ドリーム小説

俺、頑張った・・・。

路地裏に倒れた未来の黒曜ボーイズ3人を気合で背負って屋敷に連れ帰った。

医療の知識があるわけじゃないけど、見た所、寝不足に栄養不足と言ったところだろう。

病院に連れて行くわけにもいかないし、とりあえず起きるまで寝かせておく事にした。

チビ達はホントに寝てなかったようで、昨晩から丸一日、日が昇って沈むまで寝続けた。

俺はその間、買い物やら何やらで出掛けたが、微塵も起きた様子はない。

さすがにそろそろ起きるだろうと夕食の準備をしながら呟く。




「おかしいなー・・・。俺、情報収集のためにここに来たはずなんだけどなぁ」




何で、俺、主夫やってんのー?

コンソメスープをかき混ぜながら、ぼんやりとそんな事を思った。

あ、我ながらこれ美味い。

何だかいろいろ複雑な気持ちを引っ提げながら、俺は3人の寝てる部屋に足を向けた。


ガチャリと扉を押し開けると、赤と青の瞳と目が合って驚いた。

いや、まぁ、知ってたけど、オッドアイってやっぱ迫力あるなぁ。




「起きたのか」

「・・・はい」




これホントに骸か?

嘘だー!何かどう見てもクロームにしか見えねェんだけど?!

何でそんなしおらしいの?!

犬と千種の寝息を聞きながら、骸のベッドに腰掛けた。




「あの、ここはどこ?」

「俺の家」

「あ、の・・・」

「ん?」

「今度こそあなたの名前を教えてくれますか?」




ん・・・・?

今度こそって何だ?

何、あの時、倒れる前に俺の名前聞くつもりだったの、お前?

疑問に思いながら骸を見れば、少し悲しそうな顔をして笑った。

え、何で泣きそうなの?!




だ」




慌てて名乗れば骸は何度も俺の名前を呟いていた。

その時、犬が物凄い大声を上げて飛び起き、千種もそれで目が覚めたようだった。




「よく寝たー!!!」

「・・・うるさい」

「何だお前は!!骸しゃんから離れろ!!」




一気に臨戦状態になった2人に俺は骸への尊敬と執念を見た。

あんなボロボロになってもコイツ守ろうとしてんだなぁ。

カートリッジとヘッジホッグがないと大騒ぎしている2人にほのぼのしてると鶴の一声が掛かった。




「犬、千種。彼は敵じゃありません。助けてくれたんですよ」




キョトンと大きな目を向けられると何だか照れる。

犬と千種は骸に窘められ、全然分かってないくせに俺に礼を言った。

首傾げて、末尾にハテナ付けながら礼を言う姿に笑いを飲み込む。

何だコイツら!めっちゃ面白い!




「入れ歯とヨーヨーならそこの引き出しの中だ」

「い、入れ歯じゃないぴょん!!」

「ヨーヨー・・・」




クスクス笑う骸と怒り散らす犬、煩わしそうに眉を顰める千種を見て俺は立ち上がった。

なかなかいい三人組じゃん。




「それだけ元気があるなら飯を食え」




何だかこんな生活もありかもしれない。








***







うーわー・・・、きったねぇー・・・。

ガツガツとかき込まれていく俺の料理は、あらぬ所へ飛び散りまくっている。

呆然と三人の尋常じゃない食欲を目の当たりにして、必然と俺の箸は止まる。

とりあえず、明日からはこれの倍は作ろう・・・。

あとは食べ方もきちんと教えてやらねぇとなぁ。

会話なんて物は存在しない食卓を呆然と見ていた俺は、犬の肘が当たって傾いたグラスに気付いた。

あちゃー、ありゃ割れるな。

手を伸ばしても間に合わない距離に諦めた時、予想通りグラスはテーブルから落ちて飛散した。

大きな音を立てて割れたグラスに、煩かった食卓が嘘のように静まり返った。




「あ・・・っ」




割れたグラスを片付けようと俺が立ち上がると、犬は何を思ったか、慌てて割れたグラスに手を伸ばした。

あ、こら、馬鹿!




「触るな!」

「・・・ッ!!」




すぐに手を引っ込めた犬にホッと息を吐いた。

割れたグラスを素手で触るなんて危ないだろーが。

・・・え、何かめちゃくちゃ怖がられてない、俺?

こっちがビックリするぐらい怯えてる犬に申し訳なくなってきた。

大きな声で叫んでごめんなさい。

震える犬の前に座り込んで犬の手を掴む。




「怪我はないか?」

「・・・ふぇ、な、ないれす」

「そうか」




目をパチクリしてる犬を見て、それからなぜか同じような顔をしている骸と千種に思わず首を捻る。

え、みんなして何そんなに驚いてんの?

そこに犬の呟くような声が降って来た。




「ごめんらさい」




俺はシュンと落ち込んでる犬の頭を撫でた。

素直に謝れるいい子じゃん、コイツ。

それよりも、ガラス危ないから掃除機で全部吸っちゃおう。

掃除機を取りに立ち上がった時、背中に声が掛けられた。




「叩かないんですか」




は?

振り返ると何だかおかしな顔をした骸が俺を見上げてそう言った。

叩くってまさか犬を?

え、俺、何だと思われてんの?!

幼児虐待するような男に見えるわけー?!

目に見えて青ざめてる犬を視界の端に入れて、眉根を寄せた。




「なぜ?謝ってるのにそれ以上罰する必要があるのか」




何かショックだなー・・・。

グラス割ったくらいで殴る男だと思われてたんだー・・・。

何だか無性に寂しくなった時、急に背中に衝撃が来た。

うお!何だぁ?!

振り返れば犬がしがみ付いてた。

その直後、骸も俺の足に縋り付いて来て、おまけとばかりに千種まで飛び付いて来た!

こ、こけるー!!

ガキンチョ三人ぶら下げてるのはさすがにツライ!




しゃーん!!」

・・・」

さま・・・」




な、何なんだぁー、コイツらー?!


* ひとやすみ *
・やっぱり意図せず好かれる主人公。笑
 そして料理も出来ちゃうチキン君。主夫なのにカッコいいをモットーにしております。笑
 黒曜組が思った以上に仲良しこよしで困っちゃう・・・。
 主人公ゆえ、ってことでまぁ、いいかー。                            (09/09/13)