ドリーム小説

人生と言うものは全く思い通りにはいかないものだ。

俺は感慨深く並中を卒業し、心機一転並盛高校に入学した。

淡い期待もそのままにあっさり高校でも風紀委員に決められて、相も変わらず長ランを着ている。

てか、何も変わってなくね?

今や並高傘下にいる並中風紀委員に、恭弥だけが風紀財団とか作っちゃえばと一人喜んでる。

俺が17になり、恭弥も多分7歳になった。

小学校に入った俺の可愛い弟は入学早々、学校を恐怖で支配したそうな。

恭弥よ、お前、何でそんな風に育ったんだ・・・?

兄ちゃんは仕込み玉鎖を付けてみたと嬉しそうにトンファーで殴りかかって来たお前の顔が忘れられないよ。


俺は不意に背中をピリリと走る何かに気付いて辺りを見渡した。

なーんか、変な感じがこの所ずっとしてるんだよな。

俺はそんな事を思いながら学校から帰宅した。




、その棚の上の大皿取ってくれる?」




家に帰ると夕食の準備に取り掛かっていた母さんにそう言われたので、俺は棚に手を伸ばした。

母さんもそう小さくはないが、俺は高校に入ってメキメキ身長が伸びた。

この前測った時は173センチくらいだったけど、まだ伸びてる。

こういう時、日本人じゃないなって感じるよ。

部屋に戻って白いシャツと黒い細身のパンツに着替えてからキッチンに戻り冷蔵庫を漁った。




「ねぇ、この所ずっとお友達がチョロチョロしてるみたいだけど大丈夫?」




米を研ぐ音を耳にしながら俺は目を瞬いた。

父さんもそうだけど、この人も一体何者だよ・・・。

俺に付き纏う視線に気付いてる母さんに感心しながら、俺は心配しなくていいと返しておいた。

そろそろ片付けなきゃ恭弥にまで被害が出そうだしなぁ。

・・・・やっぱ、やらなきゃダメかな。


諦めの溜め息を吐いて俺は冷蔵庫を閉めた。

携帯と財布とありゃいいか。

恭弥が銃剣の名前はだと草壁やら風紀委員達に吹き込んでくれたおかげで否定出来なくなってしまった。

つまり、俺も開き直ったわけだ。

片付けに行きますか、と背を向けたら母さんに「ついでにお豆腐買って来て」とお遣いを頼まれた。

ついで、ですか・・・。

何とも切ない言葉に拗ねていると恭弥がそこにいた。




兄さんどこ行くの」

「ちょっと豆腐買いにな」

「僕も、」




だぁ!俺は弟の「一緒に行く」には弱いんだ!

俺はその先を言わせないように、無理やり笑顔で恭弥を黙り込ませた。

口を噤んだ恭弥の頭をグリグリと撫でてやると、拗ねたように俺を見上げてきた。




「すぐ帰る」




そう言って恭弥をその場に残して俺は家を出た。

まさかそれが別れの言葉になるとはその時の俺は露とも知らなかった。







***







俺が家を出た途端に動き出した気配に誘われるように足を進める。

正直な所、相手はめちゃ強い奴、つまり本職の人だと思う。

ホント、俺に何の用だよ。

俺は戦闘にならない事を切に願いながら、そこに入った。

並盛第二公園、俺が雲雀になった場所だ。

砂を蹴散らして歩いて行くと、俺は目を見開いて固まった。

・・・・何か、とんでもないのが、あのベンチに座ってる。

あぁ、俺、今ものすごく帰りたい・・・。

豆腐買って早くおうちに帰りたい・・・。

俺が父さんと出会ったベンチには、ド派手なメイド服を着たメガネの執事が座ってちくわを食べていた。




「お久しぶりです、様」

「久しぶり、だが、一体何しに来たんだ」

「まぁ、とりあえず、ちくわいかがですか?」

いらん




俺が欲しいのは豆腐であってちくわじゃねェ!

周りに物凄い変な目で見られているのを感じながら、俺は執事の隣に腰を降ろした。

ぶっちゃけ、イタリアの事とか全部忘れていた。

だって恭弥は捻くれるし、父さんも意味不明だし、学校運営も大変だしで忙しかった。

そりゃ胸痛む事だってたまにはあったけど、俺はもう雲雀だし、過去は過去だ。

だから戻りたいとか思った事はないし、今更すぎるだろ。




「今更何しに来た。もうあれから6年経つんだぞ」

「だからです」




ちくわを見事に食べ切った彼女は俺を真剣な眼差しで見た。

・・・というか、アンタちくわ臭いよ。




「さて、予定が押しております。車がそこにありますのでお早くご乗車下さい」

「・・・何言って、」

「主人のからの伝言です。『ツベコベ言わずさっさと来なさい、馬鹿!後悔したくないなら乗れ!』だそうです」

「レディ、か。どういう事だ。俺を一体どこへ連れて行く気だ」




手を引いて颯爽と歩く執事に俺は車に詰め込まれ、運転席に乗った彼女が取り出した物は俺のパスポートだった。

何でお前がそれ持ってんだよー?!

平然と俺の部屋から盗んだと抜かす執事は思いっきりアクセルを踏んで俺に最終宣告を下した。




「行き先はイタリアです」


* ひとやすみ *
・いきなりですが、ここでくもじ編終了です。私もビックリな急展開だったり・・・。笑
 何かメリハリがないなーと思ってスパイスを効かせたら、まさかのブッタギリ!!!笑
 ちくわな彼女のおかげで少し楽しくなってきました!舞台は再びブーツの国へ!
 気付けば主人公も大人になりました!今後も生温く見守っていただけると幸いですvv    (09/08/23)