ドリーム小説
俺は几帳面か否か。
違うな。俺はただの凝り性なんだ。
一度始めた事は最後までキチンとやりたがるチキンだ。
そこに山があるから登るのだと言う登山家の如く俺は言う。
そこにオーブンがあるからチョコレートケーキを焼くのだ、と。
「、量り終えましたよ。完璧です」
クフフと笑いながら小麦粉まみれの骸がボールを抱えている。
お前、エプロン似合うなー。
そんなことを思ってる背後でキャンキャン吠えてる犬にオーブンに触るなと注意し、
チョコレートを任せた千種の様子を窺おうと振り向いて固まった。
・・・おいおい。千種、メガネにチョコ飛んでるぞ。
「・・・見えない」
「
とりあえずお前はメガネを拭け」
慌しい中、俺は手早く生地を混ぜ合わせ、充分に熱したオーブンにタネを突っ込んだ。
これであとは待つだけだ、と俺は息を吐いた。
***
こいつ等を拾ってどれくらい経っただろうか。
もうそんなの数えていないが、互いに打ち解けたようで今では俺がガキンチョ達に振り回されてる。
正しいナイフとフォークの使い方を教えたり、小汚いこいつ等を風呂に入れるのにすったもんだしたり・・・。
毎日がなかなかにスリリングだ。
何でか立派に主夫業を全うしてる俺だが、何も考えていない訳ではない。
・・・訳ではないんだけど、ここ最近予想外のお客が多くて正直本題の情報収集は進んでいない。
まぁ、マフィア関連の話はチビ達にはタブーだろうって言うのもあって、ヴァリアーには一切関わってないからな。
目の前に欲しい物があるのに手が出せないもどかしさ。
てか、むしろ今はチビ共で手一杯っていうのが現状。
俺はケーキが焼き上がるのを待つ間、チビ達と話しながらそんな事をツラツラと思った。
「フーキン?」
「はい。この街に入ってからやたらとその人物に間違えられまして」
俺が骸達に会った時、追われていた理由を話してくれたのだが、その人と間違われて追われていたらしい。
この辺りはホントに治安が悪いし、俺も散々絡まれた。
最近はチビ達を追ってる奴等も増えたし。
しかし、傍迷惑な人がいたもんだ。
大体、骸と間違えるような奴とかどんなビックリ人間だよ。
チビ達の話を聞きながら俺は立ち上がった。
「しゃん、どこ行くんれすか」
「晩飯の食料を買いにな。お前達は留守番」
「えぇー!!」
ぶーたれても駄目なものはダメ。
お前ら狙われてるんだろーが。
マフィア相手にチビ3人守るのはさすがに荷が重いって。
てな訳で何だかんだと理由を付け、ケーキが焼けるまでの見張り役という任務を与えて丸め込み、俺は街へ繰り出した。
が。
完璧つけられています。
プロっぽいんだけど、ちょっと爪が甘い感じ。
決めた。走って次の角で捕まえる。
俺がダッシュし始めると相手も慌てて追いかけてきた。
角を曲がり、死角を使ってダストボックスを足場にして空にジャンプ。
相手が飛び込んでくるまでの僅かな時間が稼げりゃそれでいいからな。
角を曲がって来た奴の背後に降り立ってを向けた。
て、お前は・・・!
「留守番と言っただろう、骸」
溜め息交じりにそう言えば、骸はシュンと俯いて小さく謝った。
コイツ、こうすれば許されると絶対分かっててやってる!!
そして俺は案の定、それで許してしまい、骸と手を繋いで買い物をする羽目になった。
はい、どうせ俺はヘタレですよー・・・。
くぅ、ニッコニコの骸の笑顔が憎い・・・!
広場に出ていた市を見ながら掘り出し物を探す。
あ、キャベツが安い。
「骸、少しここにいろ」
頷いた骸を残してキャベツを厳選し、購入。
いい買い物した・・・ってアレ?骸どこいった?
辺りを見渡してもそれらしい姿は見付からず。
キョロキョロしている背後で、銃声と悲鳴が同時に上がった。
何だかすっごく嫌な予感がするんだけど、こういう時の俺の勘は大体外れない。
「あぁもう!俺に平穏をくれ!」
俺はしっかりとキャベツを掴んだまま、走り出した。
逃げる一般人の波に逆らって騒ぎのある路地に飛び込むと、見慣れた子供とチンピラ数人。
もう何ていうか、チンピラにビビんなくなってきた自分にビビるっていうか。
「動くなって言っただろ、骸」
「!何で来たんですか!この人達は・・・っ」
なるほどー。自分を追いかけてる奴等だから俺を巻き込まないようにしようと逃げたな、コイツ。
悔しそうに唇を噛んでいる骸にちょっぴり絆されながら観察する。
「ようやく見付けたぜ、六道骸。お前を上手く使えば、ヴァリアーからもエストラーネオの残党からも、」
「ヴァリアー?」
「名前を変えようがすぐに分かる事だ!変わった目をした男などお前くらいだぜ、フーキンさんよ」
ん?何だコイツらヴァリアーと繋がってんのか?
てか、骸また勘違いされてるよ。
確かにまぁオッドアイは変わってるし、目立つよなぁ。
「やれ!フーキンを捕まえろ!!」
一斉に襲い掛かって来た奴等から骸を守ろうとを取り出した。
その瞬間、しっかり握ったつもりのグリップがスポンと手から抜けた。
えぇ!嘘、ちょ、待てって!!
こんな大事な場面で落とすか普通ー?!
そしてとんでもない事が起きた。
―――
キュン!ガシャン!!ドォォォン!!
は、ははは・・・。
何てかもう笑うしかねーよ。
落としたが火を噴き、路地沿いの人様の家の木製出窓を打ち抜いて植木鉢やらを見事落下させた。
・・・・チンピラ達の頭上に。
唖然としている骸と残ったチンピラ達に俺は乾いた笑いで誤魔化そうとしてみた。
「悪い。手が滑った」
悪いで済んだら警察いらねーよ、俺!
いや、まぁ、相手も警察は呼ばないだろうけどさ!!
てか、俺、何でセーフティ外したまま懐に入れてんの?!
下手すりゃ俺の胸に穴が開いてたかも知れねー!!
ガクガクと震えているチンピラがお前は何者だとか何とか言っている。
最近絡まれてはなぜかよくそう聞かれるんだよね。
そこで俺はいつもカッコつけてこう答える。
「俺が誰か?・・・ただのしがない風紀委員だ」
そう言うと大体逃げてくれるから助かる。
青褪めた顔をしたチンピラは悲鳴を上げてどこかに消え、俺は骸の安全を確かめに近寄って驚く。
え、何でお前笑ってんの?
「だったなら大歓迎です」
「骸・・・?」
「フーキンとはあなただったんですね、」
は?
フーキンて奴は変わった目をしてる男なんだろ?
俺、普通の鳶色だぜー?
大体フーキンなんて変な名前・・・。ん?
フーキン=ふうきん=ふうきいいん=風紀委員?!
えぇい!!紛らわしいなコノヤローッ!!!
* ひとやすみ *
・チョコレートケーキが食べたい。
個人的にチョココーティングされたメガネを掛けてる千種がお気に入り。笑
フーキンとか何やらいろいろしでかしてしまいました。
黒曜組に懐かれて手を焼く主人公を恭弥に見せてやりたい。絶対惨劇になる!笑 (09/09/17)