ドリーム小説

「どこだ、ここ?」




俺は目を覚まして、見覚えのない天井、見知らぬベッド、見慣れない部屋に首を傾げた。

まだ眠い目を擦って欠伸を一つ漏らした所で思い出した。




「あ、そっか。俺、昨日の夜ここに着いたんだっけ」




おはようございます、です。

イタリアに来て数日、俺は現在レディの別宅にて一人暮し中です。

と言っても、昨晩この屋敷に着いたから正確には今日からだけど。


事の始まりは俺の情報収集からだった。

ゆりかご事件がまもなく起こるって言うんだから、やっぱ現状を知っとくべきじゃん?

並盛の事は隈なく知っている俺だけど、イタリアの現在は全く分かんねー。

だから、ちょっとした軽い気持ちで聞いたらレディに怒られた。




『あんたも一流のヒットマンなら、それぐらい自分で調べなさい!』・・・って。




何ていうか・・・、俺、ヒットマンじゃねーし・・・。

でも、女の人にそう言われて男として無理とか言えねぇだろー?

そんで俺は情報収集のためにあの屋敷を出た訳だ。

しかもレディはご丁寧に俺にあちこちにある別宅全ての鍵をくれ、おまけにカードもつけてくれた。




『屋敷に女連れ込んでもいいし、大した額入ってないからカード空っぽにしてもいいわよ』




そう言われた時は、俺、物凄く切なかったなぁ・・・。

しょっぱい思い出はさておき、一日の始まりは美味しい朝食からってね!








***








てなわけで、俺は買い物に出掛けた訳ですが、なぜだか物凄く目立ってます。

やっぱ黒は目立つのか?

黒パンと黒いジャケットに視線を落とした俺は、踵を返した。

・・・先に服買いに行くか。

その辺を歩いてるティーンエイジャーを真似て目立たない色の服を何着か買い、変装用に帽子やメガネ、サングラスを購入。

これで完璧だろ!

服を着替えて、帽子を被った俺が何気なく街へ繰り出せば、またも視線を感じる・・・。

俺、何かおかしい?!

・・・・いや、完璧なはずだ!きっとスパイ大作戦みたいなことしてるから俺が過敏になってるだけだ!

一種のビビリ症候群だろう。

うん。きっとそうだ。


その時、急に右目がぼやけた。

何だかもやもやした物が見えて、目を擦ると元に戻った。

何だぁ?目に何か入ったのか?

多分、寝不足だからだろうな。帰ったら飯食って寝よ。



ようやく食料の調達が出来た時、俺の腕にはたくさんの生活用品でいっぱいだった。

あーもー歩きにくい!

頼むから卵割れるなよー、ともたもた歩いていると、クラクションが鳴って驚いて顔を上げた。




「お兄さん、荷物大変そうね。よければ送りましょうか?」




横付けされた車の中には超絶美人でグラマラスなお姉さまが乗っていました。

俺がその車に乗り込んだのは、けして下心や卵の心配からではなく、

ただ何となく今彼女と話さなければいけないような気がしたからだ。









***








「うまいな」

「そうでしょう?ここのコーヒーは兄も気に入ってたの」




ニッコリ笑った彼女の向かいで俺はのんびりコーヒーを飲んでいた。

・・・・ように見えるが、内心物凄く焦っていた。

何だよ、この怪しげな店ー!!

どこもかしこもヤの字っぽい人だらけで俺は心底ビビッていた。

この姉ちゃん絶対ただの人じゃない!!




「私はティエラと言うの。あなたにお願いがあって声を掛けたのよ」

「断る」

「・・・まだ、何も言ってないじゃない」




言わなくても分かるって。

どうせ碌なことじゃないのだけは確かだよ!!

何だか店中に変なオーラが漂ってるし。




「あなたがどこの誰だか知らないけれど、実力者なのは一目で分かったわ。お願い。私に力を貸して」




縋るように俺に視線を向けるティエラに俺は小さく溜め息を吐いて、テーブルにコーヒー代を置いた。

俺が椅子を引くのと同時にカウンターにいた客達が指を鳴らしながら近付いて来る。

うぅ!やっぱ本場は怖ェ!!

俺は椅子を蹴り上げて盾を作り一人、足を払い、二人、椅子で殴り、三人、椅子に飛び乗り交わして、

そのまま背後のティエラに銃剣を突きつけた。




「悪いが、俺にもやる事がある。美人薄命というだろう?止めておいた方がいい」

「手を噛まれたのは私の方みたいね。あなたも私に聞きたい事があるんでしょう?答えてあげるわ」




美人っておっかねェ・・・!

いや、何となく裏事情に詳しそうだなーと思って付いて来たのはいいけど、まさかこんな事になるとは・・・。

しかも考えてる事バレてるし。

あれ、また右目が霞む。

あ、治った。




「聞きたいのはキャバッローネのことだ」




ホントはヴァリアーについて聞かなきゃいけないんだろうけど、気が付けばそう言っていた。

何か知ってるか、と視線を向けるとティエラは目を瞬いていた。




「驚いたわ。まさかヴァリアー本部の近くでキャバッローネについて聞かれるとは思わなかったもの」

「九代目はどうしている?」

「・・・あなた、本当に何も知らないのね」




その言葉に目を瞬いたのは今度は俺の方だった。

あの後、どうなったのか、俺はただ知りたかった。

ただ、それだけなのに・・・。




「キャバッローネは今、10代目よ。今のボスは息子のディーノ。9代目は死んだわ」


* ひとやすみ *
・ぶっ飛んだラストですいません!
 胃をチクチクさせながら書きました。しかも何か変なキャラ出しちゃったし。
 うぅ。何かいろいろ詰め込みすぎて大変な事になってきました!              (09/09/05)