ドリーム小説

「ほら、早く寝ろ」

「今日のチョコレートケーキ美味しかったです。は何でも出来てしまうんですね」

「・・・魔法使い」

「はいはい!明日はアップルパイが食べたいれす!」

「そう言えば、パイは作った事がないな」




アップルパイで思い出すのは小さな可愛い毒サソリ。

心温まる思い出のようだが、あれが大きくなってると思うと少々命の危険を感じる。




、僕達は・・・」




急に袖を引かれて振り向けば、何か言いたそうな骸が俺を見上げていた。

何だー?アップルパイは嫌いかー?

続きを促すように骸を見れば、袖から手は離れ、何でもないと首を振った。

何だか落ち込んでる骸を撫でていると、俺はハッとして慌ててチビ達を寝かし付けた。

そうだった。今夜はやらなきゃいけない事があったんだった。




フーキンとか言うヒョーキンな名前の奴の正体は俺だった。

下手打ってそのフーキンがだとバレてしまえば、悠々自適なイタリア生活が逃亡の日々に変わってしまう。

おそらくヴァリアーはフーキンにも賞金を懸けやがったな。

おかげでフーキンを追ってチンピラ達がこの街に集まってるし、チビ達の追跡者も多くなってる。

なら、フーキンを囮にヴァリアー呼び出して、情報貰ってさっさととんずらだ!


闇夜に紛れるような黒服を着て、顔を隠す帽子とを持って俺は屋敷を出た。

ガキンチョが起きる朝までに片付けたい。

悪の蔓延る真夜中の路地、少し歩けばすぐにお出迎えが来た。

昼間逃がしたチンピラ君が仲間を引き連れてきたのだ。




「いたぞ!フーキンだ!」




俺は見晴らしを求めて低い建物の屋根へ登った。

うわー!俺、何か泥棒みたいだなー!

よじ登ってくる奴等を振り切ろうとあちこちの屋根を飛び回り、チンピラ達との追いかけっこ。

屋根の上を走って逃げんのってカッコいいけど、落ちそうで怖いな。

てか、挟み撃ちされてるっぽくないか、あそこ。

痛いのはすっごくヤだけど、死ぬのは勘弁。

こうなりゃ屋根から飛び降りるしかない!

帽子を押さえ、勢いで飛び出した俺は屋根の下の足場を確認してギョッとした。

うわ!人がいる!そこどいてー!!

ん?てかこれチンピラじゃねー?しかも向こうにいる人を襲ってるような。

・・・・・・・・なら、いっか。




「来るな!ギャー!!」

「足元にいるお前が悪い」




そのまま踵でチンピラを地面に沈めるように着地。

ふひー、見事な踵落としだったぜ、俺。

おかげで落下速度が落ちて助かったよ、チンピラ君。

足の具合を確かめるように軽く屈伸をすれば帽子の陰に向こうにいた人の足が見えたが、すぐに消えた。

俺が首を傾げた直後、頭上で悲鳴が聞こえ、見上げると追い掛けて来ていたチンピラが黒服の男に斬られていた。

黒服の男はどうやらチンピラを俺が蹴り倒した換わりに、斬り倒して助けてくれたらしい。

月明かりが逆光で眩しく、男の姿がはっきり見えず目を細めるととんでもない声が掛けられた。




「ゔぉぉい!これでイーヴンだぞぉ!テメェ、何者だぁ!」




ビリビリする鼓膜。懐かしい既視感。伸ばされた銀の髪。不敵な嗤い。

俺はそれをよく見ようと帽子を取って、彼を見た。

同じように驚いた表情を見せたことで間違いじゃないことを覚る。

おいおい、嘘だろ・・・。




「スクアーロ」

「・・・、なの、か」




俺の予定は有り得ないぐらいぶっ飛んで、情報収集どころの話じゃなくなった。








***







そして俺はただいま連行中。

車に無理矢理詰め込まれ、行き先は何とヴァリアー本部!

やったね!これでゆりかご止められるかも!

・・・・・・・。

うん、絶対その前に俺の息の根が止められるよね!

うわーん!怖いよ!スクアーロ大きくなってさらに怖さグレードアップしてるし!

あの後、逃げる訳にもいかず、どうしようと言葉を探して、髪伸びたねって言えばブチ切れられた。

言うにこと欠いてそれかぁ!と。

だって何言っていいか分かんなかったんだもん!

スクアーロは俺をあれからずっと探していてくれたらしい。あとディーノも。

何だか少し嬉しくて隣に座っているスクアーロを見ていれば、急に声が掛けられた。




、今までどこにいた?ボンゴレの情報網にも引っ掛からないなんてな。お前、生きる伝説になってるぞぉ」




・・・・・は?

さっぱり分からん、という顔をしていたせいか、スクアーロは丁寧にも説明してくれた。

俺はあのかたしろ(というらしい)の後、キャバッローネから追放されはしたが、

ボンゴレはなぜか俺を容認し怨まれているどころか同情され英雄と化しているとか。

え、俺、追われてなかったの?

かたしろ事件の悲劇的英雄、

何だそれぇー・・・。

しかも話に尾ひれが付いて伝説の凄腕少年ヒットマンとされ、今も行方が知れないとか。

何ていうか、普通に並盛で風紀委員長してたんですけど。

どうやらいろんな人が情報操作してくれて訳が分からなくなってるっぽい?




「それで、俺をヴァリアーに連れて行ってどうする気だ」

「・・・・お前、ザンザスと知り合いなんだってなぁ」




何だか、嫌な予感がする。てか、怖い。

ザンザスにも怒られて殴られてこいとかじゃないだろうな。

そんなの無理。絶対死ぬ!




「アイツの様子がおかしいんだ。お前なら理由を話すかもしれねぇ・・・。アイツを止めてくれ」




え、そっち?

てか、知らないうちに俺、ゆりかご突入・・・?


* ひとやすみ *
・あぁ!ようやく会えたよ、スクアーロ!!
 言いたい事とか怒りたい事とかたくさんあるのに安堵して吹っ飛んだようです。
 ある意味、不貞腐れ。笑
 そして強引グゆりかご的な?ここから先はまたまたオリジナル路線を走る予定です。   (09/09/25)