと綺麗に笑ったティエラにつられるように俺の口元が緩んだ。

彼女の翡翠の目が鮮やかにも美しく、優しい色を見せたのを俺は初めて見た気がした。


* ひとやすみ *
・すっごい苦労した話でした。
 書いては消して、書いては消しての繰り返し。うぅ。辛かったよ!
 それでも楽しい話が書けてよかった。そして私の楽しみがやっぱりスクアーロ弄りって。笑
 ヴァリアーちびっこに可愛さを求めてみたものの、返り討ちに遭いました。
 なんてデンジャラスなガキんちょでしょう!!笑                            (09/11/09)